第78話 ミアの考察

「どうだ? ミア」


「うむ、色々なことが分かったぞ!」


 ノートPCを操作していたミアが歓声を上げる。


 がうがう?


 ドレイクも興味深げにPCの画面を覗き込んでいる。


「それにしてもこのひょうけいさんそふと、とやらは便利じゃの!

 本来なら数か月はかかる解析がこんなに短い時間で終わるとは」


「ふふん♪」


「……なんでリーサが得意げなんだ?」


 スキュラが出現したワケアリダンジョンから戻ってから数日後、ミアとフェリナはフェリナの事務所に併設された研究施設ラボに籠って調査を続けていた。


「大魔導士であるわたしの手助け無しにここまで調べるとは……成長したね、ミアちゃん! フェリナお姉ちゃん!」


「……本当は手伝いたかったけど」


「試験も近いんだからちゃんと勉強しなさい」


 ぽこん


「あうっ」


 その間リーサは何をしていたのかというと、中等部の編入試験に備え勉強していたのだ。


「これからもっと忙しくなるかもだからね、わたし頑張るよ!」


 ふんす、と両手を握るリーサ。


 リーサとミアの通う学園は単位制なので、小等部で必要な単位を取り切ったうえで中等部の編入試験に合格すれば、時間的な余裕ができる。

 そう考えたリーサはここ最近勉学に励んでくれている。


「それに、中等部の制服にも憧れるし……」


 リーサの学園の中等部の制服は、桃色を基調にしたセーラー服。

 この半年で成長したリーサがその制服に袖を通せば、世界の可愛いランクとキレイランクは自動的に更新されるだろう。


「よーし、がんばるぞ!!」


「せ、制服を試着する時は絶対立ち会わせてくださいね!!」


「ほらほら、制服なら余も着てやるから、調査結果をユウに説明するぞ?」


「……はっ、そうでしたそうでした」


 あきれ顔のミアにチョップされ我に返ったフェリナ。

 部屋の壁に映像を投影してくれる。


 ヴンッ


「おぬしらが予想した通り、世界の結びつきが強くなっているようじゃな」


 映像には2つの大きな丸が映し出されており、それぞれ世界A、世界Bとのキャプションがつけられている。


「世界Aをお主らの世界、世界Bを余らの世界と定義するぞ」


「ふむふむ」


「ああ」


 右手に持った指示棒で、ぺしんと壁を叩くミア。


「おぬしらの世界Aで発生する”ダンジョン”は、世界Bをはじめいろいろな世界の影響を受けておる」


 ぽんっ


 世界AとBの間に、小さな丸が表示される。

 これがいつも俺たちが狩っているダンジョンだ。


「近年の研究では、異世界から漏れだしたマナと呼ばれるものからダンジョンが生成されるのではないかと言われています。

 ダンジョンによって出現するモンスターのランクが違ったり、得られるスキルポイントに差があるのもこれが原因とか」


「なるほど」


 フェリナの説明に頷く俺。


「じゃが、最近特に世界Bの影響を強く受けたダンジョンの出現が増えていての」


 世界Bからダンジョンに向けられた矢印が太く大きくなる。


「まあ、魔王である余がこちらにいるのじゃから、ある意味当たり前かもしれぬが」


「リーサたちの世界は特にマナが豊富だからね、こっち側にいっぱい溢れてきてるのかな?」


 レミリアさんとブレンダもそんな事を言っていた。

 普通の世界では、マナは有限の資源だと。


 だが、リーサたちの世界が飛びぬけて豊富なマナを持っていたのなら。

 川が高い所から低い所へ向かって流れるように、大量のマナがモンスターと共に俺たちの世界のダンジョンに流れてきているのかもしれない。


「傾向的に、該当するダンジョンはミアちゃんのいるわたくしたちの周囲に多く出現するようですね」


「じゃろうな」


 うんうん、と頷くミア。


「このダンジョンでは、モンスターが強い代わりにたくさんのスキルポイントを獲得することが出来ます」


 フェリナの言葉に頷く。

 先日退治したダンジョンでも、通常のBランクダンジョンを遥かに超えるスキルポイントをゲットした。

 しかも、スキルポイント獲得倍率の上がり方もおかしかった。


「ということは、ミアちゃんのごはんを心配する必要はなさそう?」


「だな」


 リーサたちの世界のモンスターが出現するダンジョンを探して狩れば、スキルポイントの問題は解決できそうだ。


「それだけではなく」


 まずは一安心といったところだが、フェリナはまだ何かありそうだ。


「これはわたくしの提案なのですが……」


 フェリナはミアと頷き合うと、別の映像を再生する。


「ユウさん。

 いっそのこと……」


 じゃ~ん!


 壁に表示されたのは、最新の世界ダンジョンバスターランキング。

 第一位に輝いているのは、相変わらずのルークさん。


「”世界一”になりましょう!!」


「……は?」


「……ふお?」


 どどーんと表示された”目指せSSランク”の文字に、思わず目が点になる俺なのだった。

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シンパパ底辺ダンジョン探索者さん、バグでスキルポイント獲得倍率が100倍になってしまう ~愛娘と一緒に最強セレブへと成り上がる~ なっくる@【愛娘配信】書籍化 @Naclpart

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