第9話 destiny――天命――
ダンジョンの入り口付近には、宿屋や商店と繁盛していた形跡はあるが、慌てて人々が逃げ出したせいか人っ子一人いない。
そして、入り口には大きな門が塞いでいた。
「ふむ、人がいないのは助かるな。無駄に破壊しなくて済む」
『そうですね。流石は創造神でもあって優しいですね』
その言葉にピタリと足を止める。
「いつから知った?」
『うーん。最初の神話の時点でしょうか? 文献なんかも見せてもらいましたけど、創造神と破壊神についての記載が凄く少ないんですよねぇ。それに対して神々の戦いではそれぞの神様の活躍は華々しく語られているので、ピンときましたし、なにより創造神の名前もないのはおかしいですし』
ふわふわと浮かびながら、マキは楽しそうに謎解きをしていく。
「ふむ。侮って申し訳ない。君はかなり聡明な女性だったようだ」
『いえ、そういう話は私たちの世界では珍しくありませんし……』
「では、この世界の違和感については?」
『それは『レベル』ですよね。神話には存在しなかった……というよりも元々あることが前提で世界が構築されているのでしょうか? なので、もしかして、ダンジョン攻略や魔物討伐なんかも織り込み済みで作られた世界なのでは……そうする目的から類推すると、この世界がなんなのかはわかりますよ』
「本当に、君は賢い。この世界はそういう世界なのだ」
『そうですか、『ステータス』なんていうのがありますから、なんとなく想定はできました』
「さて、では行こうか」
そういって門に触れると塵へと変わっていく。
『地図によると、一層は墓地への入り口だけみたいですね。なので地下一階からが本番みたいです』
羊皮紙の束を手に持ったマキが眼鏡の位置を直す仕草をしながら伝える。
「なるほど、そういうものが必要なのだな」
地下に下りると薄暗く、奥までは見えないが二手に分かれている。
「さてとどちらに行くべきか……」
『木の棒でも立てて、倒れた方向でいいのではないですか? 戦闘が目的ですし」
「なるほど、ではそうしよう」
アポカリプス・グリムを上に軽く投げ、地面に倒れた方向へと歩を進めること、数分、カチャカチャといびつな音を鳴らしながら、ボロボロの剣をもった骸骨が一体姿を現す。
「スケルトンか丁度いい」
腰だめに大鎌を構え、やみくもに襲い掛かってくるスケルトンを迎撃しようと横薙ぎに振ろうするが、刃は壁を透過するものの柄が壁にぶつかり思うように触れず、その隙に迫ったスケルトンの刃を慌てて後方へと跳び躱す。
「ふむ……少し困ったな」
狭い地下墓地では、大鎌は確かに不向きというのもあるが、フルゥウスにとってはこのような場所の戦いは不慣れであり、さらに壊すのは専門であっても戦闘は専門ではないとなると、ポテンシャルでは圧倒していても戦闘では雑な面がでてしまう。
『えっと、替わりましょうか?』
「そう…だな……無理そうなら吾が替わればよいし。試してみろ」
そういって、肉体の主導権をマキへと返す。
「不思議な感覚ですね。体は戻ったのに……フルゥウスさんの力も感じます」
『ふむ。この感覚も悪くはないな。面白い』
互いに体の感覚を確かめ合う。
「では」
そういって、マキはスケルトンの凶刃に躊躇することなく突っ込み、刃を躱し、駆け抜けると、スケルトンは真っ二つになっていた。
『なるほどな。鎌を振るうのではなく後ろに構えればよかったのだな』
「この体なら移動の速度でもいけると思ったんですよ。ところで、この半透明なウィンドーに書かれているのは何なんでしょうか?」
そういって指さした先には
――スケルトン討伐――
――真名解析率1%上昇――
という文字が表示されていた。
『これは『メッセージウィンドー』だ。ようはこの世界のシステムの一つ。神からのお告げということになっておる。そして、真名とは召喚魔法に必要なものだ。この真名を唱えることによって召喚士は元来、魔物を召喚するクラスである。吾を召喚したときに唱えたであろう?』
「なるほど……あれがそうだったんですね。あれ? けど、マリーさんたちの真名は?」
その問いにフルゥウスは、答えを詰まらせる。
『緊急時だったのでな、君の天命値を使わせてもらった』
「天命値? そういえば、勇者の人が逃げるときにも、そんな単語が……なんなんですかそれは?」
『簡単にいうのなら、奇跡を起こす力だな。崖から落ちたが下が川で助かった、危機的状況で助けがきた、偶然、攻撃が弱点に命中した。偶々、良縁に恵まれた等々……運よく偶然に、可能性を引き寄せる力というべきものだ』
「出鱈目ですね」
『世界に影響を与える力だからな。その中でも『勇者』というクラスはやっかい極まりない。そうそう増減しない天命値が危機的状況になればなるほど天命値が上昇し、万分の一の可能性でも、その可能性をつかみ取り勝利する可能性があるのだよ』
「その天命値てわかるんですか?」
『あぁ、神の【鑑定】ならばな。一般人でもだいたい10はあるが、あの勇者でも1万2千はあったな』
「参考までに私は?」
『……今は1だ』
「えっ?……1?」
『うむ。三人の召喚とアポカリプス・グリムの召喚に使ったからな……』
「ちなみに使う前は?」
『5だったぞ』
「低いですね」
『そうだな。だが、影響力が増せば増えるであろう。その為にもレベルをあげ、ついでに、このダンジョンにはスケルトン以外にも多数いる。召喚できるものを増やすとしよう』
「そうですね」
そういうと、目の前に現れたスケルトンの首がゴトリと落ちる。マキがいつの間にか首を落としていた。
「では、
『なんとも頼もしいではないか、吾、使徒よ』
マキはダンジョンの奥へと歩を進めのであった。
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