第5話 誕生日
誕生日の日は金曜日だった。梓は仕事を終えてすぐに
当日、お昼ごろに
三時を過ぎた頃、慈代は恵人に「何かDVD借りて来ない?」と促してみた。まだまだ時間はあったし、時間が潰せるものが欲しいところだった。近所にレンタルショップがあったので、一緒に行って話題の映画のDVDを二、三本借りた。
お菓子を食べながら二人で見る。恵人にとって、これまで、いろいろ相談に乗ってもらっていた慈代は、何かただの先輩という感じではなかった。ベッドの上に並んで座ってみる。映画のクライマックスのシーンで主人公とヒロインの女性がキスをする。隣で見ている恵人は、そのシーンを見ながら何かそわそわしている感じだった。慈代の方にも、それが伝わり何かドキドキしてしまう。
恵人にとって慈代は、
ふと時計を見ると五時過ぎだった。梓から電話がかかってきた。
「ごめん。恵人君。ちょっと残業になって……本当にごめん。ちょっと遅くなりそう」
「いいですよ」
「また、連絡するね」
慈代は会話の内容を理解できた。
「遅くなりそうなんだ」
「うん」
「でも仕事じゃ、仕方ないね」
二人の間に少しの沈黙が流れた。
「ねえ、恵人君。ちょっとシャワー借りてもいい?」
「え? あ、どうぞ」
「ごめんね。今日はみんなで泊まっていく予定だったから……あ、私、泊まっていってもいいんだよね」
「いいですよ。全然」
「よかった」
「シャワー借りるね」
バスルームに向かう慈代。
「あ、ごめん。バスタオル借りていい?」
「あ、どうぞ」
慈代はタオルと自分の持ってきた袋を持ってバスルームに行く。
緊張する恵人。バスルームの音が気になる。
しばらくして慈代が出てきた。
「ありがとう」
「恵人君もどうぞ。恵人君の部屋だけど……」
微笑む慈代がかわいらしく、色っぽかった。
恵人もシャワーを浴びる。ついさっきまで慈代が使っていたバスルーム。心臓がドキドキしている。
バスルームから出てくると慈代が果物を
「一緒に食べよう。梓さん遅くなりそうだし」
二人で果物を食べる。特別な時間だった。
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