十五話〈重なる鼓動〉


 清明は道満と共に酒を酌み交わし、この先について話し合った。


「しかし、この屋敷もすっかり寂しくなったものだな」

「……お前は、ほとんどここに住んでいるようなものだが、どういうつもりだ?」

「ははっ私まで居なくなれば、お前は一人きりだぞ。それに、我らは一心同体のようなもの、離れられぬ」

「……っどの、口がいうか!」

「ハハッまあ、そう怒るな……どうやら、我らはこの世界では、血を残すわけにはいかぬ。我らの血は、未来に混沌をもたらすらしい。ならば、二人で力をあわせて、新たな術を生み出さぬか? その力を、我が子として大切にせぬか」

「……っ!」


 かわらけを壊しかねない勢いで握りしめる道満だが、急に瞳を伏せて、ため息をついた。


「清明、子を成すことができないのは……本当に良いのか……」


 珍しくしおらしい態度を見せる道満に、清明の嗜虐心が刺激を受ける。

 肩を引き寄せて頭を撫でた。

 道満は声を上げて文句を叫ぶ。


「己は子供ではないぞ!」

「ハハッ道満よ、お前こそ良いのか? 私は、お前を伴侶にと考えているが」

「ばっ、馬鹿な考えだ!」

「道満、本当に素直ではないな」

「ぐ、ぬううう!」


 むくれた道満を宥めつつ、清明は、泰正と英心の婚姻の儀への招待を断った時を思い出していた。

 道満に問われた際には、特に理由はないと話してはいたが、羨ましいと感じていたのだと、今なら己の気持ちが理解できる。


 ふと肩に重みを感じて目を向けたら、道満が頭を乗せて大人しくしている。


「道満?」

「……いいぞ、お前の伴侶になってやっても」

「……そうか!」


 清明は道満を抱き締めて、そっと唇を重ねた。

 唇が熱い……道満が身じろいで、小さな声を上げて震えている。



 季節は師走を迎え、シジウカラメがツピーと囀る声が響いていた。

 


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