第11話 playful battlefield――神々の合戦場――
ウォーゲーム――
ルールは拠点となる【城】と【城壁】を設置し3つのルートで繋ぎ攻め合い、城主を討ち取るか相手の城の旗を降ろし、自軍の旗を掲げれば勝利となる。さらに、二種類の小人の『カーペンターズ』と『デモリッシャー』が参戦する。どちらも戦闘能力はないが『カーペンターズ』は【タワー】や【トラップ】建設する能力をもち進軍の邪魔をする障害物つくり『デモリッシャー』は逆に『カーペンターズ』の設置物を破壊する能力を有している。
「あぁ、やっぱり『
マキは、ウォーゲームのルールを確認して、そばにプカプカと浮かぶミニフルゥウスに解説する。
「ふむ。なんだそのMOBAというのは?」
「私たちの世界にあるコンピューターゲームの一種です。本来はプレイヤーは英雄を操り陣取りをするゲームなんですが……これは兵力は自前であれば最大1000人までなら投入できるようにされてますね。本来は、全員のレベルは1スタートなのがこれでは、現存の能力そのままとなっていますし。けど、戦争の縮図を見世物にするならこれほど効率的なことはないということでしょうか?」
どこか他人事かのようにそう口にする。
『しかし、なにを考えて【勇者】を参陣させなかったのだ?』
「多分、初戦になるのと、時間稼ぎでしょうね。リソースの奪い合いではありますが、ここを失ってもまだ巻き返せる勝算があるのでしょう。いえ、一応、勝算ができるように向こうは人海戦術でくるみたいですね。未熟な手勢でも数を頼りにすれば押し切れる可能性はあります。そして、最悪でも数がいればこちらの手札を知る事もできる。ですので、勝っても負けてもいい勝負といったところですね」
参加者リストに目を落とすとずらりと名前がつづられており、敵総数はおよそ945名とほぼ最大値に近い。
『しかし、ルーラーは何でもありというように言っておった気がするがの』
「あの人はある意味、盛り上げる役目みたいですからね。何事も誇張して大げさに言うのが癖なのでしょう。実際にいろいろとルールはあるみたいですし……そういう道化がこのような世界には必要なのでしょうね」
そう言いながら、自分たちの拠点となる城のデザインを終える。
『これが吾、城か』
「えぇ、これで十分です」
初期リソースには限るがある。むろんリソースを増やす方法もあるが、その方法を使わずに自陣の設計を終える。それこそ建築ゲームでもしているかのようでもありながらも、それらの作業もマキにとっては、苦にならないどころかテキパキと終わらせていく。
『それで勝算は?』
「100%と言いたいですが、そうですね……90%は硬いと思いますよ。今回の参加者のかたどうやら学徒動員みたいで学生さんばかりのようですが、掛け金は乗せられましたから、あとはコールするだけですね」
『あの三人を使わなくても勝てるということか?』
その問いに対してマキは静かな口調で話す。
「これからの戦いを戦い抜けることを証明しようと思いまして、それにワタシ初めてなんですよね。他人の顔を伺わないで行動するの。ですので、全力を出すためにも、あの三人には、見学してもらおうかと思います」
ちょっと楽しそうにしながら、最後の操作を終えると、転送というキーに触れると、あっという間に設計した城の玉座へと転送される。
「さてと、スキルは使えるか試しましょう。『闇に溶け込む魂たちよ、我に従いて血を尽くせ。生命力の渇望が今甦る、我が指先にその願望を宿す。不死の背徳を求めし者よ! 汝、今ここに召喚せん! 我が棲み処にて、鮮血を飲み干し、闇に生きる者として深淵を掴め。汝の名は我が手に宿る、命あるものとなるがいい。
詠唱を終えると、メイド服をきた真紅の瞳が特徴的な肌の青白い少女が姿を現した。
「お呼びでしょうかマスター」
「そろそろ、始まるから補助をお願いね。マーナ」
呼び出したのは、手に入れた召喚獣の一体。レッサーヴァンパイアのマーナ。もともとはゾンビであったのを強化し、今は自身の腹心として配置している。
