第21話


「町の領主様に会うわけだし、服を買いに行くか」

「確かにアーテルさん、きちんとした服なんて持ってないですもんね」


シルクがクスりと笑いながら言う。


「なーんでただの布なのにあんな高いんだろうな?俺はいつも不思議だよ」

「ほんとに服装への関心がないですねぇ。いつも白衣で別の服を着たいとか思わないんですか?」

「医者だし」

「ですよね。アーテルさんですものね」


「医者だし」、と言ったのに「アーテルさんですものね」と返してきたのは一体どういうことなのかと聞こうとしたがシルクの「診察の日まで時間もないし今日はお休みですし、早速服屋へ行きましょうか」という声に遮られる。

 断る理由もないので「そうだな」と返して自室で準備をするために立ち上がる。シルクの部屋もすぐ隣なので一緒に廊下へと歩き出す。


「行くのはいつものカームさんの服屋ですよね?」

「うん、あそこなら服も多いしもしかしたら安くしてくれるかもしれないからね」

「うーん、カームさんは値切り交渉は受け付けなさそうですけど」

「その時はその時だな。じゃあ着替えてくる」


「私もそうします」というシルクの声を聴きながら部屋へと入り、準備を進める。シルクに言われたことを気にしながら服は慎重に選んだが、結局いつもと変わらないまま外へと出た。


「だんだん寒くなってきましたねぇ。こういう服装もだんだん着れなさそうです」

「確かにな。今日は冬服も一緒に買うか」


シルクはフード付きのパーカーでフードを被り、下はスカートに少し寒いのかタイツを履いていた。


「持ち替える量が増えちゃいますし、それは今度にしましょう。…それと、女の子が服装の話題をだしたら、そういうことですよ?」


そういうこと、とはどういうことなのだろう。新しい服が欲しいということなのだろうか?


「俺も男だし物はいっぱい持てるぞ?買わなくていいのか?」

「…アーテルさんって、ほんとにわかってないですね…」

「えぇ…」


不満はあったがカームの服屋へと着いてしまったので、不満を飲み込み店へと入る。


「いらっしゃい、先生。それとシルクちゃんも」


カームはにこやかにそう伝える。


「シルクちゃんがいるということは今日は服を買いにかい?」

「あ、今日は仕事関係です」


シルクがフードを外しながら言う。ここへ来きて服を選ぶことも多くなり、シルクは最近ここでもフードを外すようになった。


「また仕事関係の服なのか。こんなに可愛い娘がいるのにそんな無機質な服を選ぶとはムズムズするね」

「今日はかしこまった場での服を二人分買いに来たんですよ」

「任せな。先生は一人で勝手に選んでくれていいからシルクちゃんは貰うよ」

「俺だけ雑じゃないですかね」


シルクを何回かここへ連れてきていたのでその間で仲良くなったのだろう。シルクのことになると張り切り始める。

 ちなみにその後「これとか似合うと思いますよ」と心優しきシルクが持ってきた服を選び、シルクはカームに連れられて店の奥へと消えた。




作者から

時代設定についてです。作者的には大体第一次世界大戦ちょっと前のヨーロッパを想定です。(公害だったりで病関連のネタが多いので)しかし、封建制度が続いていたりパーカーだったりでおかしなところが多々あります。作者自身の好みを入れてしまったのでこうなっているのですがこのことには作者自身もあまり納得行ってません。なのでもしかしたら改変等があるかもしれませんのでご了承ください。

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