第43話 劣等聖女と不貞腐令嬢

 無事ソラちゃんとルナちゃんの勧誘が成功し、かわいいメイドさんを確保……げふんげふん、引き入れることができてよかった。ただ、今すぐに私の邸宅が完成するわけじゃないから、即雇用というわけじゃない。


 しばらくは二人の生活はそのままということなので、その間のルナちゃんが少しだけ心配だ。受心の加護を模倣してみた感じ、私の劣化模倣だと効果が強くないからそれほど苦に思うことは無かったけど、範囲も広くたくさんの想いを無差別に拾ってしまうルナちゃんのストレスは計り知れない。


 勧誘する材料としてあったように近くに置いて診てあげられるのが一番いいんだろうけど、オルストロン邸に居候してる分際で勝手に人を連れてくるなんてできない。こればっかりは仕方ないのでしばらくは暇があれば遊びにいこうと思う。


「ネルさーん、いつまで寝てるんですか? 寝るネルですかー?」


 エフィは今私の背中におぶられている。ソラちゃんはエフィが起きるまでいてもいいって言ってくれたけど、いつまでもお邪魔する訳にもいかないからエフィを持ってお暇させてもらった。


「起きないねぇ……」


 なんかよく分からないけど荒ぶりだしたから強引に黙らせたけど、激しいキスで変にスイッチ入っちゃったからムラっとする。


 そして、おんぶしてるから当然なんだけど、背中に当たる柔らかいのが歩く度に形を変えて私の理性を刺激してくる。お姫様抱っこにすればよかった。


 しかし、本当に起きない。声をかけても、揺らしても、お尻を揉んでも起きない。これは罰なのか。オルストロン邸に帰れるまでこの生殺し状態が続くなんて拷問すぎる。


「起きないとキスしちゃうぞ〜」


「んっ……あと五年、です」


「へぇ……五年間尻叩きコースをご所望とは……さては変態ちゃんか?」


「あんっ……ちょ、起きます。起きますから、んっ……叩かないでください」


 もぞもぞと動き出したエフィだったけど、誰かさんみたいな面白い冗談を言い出したのでこれには乗っかってあげないとと思う。私の背中に五年縛りはちょうどいい位置にあるかわいいお尻がとんでもない事になるというのを教えてあげると、エフィは私にいい声を聞かせてくれてから背中から抜けだした。


「まったく……人の寝込みになんてことしてくれてるんですか? しかも人目のある街中で……」


「興奮した?」


「………………ちょっとだけ」


「ならいいじゃん」


「ひゃっ……このセクハラ魔……っ」


 そこにかわいい尻があるのが悪い。よって私は無罪。

 調子に乗って撫でまわしたら結構ガチ目に睨まれてしまった。かわいい。


「……というか私はなぜ気絶させられたのでしょうか? 釈然としません」


「でも気持ちよかったでしょ?」


「それは……その、はい。すごくゾクゾクしました」


 キス+伝心の加護の絶大な威力をその身に受けたエフィ。身体は正直だったね。

 ただまあ、今はもう伝心の加護の模倣が切れているから、今日の夜には使えないと思うと少し残念かもしれない。


「ですが、それとこれとは別の話です。あんな風に無理やり唇を奪われて黙らせるのに正当な理由はあったのですか?」


「ないよ。強いて言うならキスしたかった」


「なっ……くぅ、それなら仕方……ありませんね?」


「あ、いいんだ」


 てっきりもっと抗議の意を示してくるかなと思ったけど、意外と簡単に引き下がるね。まあ、正直その気持ちがあったのも本当だし、あれがエフィを一番手っ取り早く静かにさせられると思ったからだ。実際、キスされてエフィは言葉を封じられてたもんね。そのままノックアウトまで持っていければこっちのもんだし、そうじゃなくても放心状態にできれば正気に戻るまでの時間は稼げた。


 どちらに転んでも私的には問題ない。つまりあのキスに裏目はなかったということだ。


 ◇


 その後、オルストロン邸に戻り、今はエフィの部屋にいる。

 お忍び用の装いから着替えて、呼び名も戻して、普段通りになった。


「ごめんね。初デートだったのに、こんなんなっちゃって」


「……そうですね。埋め合わせは当然してもらいますが……キスされて気を失っていた時間が長かったのでその分もちゃんとお願いしますね」


「分かってるよ。でもエフィがあんなに取り乱したのかが不思議だよ。ブランって言っちゃうほど慌ててたしどうかしたの?」


「その……ブランさんが私より下だと知って……驚いてしまいました」


「下? 何が」


「……年齢です」


「……あー、そういう」


 すべてを理解した。

 恥ずかしそうに、それでいてどこか不貞腐れたように頷くエフィがどういう気持ちあんな風に取り乱したのかをなんとなく分かった気がする。


「なになに、年下の私にめちゃくちゃにされちゃって、年上の威厳がーとか思っちゃったの?」


「……分かっているならわざわざ言葉にしないでください」


 むすっとした表情をしたエフィをにやにやと見つめる。

 まさかエフィがそんな事を気にしていたとは思わなかった。


 確かに主導権は常に私が握っているし、エフィは私にされるがままだ。

 でも、年齢がどうのこうのって言っても、エフィに主導権を渡してあげる気はさらさらないし、今日だってめちゃくちゃにしてやろうと思ってる。


「そんな事思って不貞腐れても無駄だよ」


 私はエフィに身体を寄せて、手を重ねる。

 耳にフッと息を吹きかけて囁くと、エフィの身体がぴくんと反応したのが分かった。


「エフィはさ、もう私のモノなんだよ?」


「あっ……」


 引き締まったお腹を服の上から指でなぞってあげるとエフィは甘い声を漏らす。

 その声が私の理性をボロボロと崩して、臨戦態勢へと移行していく。


「まだ明るいけど……夜まで待てないや。ね、いいよね?」


「……私はブランさんのモノ……なんでしょう? 拒否権があるのですか?」


「ないね。よく分かってて偉い」


「んっ……はぁっ……」


 そのままベッドに引きずり込んで押し倒して、軽く唇を奪う。かわいいエフィに煽られっぱなしで結構我慢させられてたから、容赦はできそうもない。


「ブラン、さんっ……もっと……」


 目をとろんとさせたエフィが私を求めて唇を尖らせる。どうやら我慢していたのは私だけじゃなかったみたいだ。なら、遠慮はいらないね。

 年上の威厳とかそんなのどうでもよくなっちゃうくらいに、また分からせて……その綺麗な身体に教え込んであげようと思う。


 さ、まだ夜になってないけど、今夜も寝かさないよ。

 覚悟はいいかな、私のかわいいお姫様。

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