レックス

ちゃむ

第1話 日課の筋トレ

 トカゲ獣人の子供が、巨大な岩を担いで山を登っていた。

 そのトカゲの名前はレックス。二足歩行をしていて、体色は黄土色。体高はおよそ1.3mで、全身は小さくて細かい鱗で覆われている。ティラノサウルスのような顔つきと、太くて逞しい手足と尻尾を持っている。

 レックスは自分の身体より数倍も大きな丸い岩の塊を、両腕で持ち上げながら運んでいた。足を1歩踏み出す度に、ズシンッ!という地響きが起き、足跡をくっきり残していく。

 レックスの額からは汗が流れ落ちている。

「ぐぎぎぎぎぎっ!」

 レックスは鋭い牙を剥き出しにしながら、歯を食いしばっていた。しかしその口角は上がっていて、まるで楽しんでいるかのような表情だった。


 レックスは毎週日曜日にここに来ては、こうしてトレーニングをしている。最初は自分の家にあった丸太を使って筋トレをしていたのだが、すぐに物足りなくなってしまい、山で見つけた岩を筋トレで使うようになった。より大きな岩を見つけては交換しているうちに、今の大きさの岩にたどり着いたのだ。

 この筋トレの甲斐あって、最初は普通の人並みの体格だったレックスも、今では見違えるほど手足が太くなっている。しかし本人は、身体を鍛えるためというよりは、ただ単純にトレーニングが楽しいようだ。


ズシンッ!ズシンッ!


 レックスは豪快な足音を立てながら運んでいく。

 着いたのは山の頂上だった。すぐそばに崖があり、眺めは最高だった。

 頂上に着いたレックスは大岩を地面に降ろした。


 ドスンッ!


 そしてレックスは大岩の上に飛び乗り、足を大きく広げて息を吸い込み始めた。

「ガアアアアアアァァァァァァ!!!!!」


 ビリビリビリッ!!


 レックスはティラノサウルスさながらの咆哮を上げた。その声は遥か遠くまで響き渡り、まるで雷鳴のような轟音を響かせた。

「ふぅ〜、スッキリしたぜ」

 満足げに呟いたレックスはそのまま仰向けになって寝転んだ。息を切らし、全身から汗をかいているが、気持ちよさそうな顔を浮かべていた。

「いい天気だなぁ〜」

 レックスは空を見ながら呟いた。雲一つない青空が広がり、心地よい風が吹いている。ピクニックには絶好な天気である。


「よし、そろそろ帰るか」

 しばらく休憩した後、レックスは岩から降り、大岩を担ぐように持ち上げた。

「ふんぬっ!」

 レックスは腕と胸の間にずっしりとした重みを感じながら、両足でしっかり立って歩いた。そして崖の方へ向かい、大岩を持ったまま飛び降りた。10秒ほど落ち続け、レックスは大岩を担いだまま両足で着地した。


 ドシイィィィンッ!!!!


 凄まじい轟音とともに地面が大きく揺れ動いた。普通なら死んでしまう行為だが、レックスには鍛え抜かれた筋力があるおかげで無傷で済んだ。

「また来週もよろしくな」

 レックスは大岩を地面に降ろして言うと、街に向かって行った。

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