第17話―天文20年その続き―

自由気ままな振る舞いをしてきたせいか周囲はボクに手を焼かれ腕白わんぱくな若様と評していた。


(こうしていられるのは子供うち)


自由気ままな振る舞いに。

リアルの徳川家康から道を大きく外れていないかと感じ。数日前のことクレマチスに歴史が変わってしまうファクターそのもの訊いてみた。

するとボクにまつわる状況を見守っていたクレマチスは『そんな事ないですよ。むしろ竹千代のまんま人生を沿って歩んでいます。駿河での竹千代は腕白な幼少だと解釈ありますからね』とスマイルと少しの持論で応えてくれた。

ナビゲーターの目から竹千代として定期通りに方向へと経過しているならと気に病む必要が無くなる。


「このまま敷いたレールに従っていけば急死することもなく天下を治めて目的を果たせる。

そうだ。変に欲を持たずナゾっていけば事前の支障だけで済んでいける」


この乱世で最後に勝利を収めることになるのは徳川家康なのは令和の時代では周知の事実。

とはいえ単に真似ていけばいいという簡単な話でもない。

それこそ大きな課題でもある。


「筆というのは静謐な水面みなもそのものです。

荒れた心や邪心では綺麗な字は書けないのです」


向かいに腰掛ける理知的な顔立ちのお坊さんは優しく諭すような口調で教えてくれた。

そうしてくれるのは嬉しい。

だが先生は婉曲的で独特なことを口にするのでそこは改善して欲しい。


「な、なんとか善処します智短ちたん和尚」


文筆を師事してくれる方は真言宗系統のお坊さん。ここに来るのは太原雪斎が忙しく寺に通えない時にはここへ手習いを受けにきている。

学んでいるのは知源院ちげんいん

武病弱にあるボクは武功を立てていくには身体が強くは無い。

なら経済や軍略家としての知恵者として活躍していくしかない。

ここを通えと勧めたのが心配して駿河まで駆けつけてくれた母方の祖母がお願いしていた経緯があったらしい。


「――なかなかの腕前になりましたね竹千代。

それでは今日はこの辺にしましょう」


「はい。それじゃあ失礼します智短和尚」


ちょっと精神的な年齢から幼く振る舞うことに羞恥に憶えながらも別れを告げる。

ボクは片付けようとして後方で見守っていた祖母が立ち上がる。


「いつも教えて頂きありがとうございます智短和尚。なんと感謝の言葉を尽くせばいいのか」


「ははっ、何これぐらい構いませんよ。

これだけ期待されれば最高の褒美であります」


賞賛されても鼻高く伸ばさず軽く手を振る智短和尚は慎ましい控えめな態度。

ボクたちは智源院で勉学の手ほどを終えると祖母と手を繋いで帰路に就く。


「ゴホッ、ゴホッ。おばあちゃんボクが弱くて心配かけてごめん。

もっと健康だったら」


「そんな卑下しては良くないよ。

困難なときには後ろ向きではなく前向きな未来を想像を膨らませて生きないとだよ。

それが強さなんだよ」


これが家族の温もりかと毎回こうした愛情を注がれ新鮮に感じていた。

人生路のナビゲーターであるクレマチス曰く母方の祖母はここまで赴いてきたのは今川義元に頼って竹千代の母である於大の方が代わって竹千代の面倒を見るため。

そして立派な武士として養成も兼ねている。

駿河府中を支配する今川義元にうのは竹千代が元服するまでの八年間の条件。

孫のために結果的に松平家の当主となった竹千代のために尽くさんと出家して源応尼げんおうにと名乗るようになったらしい。

それを聞かされたとき感動して涙を流していたけ。


「おや?

竹千代すこしばかり目に水が落ちているよ」


「えっ」


どうやら思い出して涙を流していたようだ。

道中で源恩仁は乾いた手拭いでゆっくり拭き取ってくれた。

また手を繋いで移動を再開する。


「おかえりまさいませ若様。

お勤めお疲れ様でした於富おとみの方さま」


人質邸に戻ると出迎えてくれたのは七之助の叔父である平岩親長ひらいわちかなが


「お富その名前は捨てましたと何度も言えばいいのですか。

ええ、出迎えご苦労さま」


まだ過去の実名を呼ぶことに呆れながらも言うが平岩親長は困ったような笑みをこぼす。

なんとも家族らしい会話だろうか。


「わかさま。おかえりなさいませでした」


「お前も来ていたのか七之助の弟よ。偉いな」


叔父に続いて出迎えの言葉をしたのは七之助の弟だ。七之助は後の平岩親吉として戦功や信頼を勝ち取るこてになる武将。

まだ元服は迎えていないので七之助。

けれどボクは七之助の弟に関する名前を知らない。


「小さいのに健気だよね晴人くん。

彼は平岩正広ひらいわまさひろ

どういった人物なのかは資料が少ないから観察して資料を残していかないとね」


クレマチスは指をパチンと鳴らすと何も無い空間からペンと日誌らしいものを降って手にする。

平岩の三人が駿河府中まで人質生活を支えるために参じてくれた。

平岩家の三人も含めて竹千代のために駿河府中へ随行ずいこうしてくれたメンバーは七人とされる。

――明かりは薄れていき夜の帳が降りる時刻。


「なあクレマチス起きているか?もし起きているなら無視してくれ。

小さな疑問がモヤモヤと木霊こだましている気になることがあるんだけど」


「……ふわぁー、労働時間外になるけど。

聞きましょうか」


「生前で苦痛だった定期的なテスト問題であったんだけど。

駿河と駿府って違いがよく分からなくて……国名が駿河で駿府は地名なのか」


「いえ、どちらも一緒ですよ。

江戸時代から駿河府中と名称でしたので略して駿府となったのでした」


「なるほど。眠っているところすまない。

もう消えてくれて構わないよ」


「むぅ、悪意が無いのは知っていますが言葉は誤解を招かねないものだね」


不満を呟きながらクレマチスは霊体を粒子となっていき姿を空間に溶かした。

人型に形成したものがパズルのピースが剥がれていくように分解していく光景。


「クレマチスは妖精」


夢か現か。

やはり不思議な生き物なんだと再確認を強くするのだった。

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