第71話 頂上決戦

「はあっ!!」


 どがあっ!


 ルークさんの大剣が、俺が隠れていた柱を粉砕する。


「くそっ!」


 何とかその一撃を躱した俺は、周囲に潜んでいるはずのふたりに声を掛ける。


「リーサ、ミア!」


「……ブリザードLV4!」


 俺の声に応え、柱の影から放たれた氷の弾丸がルークさんを襲う。

 大ぶりの攻撃を繰り出した後の隙を突く、絶妙なタイミングだ。


「カーズLV4!!」


 さらに、時間差をつけてミアが闇の炎を重ね掛けする。


 よし!


 これでどちらかの魔法はルークさんに直撃する。

 ルークさんが身に着けている鎧の使用回数はあと3回。


 こうして鎧を削った後、俺の最大攻撃を叩きこめば……!


「……ダンジョン内では私も”魔法”を使えるのよ?

 ”パーフェクト・シールド”」


 ヴィンッ


 ブレンダの声が聞こえたと思ったとたん、ルークさんを薄緑色の障壁を包む。


 バシュ

 バシュン!


「うえっ!?」


「ほお……!」


 完璧なタイミングで放たれたはずのリーサのとミアの魔法は、障壁にあっさりと吹き散らされる。


「ちっ!」


「……勝負よ、ミアライーズ

 ”フレイム・レーザー”!!」


 ヴィイイイイインッ!


 真っ赤な光線が、ミアが隠れている辺りを襲う。

 先ほどの防御魔法と同じく見たことのない魔法……ブレンダのオリジナル魔法だろう。


「やるではないか!!」


 光線は障害物をあっさりと溶かしミアの姿をさらけ出す。


 ブンッ!


【ミア選手に75のダメージ】


 光線の余波を右手の爪で吹き散らすものの、小さくないダメージを負ってしまったようだ。


「魔王のほんきを……見るが良いぞ!」


 ブアッ!!


 ミアの右手が、怪しく光る。


 ピッ


 音を立てて、俺が保有するスキルポイントが減少する。


 ======

 ■個人情報

 明石 優(アカシ ユウ)

 年齢:25歳 性別:男

 所属:F・アカシアギルド

 ランク:B

 スキルポイント残高:8200(-2000)

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 ミアのヤツ……勝手にスキルポイントをチャージしたな?

 魔王であるミアは、いくつかの”固有スキル”を持っているのだが、どれもスキルポイントの消費が激しく……。


 ザンッ!


「く……面白いわね」


【ブレンダ選手に85のダメージ】


「まだまだこんなものではないぞ、ルリアの巫女よ!」


 もしかしたら、ブレンダはこちらの保有しているスキルポイントを削ろうと意図しているのかもしれない。


「深追いするな、ミア!!」


 一応声を掛けるものの、ブレンダの挑発に乗ってしまった彼女の耳には届かないようで。


「ユウ、ふたりともやべぇ!」


 柱の影から走り出てきたリーサと合流する。


「世界ランク1位は伊達じゃないな……」


 どうする?

 リーサとふたりだけで”戦技リンク”を使うか?


 幸い、ブレンダはミアと格闘戦に入り、こちらを気にしている余裕はなさそうだ。

 先ほどの防御魔法が飛んでくる心配はない。


 ズズン!


「絶好のチャンスだぞ?

 ”戦技リンク”とやらを見せてみたまえ!」


「くっ!」


 地響きを立てながら、大剣を構えたルークさんがこちらに向かってくる。


 3人で発動させたときに比べ、半分程度の威力しか出ないが確かに今しかチャンスはない。

 もう少ししたらチーム・ドーンがリスポーンするので、俺たちにそうそう逆転のチャンスは巡ってこなくなるだろう。


 優勝するためには、ここで大きくスコアを稼ぐしかない。


「リーサ、出し惜しみは無しだ!!」


「うんっ!!」


「攻撃強化技15%!!

 戦技リンク!!」


 ヴンッ!


 バフスキルと同時に戦技リンクを発動させる。


「わたしも!」


「戦技リンク!!

 フレア・バーストっ!」


 ごおっ!


 リーサの爆炎魔法がダマスカスブレードに吸い込まれていく。


「行くぞ!!」


「いっけ~! ユウ!!」


 リーサの声援を背に、ルークさんに向かって突進する。

 コイツにリアルスキルである”天空斬り”を重ね掛けする。


 一時的にでもルークさんの足を止められれば十分だ。

 ルークさんはSSランクで俺はBランク。

 逆転可能なスコアを稼げるはず。


「はああああああああああっ!!」


「ほう……

 その気合や、よし!!」


 ルークさんが初めて大剣を両手で持ち、防御の姿勢をとる。


 ダンッ!


 俺は大きくジャンプして、ダマスカスブレードを振りかぶる。



『な、何だこれ!!』

『わああああああああっ!?』

『きゃあああああああああああっ!?』


「………え?」


 だがその瞬間、耳をつんざく悲鳴がイヤホンから聞こえてきたのだ。

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