第14話 再戦
「やあ。お待たせ」
セリナさんが笑顔で岩場の裏に入って来た。もちろん僕の心臓が跳ねるのは言うまでもない。今日の日を待ち焦がれていたから。
「セリナさん……! ど、どうなりましたか?」
「ふふっ。そんな慌てないの」
そう言いながら大きなリュックを下ろして、中を探し始める。そして、中から
「はい。これがアレンくんの新しい武器よ」
受け取った杖を見つめる。
大きさは四十センチくらいの長さで、先端には
「綺麗…………」
「ふふっ。有名な鍛冶師に作って貰ったものよ。結構高かったから返済は覚悟しておいて」
「もちろんです! 約束は必ず守ります」
「私は性能のことはよくわかってないけれど、それを作ってくれた鍛冶師のグランエルデさんは最上級鍛冶師であり、最上級の杖で間違いないわ。だから死なない程度で頑張ってね」
「はいっ!」
魔石の欠片を渡して、食糧を受け取る。
セリナさんと別れてすぐに奈落に戻った。これで大体の準備を終えた。早速休憩に入る前に新しい杖を試してみる。
手で狙うのとはまた感覚が違う気がする。杖の魔石の部分を前に向けて〖フレイムバレット〗を数発連続で撃つ。魔石がキラリと光り、僕の魔素が杖を通り抜けて〖フレイムバレット〗になるのを感じた。
そして、放たれた〖フレイムバレット〗は今までと比べて弾速が倍となり、大きさも一回り大きくなっている。まるでルーンのレベルがいくつも上がったような感覚。消費魔素は減らないようだ。壁にぶつかった威力から一番上昇したのは火力かも知れない。
これなら……これからの狩りに大いに役に立つこと間違いなしだ。
魔素回復時間のために携帯食を食べながらゆっくりと眠りについた。
◆
目を覚ましてダンジョン二層に向かう。スキル〖探知〗を発動させる。スキルは自分の意志で発動できて、パターンは二種類存在する。ディレイが存在するかしないか。
スキル〖探知〗の場合、ディレイが存在しないのでいつでも発動を自分で決められる。魔素を使うわけではないので常に使い続けることも可能だが、スキルの発動はものすごい精神的な負担になるので、常に使い続ける程の精神力が必要になる。
そこで僕にとって素晴らしいのは、ルーンのレベルが上昇すること。それは何も魔法だけ適応されるわけではなかった。スキルもマスタリーも全ての効果が上昇する。
つまり、スキル〖探知〗の探知できる範囲も上昇しているし、精神的な負担もどんどん少なくなっている。もしかしてルーンのレベルが10になったら常時発動でもいいのかも知れない。
探知状態のまま道を進み、目に見えるのとはまた違う地図を別な視点で見るかのような感覚のまま進んで行く。そして、辿り着いた場所は――――三層への入口だ。
迷うことなく三層に入る。
三層は入ってすぐに天井が高く、広大な景色が広がっている。ダンジョンの中は全部洞窟のようなものだと思ったら三層は全然違う。天井は確かに洞窟なんだけど、不思議と眩しくて、目の前には深い森が続いている。
視界は相当悪い。けど、スキル〖探知〗があれば、森の道でも手に取るように分かる。
(ふぅ…………)
一度大きく深呼吸して、森の中に入っていく。この先に魔物がいるのが分かる。
大きな樹木の隙間から大きな四足方向の魔物が見える。黒い毛並みは大きな狼のような、顔がもっと怖い姿をしている。
新しい杖をかざす。そして――――〖フレイムバレット〗を撃つ!
一気に飛んでいったフレイムバレットは、反応される前に黒い大型狼の頭部に直撃する。それとともに狼が倒れ込んで起き上がらない。
杖を通して撃ったことによって相当火力が強くなったようで一撃で倒せるようだ。急いで魔石の欠片を回収して次々進んで行く。他にもドロップ品としては爪のようなモノがあった。
さらに黒い狼だけでなく、フクロウの姿をした舌が長い魔物もあり、飛んでいても音が聞こえないので〖探知〗がなかったら酷い目にあったと思う。
初めての三層を攻略しながら地形を覚えて奈落に戻った。
◆
さらに三日後。
ずっと三層の攻略を繰り返して思うのは、二層と違って深い森だからこそ、魔物に出くわす確率が下がっていることだ。それに障害物も多くて、時によっては放ったフレイムバレットが樹木に当たって威力が半減したりと戦いは上手くいかないときもあった。
それでも新しい杖のおかげで火力に申し分はなく、最近は弾速まで早くなったフレイムバレットを動く狼に当てるのも容易くなってきた。
そして本日。
【探知のルーン】【小経験値獲得のルーン】【回避のルーン】のレベルが4から5に。
【アースランスのルーン】のレベルが5から6に上がった。
【ブレッシングのルーン】がレベル6に上がるにはあと一日は必要だと思われる。
これで本来の目的を目指す。
目指す場所はダンジョン――――二層。
久しぶりに来た二層は洞窟の道が続いている。ダンジョン地変によって道は変わっているが、見た目が変わるわけではない。
レベル5になったスキル〖探知〗をを発動させて足早に歩き始めた。
ダークウルフやホブゴブリンを倒しながら数時間狩りを続けた。
そして――――僕の探知によって地図にひと際大きな気配を探知した。間違いなく
最短ルートを通って進んで行くと、以前感じた地鳴りを感じる。真っすぐ進んだ道の先には岩でできた大きな体を持つロックゴーレムが佇んでいた。
二度目の対峙。前回は辛うじて勝利を収めたが、完全勝利ではない。僕はこれからも強くならないといけない。
僕は杖をロックゴーレムに向けた。
「ここからだ…………ここから! 僕は――――英雄冒険者になるんだ!」
右手から杖に魔素が通っていく。杖の魔石に紫の光が集まり、目の前に魔力の塊が集まり始める。
「行け! ――――アースランス!」
一瞬にして、一メートルに近い尖った岩が出現して、高速回転しながら発射される。
佇んでいたロックゴーレムが動く前に僕が放ったアースランスが直撃する。
受け止めたロックゴーレムだったが、その腕ごとアースランスによって貫かれる。
さらに二回目のアースランスでトドメを刺す。二発目はロックゴーレムの頭部を貫いた。
たった二発で沈んだロックゴーレムには虹色の魔力の粒子を放ちながら水晶が浮かんでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます