第12話
「いやーついにセンセーにも女ができたかー。お兄さんもなんか嬉しいよ…」
「できてないしいったん黙ろうか?」
全く現実と異なることをほざきながらよよよと嬉し泣きをする犯罪者に訂正する。あとお前はお兄さんじゃなくて不法侵入した犯罪者だよ。
「あの…」
さっきから少し困っているようなシルク。友人とその友人の友達が会話するところに入っているようなものだろう。しかも話しているのは自分のこととなると、確かに困ってしまうだろう。
「あぁごめんな?こいつはブルーノっていって、ここら辺で一番でかい商会の息子なんだ」
「え、そんな凄い人だったんですか!?」
シルクは耳をぴんと立てて驚く。そう言えば仕事で患者とも触れ合う機会があったからか、最近は耳を隠さなくなった。
「自分の生まれがよかっただけですごいって言われるのはなぁ…」
ブルーノまで困り顔をする。そんなことよりもだ。
「お前今日は何しに来たんだ?餌やりだけじゃないんだろ?」
「ん?センセーがこの娘をどう思ってるのかを聞きに」
「お前名前も知らんだろ」
確かに、と二人で自己紹介をし始める。自由だなこいつ。
「で、結局なんの御用で?」
「そうだな。そろそろ言うか」
やっと本題を言ってくれるらしい。ここまで長かった。
「うちの商会が戦争とか病人の治療をしに行ってるのは知ってるよな?」
「プロパガンダとしてな」
「言い方が悪いなぁ…」
まぁ実際その通りなんだけどと続ける。
「それで?」
「センセーにも同行してもらおうかなって。少し前の公害の時の英雄さまについてきてもらえたら心強いし、ここらで一番知識があるのがセンセーだし」
「うーん」
医者の仕事は人を助けることだ。その信念に従うのならついていくべきだろう。それに前回行った時は報酬が結構もらえたのもある。お金にはそんなに興味はないが同居人が増えたので少しでもお金はあった方がいいだろう。しかし、自分の中でついていくか悩んでいた。
「って言おうと思ってたんだけど」
ブルーノのその一言で流れが変わった。
「センセーにも守るべきものできちゃったみたいだからなぁ」
シルクを見ながらそう呟く。
「…別にそんな関係じゃないし」
「恥ずかしがんなって」
本当にそういう関係でもないが、言われた通りシルクのことが不安ではあった。
「わ、私のことはお気になさらずに…」
シルクは尻すぼみにそう言う。
しかし、そうは言われても心配だった。前回行った時も結構長くなったのでその間一人なのは心配だ。
「ってことで三日ぐらい講師をやってくれないか?勿論知識を公開するような行為だから無理にとは言わないよ」
なるほどそうきたか。確かに三日ぐらいなら平気だろう。しかも、講師となれば現地で襲われるようなこともない。ちなみに前回は襲われかけた。
「シルク」
「私は大丈夫ですよ」
「じゃあ決まりだな」
ブルーノがほほ笑む。
「当初の予定では来てもらうってことだったから予定を練り直さないとな。決まったらすぐに言うよ」
「あぁ助かる」
練り直さないといけなくなったのは自分のせいなので少し心が痛む。
「そうだ。もう一つ聞きたいことがあったんだ」
「なんだ?」
予定を変更してもらうこともあって誠実に答えようと思っていた。
「シルクちゃんのことはどう思ってるんだい?」
「帰れ」
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