劣等聖女と加護革命
第33話 劣等聖女の独立計画
あれからしばらく経って私達も国の方も落ち着いたかな。
ルクセウスさんから聞いた感じだとアメリア公爵令嬢はきちんと聖女の役目をこなせているみたいだ。私の方に緊急の出動要請はまだ来ていない。っていうかそんなほいほい要請されても困るけどさ。とりあえずレナード殿下も次期王妃のアメリア公爵令嬢にあまり負担をかけるなと絞られたみたいだし、しばらくは大人しくしてるでしょ。次なんかやらかす時は私に実害が出ないようにしてもらいたいね。
オルストロン公爵邸での生活は相変わらずだ。いつものようにリンネに世話を焼かれて、エフィと過ごして、エフィとイチャイチャする。それに尽きる。
最近はエフィが私の寝室で一緒に寝てくれる日も増えているので退屈しない。寝せてあげるかどうかは私次第だけど……って我が物顔で私の寝室とか言ってるけど一応私居候なんだよね。
聖女を辞めて、加護を利用して適当に食いつないでいこうと思っていた私だけど、エフィと運命の出会いを果たし、拾われ、今もこうして保護されている。そのことに関しては本当に感謝しているけど……これでも一応聖女なのでいつまでも居候を続けるのはいかがなものかと思う。
この件に関してエフィとエフィのお父さんに相談してみたところ、二人は正反対の答えをくれた。
エフィは瞳をウルウルとさせて、ずっと居候でいいと私を諭すように繰り返した。いや、まあ……そうできればいいんだけどさ、体裁がね。
で、ルクセウスさんはオルストロン公爵家を後ろ盾にしながら一人の聖女として独立する案を推してくれた。私も今のところその方向で考えている。
私の目的……もっとたくさんの加護を手に入れるのには人との繋がりが必要不可欠だ。確かにオルストロン家に守られていれば安全だけど、繋がりを得る機会は減ってしまうかもしれない。それは私も本意ではない。
ということなので、シュバルツ邸を建ててお引越ししようと思います。いぇいいぇい~。
保留にしていたお礼を使えばルクセウスさんも援助してくれるみたいだし、私もお金はあるのでいい機会でしょ。とはいえ、オルストロン邸のような貴族様とたくさんの従者が住むような場所ではないので、最低限住めればなんでもいい。私の寝床兼エフィとの愛の巣ってことですね、えへへへへへへへへへへへ……!
◇
「分かった。こちらで手配しておこう。また細かい部分の相談などで呼ぶと思うから、それまでに内装や盛り込みたい機能などを考えておいてくれ」
「ありがとうございます」
「何、気にするな。どのみち聖女が住居無しの居候では面目が立たんから遅かれ早かれこうなっていたはずだ。立派な邸宅を構えて、聖女の威厳を示すのも大切な事だろう」
「いやぁ、邸宅ってほど立派じゃなくてもいいんですけどね」
さっそくルクセウスさんに相談してみたところすんなり話が通った。さすが話が早い。正直、家を建てるとなってもどこにどういうふうに話を通せばいいか分からなかったから手配してもらえるのはとても助かる。なんだかんだすごい手助けしてくれるからお言葉に甘えてるけど、公爵様を便利屋みたいな使い方してていつか罰が当たりそうで怖い。ま、使えるものはなんでも使うけどさ。
それにしてもそうか。家を建てるってことは中も好みにカスタムできるってことか。書斎とか作ってかっこつけてみたいし、特に理由もないけど書庫とかもあったら面白そうだよなぁ。寝室は広くして、お風呂も豪華にするでしょ。あとは……今はまだ関連する加護はないけどいつか手に入れる予定だから工房とかも欲しいかも。あれ、そう考えると意外と広い家になっちゃうのかな? ま、いいや。好きは詰め込んだほうがいいだろうし、あとでエフィにも要望を聞いてみよ。
「ところで……独立の相談はエフィにもしていたみたいだが、この決定はもう話したのか?」
「あっ……」
「……くく、エフィはごねると思うぞ。説き伏せる自信はあるのか?」
「……別に説き伏せる必要もないと思いますけど、黙らせる手札はありますよ」
「ほう……それは楽しみだ。報告を心待ちにしている」
◇
エフィのお父さんとそんなやり取りをしていざエフィに事後承諾を得ようとやってきた訳ですが……案の定だね。
「嫌です! ブランさん家出しちゃダメです!」
「家出って……ここ私の家じゃないんだけど」
エフィのお父さんの予想通りごねた。ま、相談の段階であんな風になってたからエフィがこうなるのも容易に予想できたわけだけど……うーん、クールなエフィが取り乱して慌ててるの、見てる分には面白いんだよなぁ。
「そうは言うけどさ、私も一応聖女だからさ。いつまでも居候続けるわけにはいかないんだって」
「……じゃあ、聖女やめましょう。それで全部解決します」
「ちょいちょいちょい。人がせっかく大立ち回りして聖女の地位捥ぎ取ってきたのにそりゃないでしょ。てか、前回は王子がいい仕事してくれたからすんなり辞められたけど、本来はほいほい辞められるもんじゃないんだからね」
「うう……」
そんな上目遣いの涙目で見つめられても無理なものは無理です。
でも……これはこれでめちゃくちゃかわいいから……一発かましちゃおっかな。
「きゃっ」
「エフィ……あんまり挑発しちゃダメだよ。そんなかわいい顔して……誘ってるの?」
ベッドに腰掛けるエフィを優しく押し倒して、手首を掴んで押さえつける。
何かを期待するように赤らんだ顔がやけに色っぽい。
そんなエフィの耳元に吐息を吹きかけ、言い聞かせるように囁いた。
「私の家なら人目も気にせず、朝から晩までこういう事……できちゃうよ? それでも……嫌?」
「朝から……晩まで……?」
「そっ。好きなだけめちゃくちゃにしてあげる。だから……いいよね?」
そして、次の瞬間私は自分の唇で、エフィの唇を塞いだ。
何かを言いかけていたけど、返事なんて聞くまでもない。そのまま舌を滑り込ませて蹂躙する。
「んっ……っ!」
エフィの呼吸を求めるか細い息遣いと、いやらしい水音が響く。
しばらくの間エフィの息を奪い続けて、解放したころにはすっかり蕩け切っていた。その表情を見て背中をぞくぞくと震わせた私は、エフィの息が整う前に再度唇を塞いだ。今度はエフィも積極的に求めてきてくれたので、私もそれに応えて激しく責め立てる。
その後、私達は時間を忘れて、お互いに満足いくまで貪り合った。
ごねるエフィを黙らせるのは……多分成功しているだろう。
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