第4話―竹千代その参―
絵筆をブルーで塗られたような空。
次の日もクレマチスと屋敷で説明を受けていた。
「ここの世界はどうも
ここ異世界ではミカワとカタカナで表記されるようですね。
ちなみこれが三河の字になります」
フレームなど外した液晶パネルだけを切り取った
画面には〖三河〗とシンプルにチカラ強い字。
ボクでも見えるように画面の位置を変えさせる精霊は昨日の垣間見た底知れないものは纏っていない。クレマチスは説明を続ける。
「三河の国は愛知県の東部になるかな。
神君出生としてあられる岡崎城はここ三河内になる。ここまで質問はありますか」
「あっ。
「えぇーッ!?そんなクールぶったセリフするんだね晴人くんは。
昨日は情報という獲物を狙っている獅子のような問い詰めしておいて何も無いね。
逆にそれはそれで腹に据えかねているようで怖いのですが?」
捲し立てられ、すっかり毒気にあてられる。
けれどクレマチスから視点ではそう捉えて見えるかもしれないが捲し立てた事で呆然となり引いたのではなく。
(なんて、情けない姿をしている田中晴人!!)
目の前にいるのは人畜無害でどこまでも自然体な喜怒哀楽に富んで演じるのがクレマチスじゃないか。
萎縮するものか!
なのに心を奮わせて鼓舞はしてみるものの畏敬の念を払えれず心はおののく。
「これって動悸が……はげしい。大丈夫ですか」
こちらを身を案じて近寄ってくる。
飛び抜けての容姿端麗な精霊。
表面的なもの純粋無垢、ただし昨日をみせた顔は忘れようにも忘れない。
クレマチスは何を企んでいるのか?
あのひとときに見せたのが偶然にも本性が滲み出た邪悪な一片。
疑心暗鬼となっているのは思い過ごしでは無いかと振り払うには余裕がなかった。
新天地に送られてボクはゆとりを失っていた。
せめて騙されても構わないので頼れる存在であって欲しかった。
クレマチスの本心がどこにあるのか。
闇よりも食らうほどに暗い謀略の悪魔を同居させているのか。
怯懦をして悲鳴を上げそうになると。
「どうしたんだ竹千代。おいおい、なんて凄い顔をしているぞ。深呼吸しようぜぇ。
混沌を招くモノノケの類でも出くわしたか?」
「あっ、松平広忠」
パニック寸前に声を掛けられて立ち直る。
振り返ってみた先にいたのは岡崎城主である松平広忠だった。
「おいおい、父上に名前で呼ぶなよ。
どこで呪殺されるかヒヤヒヤさせるじゃないか」
「うん?」
なんだかオカルトめいたの恐れている。
訝しんでいると右隣からの後ろでクレマチスは。
「それは明治時代よりも古来の日本では実名やフルネームを避ける傾向があるからなんだ。
呪法にはノートを開いた白紙に実名を書くことで対象を呪わせて命を奪う。
ノートとかは使わないけれどそれに類似としたものを使用するらしいよ。簡素な儀式の術とかね」
いつもの明るい声を少々と引き締まって疑問を説明してくれた。
どうしてナビゲーターなのかと怪訝に思っていたが常識とか知らない情報をスマホや辞書で調べるみたいに便利で助かる。
いまのところ信用してはいいかもしれない。全幅の信頼は出来ないけど。
「黙ってしまうとは。言えぬことがあるのか。
よし竹千代!なら稽古をするぞ」
「け、けいこ……ですか」
「おうさー。
イヤなことを抱えていると良くないからなぁ。
そのときは汗でも流せば負の感情も流れるものよ。ハッハハハ」
なんて爽快な人だ。
ボクは父親となった人、松平広忠に剣の鍛錬を有無を言わせない勢いで促された。
置いている木刀を手に持つと部屋を出る。
狭くも広くもない庭でボクは拙い剣術を振るう。
「よし、その意気だぞ竹千代。
もっと踏み込むんだ。おっと無作為にならず駆け引きも忘れずに挑むんだぞ」
「は、はい。ハァッ!……ダァァーー」
掛け声を上げて木刀を振るう。
袈裟斬りから刺突と攻撃方法をかえながら仕掛けるが松平広忠はそのすべてを優雅な動作。
さわやかな笑みを浮かばせて
なかなか決めてにならず助言も改善点になるかも感性を頼ることばかりで難しいことを教えると言葉にせず心中でぼやく。
「よし稽古はこの辺にして休憩しよう竹千代。
なかなか上達だったぞ」
「分かりました」
わらじを脱いで畳のある部屋に戻る。
手拭いで汗を拭きながら松平広忠は胡座を組むと指でトントンと叩く。
多分お前も座れとことだろう。
その解釈は間違っていないようで松平広忠は竹千代の頭をなでる。
ボクの精神的な年齢からすると頭をなでられても全然まったく嬉しいないのだけど。
「わあぁ。カワイイ」
稽古を退屈そうに眺めていたはずのクレマチスは親子のほのぼのなシーンに声を弾ませる。
(親子でいいのか、とりあえず水入らずの会話を眺めるのやめてくれないかな)
隣で見守っていたクレマチスは微笑ましいそうに見ているが気づかないふりを貫こうときめた。
「……フッ、竹千代。少し昔の話でもしよう。
我ら松平家の先祖は
若き父親は松平のルーツを語り始めた。
まさか先祖なんて言葉から考察して、遠い話なのだろうか。
疑問は様々で話についていくのがやっと、ボクは相槌を打ちながら話をおとなしく聞いていると転生を傅くクレマチスは液晶パネルだけ浮いた状態の近未来な物質を顕現させた。
そして彼女の権限で操作していき目を文字で追っていくそしてニコッとした屈託のない笑顔を上げる。
「知り得たばかりの知識ですが。
安城の地を拠点を置いた安城松平家は、その初代は松平親忠。
そして目の前にいる貴方のパパさんは宗家八代、そして安祥松平家の四代目として継がれたらしいみたいだよ」
疑問符を浮かべる顔をしていたのかナビゲーターの外国からきた妖精クレマチスは明るい声音で補足を加えてくれる。
有り難い事ではあるのだが目を輝かせて話を聞こうとするのもう少し隠そうとかしないのかな。
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