第15話 四層
ロックゴーレムを難なく倒せるようになってから、僕の狩りのペースが分かり始めた。
まず、毎日ロックゴーレムを狙ってダンジョン二層に出向く。フロアボス魔物は一日に一体しか現れないが、【探知のルーン】のレベルが上昇したおかげで探知範囲がかなり広くなって探すのにそう苦労はしないし、迷路のようなダンジョン内を手に取るように歩けるのも大きい。
ロックゴーレムを倒したらすぐにダンジョン三層に飛ぶ。
黒い大型狼は、グランドウルフと呼ばれている種の二層のダークウルフの上位種のようだ。フクロウはオウルと呼ばれる魔物だ。
三層にはフロアボスが存在せず、深い森で道に迷いやすくて危険な階層として有名らしい。これも僕は探知のおかげでそう苦労することなく狩りに集中できている。
そして、森林を抜けて、四層への道を降りた。
四層の風景が一変して、広い平原が現れた。今までの地形の中では一番穏やかな地形だが…………残念ながら僕にとっては一番
だから一度三層に戻り、対策のために三層で狩りを続けた。
◆
六日後。
ダンジョン二層でのロックゴーレムを倒しつつ、三層で魔石の欠片を集める生活を続けた。
そして本日は、旅商人セリナさんから食材を購入する日となった。
「なるほど…………アレンくんとしては、顔がバレないようにしたい…………それならこれしか方法がないかしらね」
そう言いながら大きなリュックの中から取り出してくれたのは、体を全部覆えそうな大きなフード付き
「これなら顔は隠せられるし、着用している人も多い。冒険者としてのスキルを他の人に覚えさせないためによく使われているから、ダンジョン内や迷宮都市でも付けてる人も多いよ」
「それは助かります」
ダンジョンですれ違う人に外套を深く被っている人を見かける時があったけど、そういう意味があったんだな。
普段から他の冒険者と違ってリュックも背負っていないので、外套で全身を楽々覆うことができた。
「セリナさん。これは今回の素材です」
魔石の欠片や魔物の爪と共に魔石を五つ渡す。いくら地図が見えていても、遠い場所に現れて他のパーティーが倒してしまうことも多かった。でも五回も戦えただけでも十分だと思う。
「この短期間に魔石五つ……アレンくんを高く評価していたけど、それでも
「そうなんですか?」
「ええ。アレンくんがどういう才能を持っているかは分からないけれど、フロアボスとこうも簡単に出会える人も珍しいと思うし、一人でロックゴーレムを倒せているのも凄いと思うわ。そこは商売のためにも深くは聞かないけど、無理だけは禁物よ? 命あっての物種だから」
「はい。それは心得ています。僕も絶対に生きて生きて、生き抜きます」
「偉いわ。そういえば、また安いルーンを仕入れて来たけどいる?」
「欲しいです!」
寧ろお願いしたいくらいだったのに、そこはさすがのセリナさんだなと思う。胸ポケットからルーンを渡してくれた。
「ありがとうございます!」
「これも付けだからね。まあ、こんな感じなら余裕で返済できるそうね」
彼女に再度感謝を伝えて、いつもの食糧を受け取って一度奈落に帰ってきた。
食糧を仕舞い込んで、すぐにルーンを試してみる。今回受け取ったルーンは全部で四つ。全部白色のルーンだ。
【聞き耳のルーン】【忍び足のルーン】【瞑想のルーン】【投擲のルーン】の四種類だ。それともう一つ分かったことは、どうやら今の装着可能な枠は全部で九枠らしい。追加装着枠は全部で六つだった。
なので【ワープのルーン】は魔法を使う際に切り換えることにした。【ブレッシングのルーン】に関しては持っているルーンの中で一番優先させたいので常に装着させておく。それによって、常に倉庫入りが決定した新規ルーンは【投擲のルーン】だ。いまいち使い道がなさそうで急ぐものでもないので、ひとまず他のルーンのレベル上げだ。
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名 前:アレン・ティグレンス
才 能:make progressLv.4
