第19話

「治まったか?」

「はい、もう大丈夫です」


もう大分泣き治まったシルクに問いかける。


「お前ってよく泣くよな」

「…うるさいです。そんなことより風邪は大丈夫なんですか?」


少し意地悪したせいかそっぽを向きながら言われてしまう。しかし、目線はこちらを心配そうに見つめてくる。


「もう大丈夫だよ」


そう言いながら立ち上がるがふらついてしまい、シルクに支えられてしまう。


「ふらふらじゃないですか!わっ高いじゃないですか!」

「ははっ。さっきの人は明日熱だな」

「バカなこと言ってないで早く横になりますよ!」


額を触られたシルクに怒られた後、シルクに支えられながら部屋に運ばれる。


「医者がまさか看病されるとはね」

「ほんとですよ…すぐによくなってくださいね?」

「努力はするよ…」


シルクが心配そうに言う。おそらく先程の男のせいでもあるのだろう。


「努力はするからさ、うつらないように離れときな?」

「嫌です。ここで看病します」

「えぇ…」


何としてでも離れようとしないシルクに頭を悩ませる。


「…私が熱を出した時のこと覚えてますか?」

「うん?あぁ覚えてるよ」


シルクに言われ、記憶を遡る。


「あの時、私が言った通りずっとそばにいてくれましたよね。手まで握ってくれて」

「うるさい、そういう雰囲気だったろ」


シルクは少し楽しそうに笑う。


「あの時隣りにいてくれてすごい嬉しかったんです。だから私もそのお返しです」

「…俺としてはうつしたくないから離れててほしいんだけど…」


残念ながらそんなことを言われてしまえばそうさせることはできない。


まさか声に出てたわけでもないだろうがシルクは見透かしたようにずっとニコニコとしている。


「また熱が出たら看病してくださいね?」

「…まぁ今看病されるのは俺だし断れないか…」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


いつの間にか寝てしまい、既に太陽は沈みかけていた。喉が渇いたため立ち上がろうとすると、アーテルのふともももあたりを枕にして寝ているシルクがいた。


「んっ…」


びっくりして動いてしまうとシルクが声を出す。起こしてしまうのも申し訳ないので動かないように意識する。


動かなくなったことで再び眠りに入ったシルクを見て大分変ったなと再確認する。最初は本物の猫のように警戒していたのにそれが今ではこうだ。おそらく3か月も同じ屋根の下で過ごしたおかげだろう。


「もう3か月たつのか…」


改めて考えると長い期間のはずが恐ろしく短く感じた。この調子だと別れるときまですぐだろう。


「なんだかちょっと…寂しいな」


シルクの顔を見ながら呟く。たった3か月なのに関係が深くなり過ぎたのかもしれない。


寂しさからかシルクの頭に触れ、そのまましばらく撫でる。同じ洗剤のはずだがさらさらとした髪だった。


「生きてるか見に来たんだけど…帰った方がいい?」

「手に持った果物だけ置いて帰ってくれ」


空気が読めなかったブルーノによってそれは遮られた。

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