第2話 プチトラブル

「グオオオォォォン!!!」

 トレーニングの帰り道、レックスの背後から大地が震えるほどの轟音が聞こえてきた。

「なんだ!?」

 レックスが振り返ると、そこには全長30mはあるであろう巨大なドラゴンが立っていた。翼を広げ雄叫びを上げるその姿は、まさに竜と呼ぶに相応しいものだった。

「お、おいおい……。なんでこんなとこにドラゴンがいるんだよ!?」

 ドラゴンはレックスを見ると大きく口を開けて炎を吹き出した。


 ゴオオオゥッ!


 熱を帯びた紅蓮の業火がレックスを襲う。

「うおっ!」

 レックスは間一髪のところで避けた。

「危ねぇじゃねえかゴラァ!!」

「グオオオオオッ!!」

 レックスはドラゴンにも負けないくらいの剣幕で苦情を言うが、全く聞き入れてくれていない。

 ドラゴンが再びブレスを吐こうと、口内に炎を集め始める。レックスはすぐに態勢を立て直すと拳を強く握りしめ、勢いよく走り出してドラゴン目掛けて殴りかかった。

「オラアッ!!」


 ドゴオォンッ!!!


 鈍い音と共にレックスのパンチが炸裂し、ドラゴンは苦しそうにその場で動きを止めた。

「よし、今のうちに帰ろう!」

 レックスはその場から走り去ろうとしたが、後ろからドラゴンが追いかけてくる。

「グオオォォァアアアア!!」

「もう、しつこいなぁ!」

 ドラゴンは凄まじい速さでレックスへと接近し、右腕を大きく振りかぶっている。それを見たレックスも迎え撃つべく構える。

 次の瞬間、2人は互いの右ストレートをぶつけ合った。


 ドガアアアァァァァンッ!!!


 2匹の攻撃が激しくぶつかり合い、衝撃波が周りの木々を激しく揺さぶる。2匹の力は互角だったようで互いに一歩も引かない。

「ぐうぅ……なかなかやるじゃないか」

 レックスがニヤリと笑みを浮かべながら言った。そして右足を思い切り踏み込み、そのままジャンプして左足で強烈なキックを繰り出した。

「オラァア!!」


 ドゴオオォォンッ!!


 レックスのキックが直撃した瞬間、ドラゴンは大木を薙ぎ倒しながら吹き飛ばされていく。

「ごめんな、俺は帰るぜ!」

 レックスはそう言って、急いで街に帰って行った。やがてドラゴンは地面に落ち、首を振った。今度はレックスを追わずに、どこかへ飛び去って行った。

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