「他の子たちも配置は完了しているし問題はないわね」
感覚の共有という召喚術のアドバンテージを生かしつつ自軍を配置しいてく。
「さて、こちらの世界の戦い方を見させてもらいましょう。なんだか楽しくなってきましたね」
目の前の配置図に視線をむけると目を細め微笑む。
そして――
『これよりサクリヴィア、開幕戦。騎士神アスロット対破壊神フルゥウスの戦いを開始いたします』
上空に映し出されたルーラーの宣言によりいよいよ、娯楽のような戦争が始まった。
アスロットの陣営には立派な城が立ち、城門が開くと3つの門から、それぞれ30騎の騎馬が駆け出した。
その様子を見ていた、美しい金髪の少女の背後にたったショートヘアーの騎士服の少女が口を開く。
「ローズ生徒会長、アーサー、エドワード、ウィリアムの三名がそれぞれ30人配下とともに向かいました」
「えぇ、見ていたは。先遣隊だけでかたがつけばいいわね。まぁ、相手は一人ですから、終わらせられるでしょう。とりあえず、周辺の哨戒を50名を選抜してくださいな」
紅茶を一口飲むと優雅に腰掛ける。
「あのお方の為にも勝利を献上しませんとね」
そして、送り出した騎馬隊は、あっさりと3隊とも到着していた。
「おいおい、随分ボロボロな城壁だし、この城もなんかボロボロじゃないか」
赤髪の青年は乱暴な口調で言い放つ。
「……美しくない」
長身で青髪を長髪にした青年はキザに構える。
「まぁまぁ。お二人とも、落ち着いて。それにしても奇妙ですね。窓一つもなく、最上階に大きな門。まるで城というよりも墓ですね。まさか、自分でお墓を用意するなんて準備の良いかたですね」
砦は、見上げる高さで、だいたい15m。5階建てのマンション程度の高さで最上段に大きな入り口があり、扉へと続く階段は一段一段の勾配も急で馬で上るには少し無理があるほどである。
「よし、オレとエドワードの部隊で乗り込む。ウィリアムは待機して、この線香が燃え尽きたら帰還して報告してくれ」
「仕方ありませんね。そういう作戦でしたからお任せします」
赤髪の騎士アーサーは青髪の騎士エドワードを伴い先陣を切る。重い扉は片方に兵士数名掛かりでなんとか押し開けたが、中は光一つない真っ暗で様子はわからない。
「アーサーさん任せてください。
アーサーの副官のコンラッドが明りを生み出す魔法を唱えて視界を確保するとそこには人二人が並んであるける橋があった。
「随分と幼稚な罠じゃないか。な? こんなアホみたいな罠に誰が引っかかるんだよ。まぁ、真っ暗だったら落ちたかもしれないが、こんなの明りがあればどうってことないよな。エドワード」
「……アーサーであるまいし、こんな罠に引っかかるなど美しくない」
軽口を叩きながら配下の兵たちに周りをゆっくりと探索させながら進む。橋のしたは空洞で手すりはないが十二分な幅はある。正面からの攻撃に備えて大盾を構えて進ませれば、安全と考え進軍する。そして、全員が三分の一まで進んだ瞬間。入り口の扉が閉まる。
「なっ!?」
「これは」
慌てて前後左右の警戒をする。咄嗟にそういった判断はできるのは学生とはいえ、訓練を受けてきた人間ともいえる。が、それでも甘かった。なにせ攻撃は上からきたのだから……
振ってきたのは骨、骨、骨。骸骨の群衆が天井から落ちてくるなどだれが想定などするはずがあるまい。
「なんだこりゃ! おい、コンラッド! こいつは何だ!」
「アーサーさん! こいつはボーンウォールです!」
ボーンウォールは骨が積み上がってできた壁のモンスターでスケルトンの上位種と考えられてい魔物である。本来は壁に擬態する鈍重な魔物でこのように天井から奇襲などするモンスターではない。そんなことを知る由もないアーサーたちではあるがとどまるのは危険と思い奥へと走ろうとした瞬間、橋が前方へと傾き転がり落ちていく。
「くそったれ!」
配下ともども奈落へと滑り落ちていくのであった。
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