第15話 The girl prays for the destruction of the world――少女は世界の破滅を希う――
「虚しい勝利でした」
マキは用意された玉座に座りながら、笑顔で手をパンと叩く。
『我は見事な勝利であったと思うぞ?』
「そうですね。けど、予想通りの勝利ですから、虚しい限りです」
『人の子の心情とは複雑なものであるな』
フルゥウスとの何気ない会話。だが、マキにとっては、それなりに楽しく話せる希少な存在であり、この語らいは嫌いではないひと時である。そんなひと時も、終わりをつげ、マリー、ゼフィレル、レヴァンと恰幅がよいといえば聞こえはいいが、大きな宝石のついた指輪や首飾りを身に着け太った男が入室してきた。
「本日も見目麗しく……」
「そういうのは非効率なのでいいですよ。ゼニーズさん」
挨拶をしようとした恰幅の良い男を制止する。挨拶しようとしたのは、最後まで都市に残っていたどころか真っ先に、商売を持ち掛けた、ゼニーズ・ガメッシュ。その胆力を見込まれた現在では都市全体の商い全てを任されている。
「時は金なりというやつですね。いや、マキさまに教えていただいた。この言葉は素晴らしいですな」
豪快に笑いながらもお世辞を忘れない。そういう男なのである。
「それで頼んでおいたものはできましたか?」
「えぇぇ、えぇぇ、いい職人を確保も確保できましたよ。それにしても、この『アナライズ・モノクル』は素晴らしいものですな」
マキが片手間感覚で開発した『アナライズ・モノクル』はスキルやステータスを確認することができるアイテムではあるが、さらに中継器を通して、通信やデータの蓄積などもできるという優れものどころか技術のブレイクスルーという品ではあるが、マキにとってはそれでも片手間レベルで作れてしまったものである。
「そう、それから『スキルカートリッジ』も?」
「はい、そちらも製造を開始しています。しかし、まさかスキルを付与するアイテムも作られるとは……そちらも配布を開始しましたし、ご提案いただいた『冒険者ギルド』の運営の準備は進んでおります。それにしても、この冒険者ギルドという構想も実に素晴らしいです」
様々な施策をマキは実施し、他にも製紙業や教育機関の設置なども同時に進められており、貧困層の救済など異世界には似つかわしくないレベルの改革が推し進められていた。
「計画が予定通りに進んでいるのなら問題はないですね。ただ、スキルカートリッジに関しては扱いは気を付けてください。使い方次第では人格に影響がでますので」
「はい、もちろん。コアの部分の製造は限られたモノにしかできないようにしてありますので」
「よろしいですね。では、マリーさんに頼んでいた件は?」
お茶を飲んでいたカップを置き、微笑みを浮かべる。
「ご拝命いただきました通りに、住民を聖別を行いまして、言われたとおりのスキルカートリッジを使用し、仕事を与えております。仕事の進捗は予定通りかと……」
「それは、それは、私的には最悪ですが、目的には僥倖というべきなのでしょうかね? ではでは、レヴァンさんは?」
身なりを整えた姿は、威厳ある貴族といわれても差支えなない畏怖が加わったレヴァンは軽く頷く。
「とりあえず、下ったゴロツキを中心に治安は維持している。使えないのはマリーに任せた、それでもダメなのは消した」
「うーん、それは悪くないですけど、使い道があるので一応、生きた状態で確保してください。生きていればいいので状態は気にしなくていいです」
「極めて了解した。ところで部隊名がまだなんで拝命したいのだが」
「そうですね……『
そういって伸びをすると、お茶が注がれる。
「くすくす、ありがとう。ゼフィレルさんの調整は進んでいるみたいですね」
「感謝の極み。ですが、これも主が彼女をくださったからです」
流暢に喋れるようになったゼフィレルは意外と饒舌である。そして、お茶を注いだのはメイド服を着たシャルロット・ルーン。傲慢さと自信過剰といえる彼女は今はなく、何かに怯え従順に従いただただ、命令に従う存在。それが今の彼女である。
「うん、お茶の味もいいですね」
「えぇ、魔法スキルを破壊して、家事スキルなど中心に構築してみました。あとは【強迫観念】【自信喪失】【他者依存】などのマイナススキルを植え込みましたし、記憶なども改ざんしてますので、元の人格はほぼないといってもいいですね」
「この世界のシステムは理解できましたからね。人の成長は天命値という枷がかけられており、それがキャパシティとなってスキルやレベルなどの成長限界が構築設定される。そしてスキルは人の性格などにも影響を与える。本当にゲームですねコレは……ですが、逆にマイナスとなるスキルを植え付ければ、その分キャパシティーに余裕が生まれますので、その分成長への余剰となるのは間違いないですね」
「はい、そして主の計画された通りにコアの生成システムを構築できましたので、量産化なども可能です」
「これも計画通りですか、まぁいいでしょう。それでは、『世界崩壊を壊して再構築しよう作戦』のフェイズをすすめましょう。はぁ、楽しみですね。私は全力で目的を達成する為にありとあらゆる策を行使ましょう。ですのでどうか、神々、その策を破り、私にできないことがあると証明してくださいませ」
少女は自身が全力を尽くせることを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます