第12話 army of the dead――死霊の軍勢――
アーサーたちが滑り落ちた先には無数の骨が転がり石壁にかこまれた広い空間であり、かなり下まで落ちたことは間違いない。むしろ、滑り落ちたおかげで負傷は少ないともいえるが、それでも負傷者はでていた。
「くそっが! なんだこの卑怯な手段。これが神の使徒のすることかよ!」
「邪悪な破壊神の使徒らしい姑息な手段だ……美しくない」
アーサーとエドワードが憤慨する中、コンラッドが兵たちを確認してみると、数名が骨折などの重症を負っていた。
『我等が主に歯向かいし愚かな者よ。その命を代価に捧げよ』
頭上からの声に慌ててコンラッドは明りを頭上へと向ける。そこにいたのは、骨の
百足とその上には、大剣を背負ったスケルトンが立っており、さらにスケルトンがゾロゾロと姿を現した。
「スケルトンセンチピード! それに…スケルトンの大群!? これは拙いですアーサー様。スケルトンセンチピードは通常の騎士10人以上、小隊長クラスの騎士が小隊で相手をするモンスターです」
アーサーは学園内での実力は上位10名には入る実力者ではある。だが、それでも現役の騎士と同程度。小隊長クラスの実力にはまだ達してはいない。
「喰いとめるくらいはできる! その間に体制を整えろ!」
スケルトンセンチピードはカタカタと牙をならしながら突っ込んでいく。それをなんとか剣で受け止める。
「美しくないな」
『骨子の美しさが分からないとは……」
エドワードの前に大剣を背負ったスケルトンが悠然と立ちはだかる。
「ホネコ……美しくないものにはやはり美しくない名前だな」
その一言が戦いの合図となり、スケルトンは大剣を振りぬいていた。その一撃をエドワードは大きく飛びのき槍を構える。
『主から賜りし名前を侮辱するとは、このボーン太が斬る』
「やはり野蛮な剣を使う下級モンスターには下級な名前だな。美麗なる我が家秘伝のアクアリス槍術で冥府に送ってやろう」
そういって繰り出された突きをボーン太は――避けない。むしろ全身して肋骨の隙間に通す。
『愚かな……スケルトンの我に突きを放つなぞ……』
骨でしかないスケルトン相手なら打撃や切り払いなどの攻撃が定石。突きなどは悪手も悪手でしかない。無意識の行動。最善の一撃と信じて放った一撃が最悪の一手になるなどは実戦ではよくある事であり、そしてそれが致命傷になることなど当たり前すぎる。そして、剣を振らずに指を眼球に突き刺し抉り取る。
「ぐぁぁぁぁあ、こ、こんなこんな美しくない戦いなど……」
『貴様は、目は節穴だな。周りをよく見てみるがいい』
そう言われ、周りを見回すと、兵士たちが無数のスケルトンに纏わりつかれ、更に足を骨の破片で貫かれている。
「コンラッド! スケルトンに後れを取るなど美しく……」
片目を抑えつつ、兵士たちの指揮をするコンラッドへと激を飛ばす。
「エドワードさん。こいつらスケルトンじゃなくて、スケルトンレギオンです! 群体で構成されたスケルトンです! それに地面に落ちたボーンウォールが邪魔をしてきます」
「馬鹿な……」
絶望的だ。上位種のスケルトンとスケルトンくらいならば、切り抜けて、スケルトンセンチピードの戦いに加勢にいけると思った。
だが、実際はどうであろうか? アーサーはといえば、弄ばれながら、戦いのまねごとをさせられているが、勝ち目など一切合切見当たらない。兵士たちは、薄暗い中、まとわりつく骨に襲われ振りほどこうとすれば、骨の刃が肉に喰い込む。そして、エドワードもまた勝てる見込みはない。
『貴様らはここに来た時に退くべきだったのだ。いや、それでも我らが主の勝利は揺らがないが』
カラカラと全員が骨を鳴らし笑い声をあげる。
「……低俗な破壊神の
『貴様らこそ頭に乗るな』
上空から声がすると、更に続けて声が響く。
『
上空から白い靄が降り立ってくる。
「まさか……レイスまで使役しているなんて……こんなの想定外です」
『おっと、博識なものがいますねぇ。ところでボーン太さん、我らが主のことを侮辱されたままとは……どういうおつもりでワタシなど怒りで
ふわりとボーン太の横に舞う。
『レイ助。少しずつ分からせるつもりだったのがな……いきなり束縛の魔法とは無粋でないのか?』
『主殿から、外が決着つきそうだから、少し早めに終わらせたまでだ』
その会話を聞き、エドワードは力が抜ける。
「さてと皆様。主さまの命をわたくしに役目を果たさせてくださいませ」
蝙蝠の羽を広げたメイド――マーナ――が降り立つ。
「ヴァンパイアまでいるなんて……ありえない……」
震えながらコンラッドは尻もちをつき後ずさる。
「では、貴方がたは有効活用させていただきますね
स
あたりを白い靄が漂い兵士たちもアーサーもエドワードも包むと、白い靄が抜け出していき、苦しみ悶える。
「そ、そんな。こんなにあっさりと……」
『おいおい、一人生きてるぜ?』
「主様より一人はわたくしの食事用に確保してよいとのことでしたので」
そういって、無造作にコンラッドの手足を折る。
「がはっ」
「いい顔ですね」
そういいながら、ワイン樽に押し込み顔だけをだす。
「主様も終わったようですし……ちょうど手駒も増えましたね」
その声に呼応するように、兵士たちが立ち上がり
「GYOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO」
怨嗟の産声をあげるのであった。
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