第11話
「アーテルさん。減り始めてきた薬品をまとめときましたよ。」
「うん。助かる」
シルクが来てから一か月。少し前から仕事をしている際、「私にも手伝わせてください」と言われそれ以来家事の時以外は手伝ってもらっている。正直既に家事をやってもらっているのに仕事まで手伝ってもらうのは流石に断ろうと思ったのだが、あまりの熱量に押されて結局断れなかった。
しかし、助けられているのも事実だった。流石に診察や薬品の扱いまではさせれないので足りてないものがないかを記録してもらおうと思っていた。それでも薬品の名前を覚えたり、そもそも字が書けるかの問題もあった。
そんな杞憂もむなしく、薬品の名前もすぐに覚えてくれたし字も母親にしっかりと教えてもらえたらしく想像以上に業務をこなしてくれた。
「そうだな…午後は診察もないし買いに行くか」
「私もついて行ってもいいですか?少し必要なものがあるので買ってもらいたのですが…」
「あぁ大丈夫だぞ。むしろどんどん言ってくれ」
そんな感じで1ヶ月を暮らしていた。シルクとも最初のような警戒がとれて良好な関係を気付けていた。
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コンコンッ
「センセー勝手に邪魔するぜー?」
「まっずい…」
ノックはしたとはいえ返事を聞かずに入ってくるようなめんどくさい客がきてしまった。
「シルク。どこでもいいから隠れろ」
「え?」
読書を楽しんでいたシルクに急いで伝える。
「いいから!はやく!」
「い、いきなりどうしたんです!?」
アーテルは有無を言わせずシルクを部屋から追い出した。
「なんだ、いるじゃんかよセンセー。返事くらいしてくれよ」
「不法侵入してくるやつに返事もなにもないだろ」
「ははっ!まったくだな!」
勝手に入ってきた金髪のイケメンにそう軽口を返す。
「で、何の用で来たんだよ」
「あぁ、ちょっと頼みがあってな。茶でも飲みながら話そうや。午後は診察ないだろ?」
「ここの所有者俺なんだけど…。あと診察はないけど予定があるので早々にご退場をお願いする」
「ちぇっ、つれないねぇ。とりあえず土産で持ってきた食いもんとか置いとくな」
なんとか居座らないように済ませれた。この男にシルクの存在がばれたら確実にめんどくさいのだろう。
そうやって安心しきっている時だった。
「…なぁセンセーよぉ。女できた?」
「は?」
なぜばれた。
「いやだってセンセー。俺がこうやって食糧持ってくるくらいには不健康な生活送ってたよな?なのに普通に食材が置いてあるんだが?よく見たら顔も血色がいいし」
「…生活を見直そうと思ったんだよ」
「あと部屋もきれいだよな。掃除苦手なのに」
「…」
今もし過去に行けるのなら確実に自分自身を殴っていたのであろう。なぜここまで自堕落な生活を送っていたのだろうかと自問自答をしてしまう。
「なぁその人とはどんな関係なんだ?」
「うるせぇー。関係ないだろ」
「いいじゃねぇかどうやら本人も聞きたいみたいだし」
急いでシルクを追い出した方を見てみると少しドアを開けて聞いていたのだろう。おずおずとシルクが出てきた。思わず天を仰いでしまう。
「な?いいだろ?」
「…まずはお前の紹介からだな」
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