第4話 進化
ダンジョン地変によって落ちてから数時間が経過した。
そこで知ったことは、やはりここに魔物は現れない。ただただ広い場所で、一番の問題は食べ物がないこと。この場所を僕は【奈落】と名付けることにした。
二つ目は、僕の才能【make progress】のことだ。
まだ確実に分かったわけではないが、この才能はどうやら【ルーン】に影響を及ぼす才能と見て間違いなさそうだ。
その理由として、現在装着しているルーン二つ【自然治癒のルーン】と【剛力のルーン】の隣に書かれている【Lv.1】という文言が、【Lv.2】になっている。それによって僕の筋力が【F+】から【E-】に上昇した。
ここで仮説を一つ立てるとしたら、【Lv】というのは装着して時間が経過すると
Lv.1のときは筋力が【F+】だったけど、2に上昇したら【E-】に上昇したからだ。そして、自然治癒の方も試した。
自分の左手の甲に錆びた短剣で小さな傷を付けてどれだけ早く回復するのか試した結果、Lv.1の時は十秒掛かっていたのが、Lv.2になった後は九秒で回復した。となると自然治癒も上昇してみていいだろう。
ルーンを装着したときに聞こえてきた女性の声の言葉通りなら、Lvが成長するのは何もルーンだけではない。僕の才能【make progress】の隣にもLv.1と表記されているので、ルーンが成長していけばいずれこれも2に上昇するだろう。その時の効果は不明だがとても楽しみだ。
さて、奈落でここまで検証ができなのはいいが…………問題は食事だ。
丸一日食べられない日も多かったので我慢するのは大した問題ではない。恐怖に震えて脂汗を流したものの普段の生活からそう変わったことではないので問題ではない。
今日一日はどうにかなると思うが……水はどうにもならない。食事よりも水が欲しいところだ。
ここから出る方法……落ちてきたところを這い上がるしかないが、どれくらい上なのかすら見当もつかない。
ルーンを成長させながらどうしたらいいか悩み続けた。
◆
奈落に落ちた次の日。
太陽や月が見えないので日が過ぎたのかは分からないけど、体感では二日目を迎えたのが分かる。
その時、またもや周囲が揺れ始めた。
あの時と同じダンジョン地変だ。ダンジョン地変というのは、意志を持つと言われているダンジョンが常に構造を変え続けており、構造を変える時に起こる地震のことだ。僕のときみたいに急に地面が崩れて落ちるなんてことは日常茶飯事だという。
現に僕もこうして奈落に落ちたわけだし。
地鳴りが終わると、上部から何かが落ちて来る気配がした。急いで壁面に移動して錆びついた短剣を構える。
奈落中央に何かが一つ落ちてきた。地面に叩きこまれて痛々しい音を響かせる。
恐る恐るその正体を見ると、全身が傷だらけの獣人族だった。とてもじゃないが生きていられない傷だ。急いで近づいてみたが、やはり息はしていなかった。それに傷も少し古くて数日前に亡くなったと思われる。
恐らく冒険者だっただろう彼に手を合わせて祈りを捧げて、生き延びるために荷物を探させてもらった。
運がいいのか仰向けになっている彼の背中には大きめのリュックが背負わされており、中身に期待が走る。
肩ひもを短剣で斬り落として、重量感のあるリュックを持って壁面に移動した。もしまた上から何かが落ちて来た時の対策のためだ。そういや、僕自身も落ちた時は奈落中心部だったなと思い返した。
落ちた衝撃でよく生き残ったなと胸をなでおろす。
さて、リュックの中身を開く。できれば食べ物があったらいいな。と思って開いたリュックの中には携帯食が入れられている。一人でもダンジョンに数日は潜れるように準備してきたようだ。
こちらの食材はありがたく頂くとしよう。生きるためには仕方ないからね。
パンの小麦粉の味のスティック型の携帯食を食べ始める。少量だが水筒まであるのは大助かりだ。量が少ないので一口だけ飲んで生き延びるためにどうしたらいいか考え込んだ。
形態食をできる限り少しずつ食べて凌ぐ。そして本日。遂にルーン二つの【Lv.2】が【Lv.3】に上昇した。
それによって筋力が【E-】から【E】に上昇した。
◆
ルーンが【Lv.3】になってから二日が経過した。
