第5.5話 タイトル回収


「い~~~やった~~!!!」

「っしゃあーーーっ!!!」


 クソモンスターとの戦闘を終え、疲労を蓄えた体は山を下る。

 ルナ含め最初は不安しかなかったが、今は心も服装も元通り。ただし爆発被害は除く。


「そういや山半分くらい吹っ飛んだけど、どうするよ」

「本来は国家規模の相手だからね、そこは上手いこと収まるよ」

「でも人死んでねーか?」

「あー、まあね」

「まあねって……」


 魔法世界の価値観はわからんな。魔法で元に戻せたりするんだろうか。


「良かったじゃん!神様から貰った力もわかったんだし!」


 ルナは励ますように一笑いした後、「ちょっと地味だけど」と呟いた。


「オイ!それは言わねぇ約束だろ!」

「そんな約束してませ~ん」

「勝手に呼び出しといてお前なぁ……まあいい、あとは地球へ帰るだけだしな」


 今さら仕方のない事だ。元はドッキリにかかる気持ちで始めたのを思い出せば、何でも楽しめるというもの。それも自宅につくまでの一興だ。

 おや、何やらルナの眉間の主張が激しいぞ。


「……はぁぁ!?いやいやいや!そこは『俺たちの冒険はこれからだ!』でしょ!?魔王倒すの手伝ってよ~!!」


 ルナはそんな戯れ言とともに俺の体を揺さぶってくる。振動がになったところで耐えきれなくなり、俺の口はパッと開く。


「わかった!わかったって!」

「ホントに!?」

「けどな、あくまで優先順位一位は『帰ること』だ!魔王だなんだは片手間でやる!」

「えー」

「文句言わないの!」

「はーい。片手間でお願いねー」

「うっ、口が滑った……」


 その場しのぎでルナを静めるつもりが、おかしな言質を作ってしまった。

 魔王を打ち倒すことが勇者の役目か……とんだ面倒を押しつけられたな。なあなあにしたい反面、この世界を心機一転の場にしたい俺もいる。

 かつて全うできなかった主役をやり直したい。そういう機会をどこかで求めていた。

 一度、思いきって踏み出してみよう。そうすれば悩んでいたことなんて忘れるものだ。


「よーし、今決めた!神も魔王も全部ひっくるめて、帰るついでにブン殴る!」

「いきなりやる気……ホントにできるのかねぇ。何回か諦めてたと思うんですけど?」

「大丈夫だって!今回はマジもマジだぜ」


 面倒事を中途半端に受け流すのではなく真正面から砕いて通る。ゴールは遠いかもしれないが、逃げてばかりではいられない。


「見つけてやんだよ!この世界からの、異世界からの帰り方を!!」




 *




 はこの世界の馴染みやすさに疑心暗鬼になりながら、この世界で生きていく意思を固めた。


 まず書物をいくつか読んだ。わかったことは多い。

 この世界、『強さ=正義』だ。魔法の才能が人生を決める。強者は君臨し、弱者はひざまずく。平和はあれど、平等という思想は存在しない。


 王国を統べる国王は代々『神の子孫』が継承し、帝国を統べる皇帝は代々『魔王の子孫』が継承する。この2つの大国は軍事力はもちろん、君主個人の戦力がズバ抜けて高い。

 オレが挑むべきはどちらの君主か。あるいはそれ以外の実力者や無法者。


 原住種と和解し狂気に染まった歴史家 ──

 『赤子をくアミルカルレ』。


 帝国軍総司令であり帝国最高戦力 ──

 『ゴージャス・アゥダチェス』。


 呪いの力で王国を半壊させた王国最高戦力 ──

 『くらみちの魔女・フォルトゥナ』。

 

 神を観測した禁術使いのエルフ ──

 『死せる奈落のユーヴァン』。


 もしくは、どこかにいるオレと同じ転移者。


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