レベル:47
状 態:〖ブレッシングLv.6〗
【能力値】
筋 力:E+ 耐 久:C
速 度:E+ 器 用:E
魔 力:B 知 力:D+
耐 性:D+ 運 :B-
【ルーン】
・フレイムバレットのルーンLv.9
・アースランスのルーンLv.6
・ブレッシングのルーンLv.6
★小経験値獲得のルーンLv.6
★回避のルーンLv.6
★探知のルーンLv.6
★聞き耳のルーンLv.1
★忍び足のルーンLv.1
★瞑想のルーンLv.1
【魔法】
〖フレイムバレット〗〖アースバレット〗
〖ワープ〗〖ブレッシング〗
【スキル】
〖探知〗〖聞き耳〗〖忍び足〗
【マスタリー】
〖小経験値獲得〗〖回避〗〖瞑想〗
【ルーン倉庫】
・ワープのルーンLv.9
・投擲のルーンLv.1
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今回手に入ったルーンの中で一番効果が期待されるのが【瞑想のルーン】だ。このルーンは通常時――――つまり、Lv.1の時は大した効果を持たない。ほぼほぼ効果がないのと同じなので一番のハズレルーンの一つだけど、僕の才能でレベルが上がるようになれば、もしかしたら効果が上がってくれるかもしれない。どのみち、奈落に戻ると休憩する時間が長いのでこれから重宝しそうだ。
魔素回復までの待機時間でスキルの効果を試してみる。
投擲は何かを投げる時に少しだけ遠くまで投げれるようになったけど、恩恵はほぼ感じない。聞き耳と忍び足もある方がマシ程度のもので効果はさほど高くはなかった。
検証や食事を終えて、時間が経過して魔素の回復を感じたので二度目の狩りをするため――――四層へ向かった。
◆
四層の平原でも外套を深く被っていれば問題はなさそうだ。他にもちらほら見えるが、一人でいる冒険者の姿は見かけない。
人がいない場所を歩き回っていると、目の前の地面がどんどん盛り上がると、中から二メートルくらいの熊が現れた。洞窟だと魔物が壁から現れるとか聞いたことがあるけど、壁だけでなく地面からでも現れるんだな。
すぐに〖アースランス〗を展開して魔物が体制を整えるまで貫いて倒す。ロックゴーレムを二発で倒せるんだから、通常魔物なら殆どが一撃で倒せる。そろそろ〖フレイムバレット〗を進化させてもいいかも知れない。
四層は熊型魔物のブラックベア、空を飛んでいる鳥型魔物のガルーダ、草原を駆け巡る緑色の馬型魔物ウィンドホースの三種類を見かけた。
ブラックベアはまだ動きが直線的なので魔法で貫くのが楽だったけど、ガルーダとウィンドホースは知能が高く、こちらから放った魔法を易々と避けていた。ある程度の距離なら避けられる前に当てられるのが分かったので、無暗に魔法を放つのではなく、魔物を引き付けて〖フレイムバレット〗で転ばせて〖アースランス〗でトドメを刺してを繰り返す。
魔素を考えれば無駄のある動きではあるけど、安全第一で焦らず狩りをするために連携で魔法を撃つことを意識する。
そんな中、大きな雄たけびが聞こえて覗いてみると、三メートルはあるんじゃないかと思える大きな白い虎型魔物と冒険者パーティー四人が対峙していた。
盾を持った剣士が注意を引きながら、後方から魔法を放って攻撃に専念する魔法使いが二人。もう一人は周りを見ながら三人に指示を飛ばしたり、現状を言葉にして伝えていた。
パーティーの形はさまざまだと聞いていたけど、戦うだけではなくメンバー間の意思疎通を専門で取るメンバーがいるのも面白い構成なんだなと思える。
魔法使いの二人も決して被ることなく魔法を交互に撃ち、いつでも逃げられるように構えていた。
暫くそのパーティーの戦いを眺めて、彼らが勝利した時点で魔素量から一度奈落に帰還して休憩に入った。
パーティーメンバーか…………そう思うとミハイルさんたちのパーティーで一緒に狩りをするのが夢となっている。必ずみなさんの下に戻れるように頑張ろう。
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