第22話

「シルクちゃんは何を着ても似合うね」

「カームさんがいっぱい服を仕入れてくれるからですよ」


部屋の奥へと呼び出されたはずのアーテルをよそにこの服が可愛いこの服が似合うと女子トークで盛り上がる。


「さて先生?ここで男は何を言うべきかわかるね?」

「似合ってるぞ」

「15点。やり直しだよ」

「えぇ…」


それなりに気の利いた返しだと思ったはずが手厳しい評価が帰ってくる。


「いいかい先生。年頃の女の子が着飾っている時は詳細に具体的に褒めるのだよ」

「…学びになります」


そんなことして逆に不快感を与えたらどうするのかなどの反論はカームの「何か文句あるのか」という目にかき消された。


「まったく…女の子の扱いをわかってないと悲しいね?シルクちゃん」

「ほんとに…ほんとにですよ…」


シルクが涙を拭くような動作をし、カームがやれやれという動作をする。


「なんか…すみませんでした…」

「これからに期待だね?シルクちゃん」

「どうでしょうかねぇ…」


シルクは遠い目で呟く。反応的に何度もやらかしてしまったのだろうが全く覚えてない。


「というか服選びが楽しいのはわかるけど今日は仕事用の服選びに来たんだけど」

「あっ…」

「シルクさん?」


どうやら楽しすぎてか本来の目的を忘れていたらしい。カームも「似合いそうなのを持ってくる」とこの場を離れて行ってしまった。


「…少し楽しみ過ぎました」

「…まぁ年頃の女の子だし仕方なくはあるか」

「そうですよね!?」

「そこでその反応はちょっと違うなぁ」

「仕方ないって言ってくれたじゃないですか…」


確かに言ったがそこでつけあがってくるとは思わなかった。


「まぁ初めて会った時、好きなものもなにもなさそうだったのにこうして盛り上がってる所をみるのは面白いかな」

「…恥ずかしくなってきました」


思ったことをそのまま伝えたが確かに自分の過去について言うのは恥ずかしいだろう。本日数回目の反省をする。


「アーテルさん」

「ん?」


シルクが突然名前を呼ぶ。


「さっきのカームさんの話を覚えてますか?」

「女の子の扱いがわかってないみたいなこと言ってたな」

「そこのもう少し前です」


もう少し前というなら「年頃の女の子が着飾っている時は詳細に具体的に褒めるのだよ」と言っていたところだろう。


「覚えてるけど…それがどうかしたか?」

「じゃあアーテルさんに追加で質問があります」


シルクは言い終わるとその場で一回転し始めた。


「今日の私の服装はどうですか?」


ここにきてやっと来る途中にも言っていた「女の子が服装の話題をだしたらそういうこと」という意味が理解できた。シルクから目をそらして独り言かのように言う。


「とても…可愛らしい服装だと思います…」

「30点ですね」

「勘弁してくれ…」


シルクはにこやかに告げる。


「今回は私の意図に気付いて言ってくれたから許しますけど、次は目を合わせていってくださいね?」


シルクは今日一日、もしかしたらそれ以前からかもしれないが服装に関して感想が欲しかったのだろう。シルクは上機嫌だった。


「だいぶ前からいたけど…。隠れてた甲斐があったね」


カームはばれないよう物陰に隠れながら二人を見守っていた。

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野良猫を幸せにする話 シトラス @404-Not-Found

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