第27話 精霊
眠りから目を覚まして、寝ている場所から少し離れた場所に用意しているテーブルからコップを取って、お湯を注ぎ込む。
魔石の欠片を使って使える魔道具。水をお湯にしてくれる魔道具『ケトル』という。これはセリナさんが僕達のために貸してくれた魔道具だ。
コップに注がれたお湯に、隣に置かれた瓶をとって中にある粉を入れると、色がどんどん赤く変わっていく。
これは紅茶と呼ばれているもので、安価で流通しているらしい。
「おはよう~」
後ろからアリスの声が聞こえてきて、朝から美少女の笑顔を見れる幸せをかみしめる。
アリスの分の紅茶も作り、渡すと「ありがとう」と二度目の笑顔を見せてくれた。
紅茶を楽しんだ後、朝の体操をして狩りの支度を始める。毎日やっていると今では何とも思わなくなるものだ。
「アレンくんの意地悪……」
そんなつもりはなかったけど、やっぱり新しい
丁度全ての支度が終わったので、僕も気になっていた新しい魔法〖エレメンタラー〗を使ってみたいと思う。
両手を前に繰り出して集中する。〖フレイムバレット〗や〖アースランス〗とは違い、〖エレメンタラー〗の魔法は少し性質の違う魔法となっている。
僕の前に赤、青、緑、土の四つの光が現れる。
「綺麗~!」
光は少しずつ大きくなり、拳くらいのサイズになって形を作り始める。
赤の光は、赤色の体を持つ羽根が生えたトカゲに。
青の光は、水色の体を持つ羽根が四枚生えた魚に。
緑の光は、翡翠色の体を持つ小鳥に。
土の光は、土色の体を持つ羽根が生えた子豚に変わった。
「凄い~! 精霊魔法なんて、初めてみるよ!」
アリスが驚く通り、僕が使った魔法は、精霊魔法〖エレメンタラー〗。普通の魔法とは違い、召喚魔法にも部類される精霊魔法は、別次元に住んでいると言われている精霊を召喚する魔法だ。
魔法を司るのは【魔法の神エーテリア】様で紫色だ。それに対する【エレメンタラーのルーン】は緑色であり、精霊の神ティアグラが司る色となっている。ちなみにただの召喚魔法は紫だったりする。
「精霊魔法のルーンがあると噂では聞いたことがあったけど、実物を見るのは初めてだし、迷宮都市ではアレンくんしか持ってないんじゃないかな~」
「やっぱり珍しいんだね」
「ものすごく珍しいよ! 精霊魔法なんてエルフ族使う魔法だから、中々見れないわよ」
エルフ族は聖なる森に住んでいる種族で、他種族との関わりを殆ど持たないとされている。迷宮都市ではちょいちょい見かけたりするけど、あまり良い印象はない。
「それにしても四体も召喚できたんだ? アレンくんって知力ステータスが高いみたいだね」
「そうかな? まだB+だけどね」
そう答えるとアリスが驚いた表情を浮かべる。
「そっか。あれだけ魔法が操れるんだから、ステータスが高いのも頷けるね」
ステータスはCが折り返し地点なので、そこから四つも上のB+は高い部類のようだ。そもそもアリスのステータスの方が遥かに高いから、自分のステータスが高いというイメージはあまりない。
「そろそろ二層に向かおうか」
アリスと共に二層に移動した。
精霊の不思議なところは展開さえしてしまえば、ずっと共にいてくれて飛んだ後も追いついてきた。常に僕の周囲を飛んでいる感じ。
ロックゴーレムが現れるまでダークウルフを相手にする。
今回試すのは僕とアリスではなく、召喚した四体の精霊たち。彼らは言葉はないけど、こちらの頼みなら何でも聞いてくれるし、普段はそれぞれの〖フレイムバレット〗〖アースバレット〗〖アクアバレット〗〖ウィンドバレット〗を使う。
ダークウルフに向かってそれぞれのバレットを発射すると、無数のバレットによってダークウルフが一瞬で倒れた。
「精霊たちって凄いね~」
「うん。頼みも聞いてくれてありがたいかな」
精霊たちが嬉しそうに僕達の周りを飛び回る。
その時、〖探知〗にロックゴーレムの反応があった。
すぐにアリスと共にロックゴーレムに向かって走って行く。途中の魔物はアリスが一瞬で斬り捨てたり、僕の魔法で撃ち抜く。
道を走り抜けるとロックゴーレムが見えた。
「みんな! 無理しない程度にお願い!」
精霊たちが一気に飛んでいき、魔法による攻撃が始まる。
ロックゴーレムが精霊に向かって攻撃を始めるが、攻撃は全く当たらない。その理由は精霊は精神体なので、直接攻撃は当たらない。
ただ、精霊も無敵で万能ではない。魔法攻撃には非常に弱いので相手が魔法攻撃をしたら精霊は非力だ。
アリスがロックゴーレムの足を崩して、精霊達の魔法がどんどん続き、ロックゴーレムを倒した。
すぐに五層に移動してアリスと精霊たちと一緒に戦いを続ける。
精霊は一度召喚すれば、ずっと召喚されたままだし、とても助けになる。
その日狩りを終えてセリナさんに会いにいくと、精霊たちを見て大きく驚いて見せた。やっぱり精霊ってめずらしいんだと分かる。
その日から暫く狩りを行いながらルーンのレベルを上げる日々を送った。
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