ルーンの【Lv.3】が【Lv.4】に上昇し、いつもと変わらず筋力【E】が【E+】に上昇した。
それと以前リュックをもたらしてくれた獣人族の亡骸から武器を抜き取った。サブ武器だと思われる足下に格納されていた刃四十センチ程の剣を手に入れた。錆びついた短剣よりはずっと使えそうだ。
◆
ルーンが【Lv.4】になってから四日が経過した。
ここに来て七日が経過した本日、遂にルーンの【Lv.4】が【Lv.5】に上昇した。
《才能【make progress】が成長しました》
!? ルーンだけでなく遂に才能【make progress】が成長した!? 急いでステータス画面を開くと【make progressLv.1】が【make progressLv.2】と表記されている。
《才能【make progress】の
!? またもや女性の声。今回彼女の言い分から【Lv】という文字を【レベル】と読むことを知った。通常のレベルは魔物を倒して経験値というのを取得していくと上がっていく。となるとルーンの経験値は装着して時間が経過すると経験値が貯まりレベルが上昇するとみていい。さらにルーンのレベルが上昇すると一定の経験値が才能【make progress】の経験値となり、【make progress】のレベルが上昇する仕組みとして間違いなさそうだ。
さて、次は【ルーン進化】だ。
ステータス画面を開くと装着しているルーンの隣に【進化】というボタンがある。ひとまず、【剛力のルーンLv.5】の【進化】を押してみる。
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名 前:剛力のルーン
進化先:
【強剛力のルーン】
┗条件:Lv.5
【超剛力のルーン】
┗条件:中級進化、Lv.10
【絶剛力のルーン】
┗条件:上級進化、Lv.10
【フレイムバレットのルーン】
┗条件:なし
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進化先の選択肢が四つ存在する。その中でも真ん中の二つ【超剛力】【絶剛力】は進化できないと表示されている。恐らく【中級進化】や【上級進化】が必要だと思われる。
【強剛力】は今でも進化させられて、もう一つ【フレイムバレット】も進化させられる。一つ気になるのは、一番下の【フレイムバレット】。条件なしで進化させられる。
では実験のために、【剛力のルーンLv.5】を【強剛力】に進化させてみる。
右手の甲の黒い紋様が黒い光で輝くと共に、右手の手のひらの中にルーンの感触があった。
ステータス画面では【剛力のルーンLv.5】は消えている。代わりに僕の右手の中に赤い色のルーンが握られていた。
再度装着すると、消えた剛力のルーンの場所に【超剛力のルーンLv.1】と表記されていた。
さらに、進化ができるようで押してみると、
---------------------
名 前:強剛力のルーン
進化先:
【超剛力のルーン】
┗条件:中級進化、Lv.10
【絶剛力のルーン】
┗条件:上級進化、Lv.10
【フレイムバレットのルーン】
┗条件:なし
---------------------
剛力のルーンの時から強剛力のルーンだけが消えた進化ツリーが現れた。
もう一度検証のために、今度は【フレイムバレット】に進化させる。
強剛力同様右手の中に現れた赤いルーンだが、中に刻まれているルーン文字が変わっている。恐らく
装着してみると、ステータス画面は以下のように変わった。
---------------------
名 前:アレン・ティグレンス
才 能:make progressLv.2
レベル:1
【能力値】
筋 力:F- 耐 久:F-
速 度:F- 器 用:F-
魔 力:F- 知 力:F-
耐 性:F- 運 :F-
【ルーン】
・自然治癒のルーンLv.5
・フレイムバレットのルーンLv.1
・-
【魔法】
〖フレイムバレット〗
【マスタリー】
〖体力自然回復力上昇〗
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