第6話 二人の時間 慈代

「ねえ、別のDVD見ようか?」

「うん」

DVDをセットしてベッドに二人で並んで座る。恵人は慈代のいい香りが気になっていた。慈代は恵人に体をくっつけるように近づいた。そして頭を恵人の肩に乗せるようにした。


「梓さん……ずっと来なければいいのに……」

「え?」

「そうじゃない?」

「……」

「恵人君はそうじゃないの……梓さんに来て欲しい?」

慈代は恵人の顔を覗き込むように見つめ、スッと顔を近づけ唇を合わせた。

恵人がつばをのみ込むのがわかった。慈代は唇を合わせたまま、恵人に体を預けるように両腕を恵人の首の後ろに回した。

うつろな目線で、恵人を見つめる

「梓さんの方がいい?」

恵人が首を振る。


そのまま二人はベッドの上に横になった

「私……梓さんより恵人君のこと大切に思ってると思うよ」

恵人も慈代を抱きしめ、そして、もう一度唇を合わせる。

「慈代さん……」

「『さん』はいいよ」

「一つしか違わないんだよ……慈代ちゃん。二人の時は……」

「慈代ちゃん……」


恵人の口から、言いたい言葉が出ない。


慈代が優しく言う。

「いいよ……したいことして……いいよ」


二人は体を合わせ愛し合った。慈代も恵人も初めてだった……初めてだったが、慈代は恵人を受け入れ、目を閉じた……二人は一つになり……恵人は慈代に愛をそそいだ……そして、そのまま二人は抱き合った……


「恵人君……もう梓さんって言わないでね。私の方が、梓さんより恵人君を幸せにしてあげられるんだから……」


うなずく恵人の小指を取って、

「約束」

と言って微笑んだ。

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