第6話

「腹減ったな…」

「朝ごはんを食べてないなら当たり前です」

「そりゃごもっともで」


時刻は1時。もう少し歩けば家に着くが、着いてから料理をするのも億劫だ。


そんなことを考えながらシルクの方を見ると、目線が喫茶店の方へ向いていることに気づく。


「お前って発言以外は素直だよな」


自分でも無意識だったのか、目線が喫茶店向いていることに気付きすぐに目線を離す。そんな行動に少し笑ってしまう。


「ほら、行くぞ」

「…別にそういう訳じゃ…」

「ほんと素直じゃないな?」


一応ついては来てるので発言だけなのだろう。


店内に入り適当な席に座る。そこそこ混んでいたのでもう少し遅かったら座れなかったかもしれない。


「好きなの頼んでいいからな」

「…ありがとうございます」


――――――――――――――――――――


「確かに好きなの頼んでいいとは言ったけど…パンケーキて…」

「う、うるさいです!食べたかったんです!」


店内から出て、俺らはそんな会話をする。パンケーキが食べたかったというあたりから女の子だなと思ってしまう。


「いやいいんだけどさ?お腹膨れなくない?」

「…私はあれぐらいで十分です。というか」


顔を赤くしながら反論した後、


「そんなお腹いっぱい食べて大丈夫なんですか」

「任せろ。こんなんだが職業柄儲かってる」

「そっちじゃなくて、お腹いっぱい食べるとこの先きつくないですか?」


そう言われて、帰り道を思い描く。簡単にお腹が痛くなって苦しんでいる自分が想像つく。


「お前も疲れてるだろうしそこのベンチで休んでかない?」

「よくそんなので私に素直じゃないって言えましたね」

「うるせぇ」


痛いところを突かれてそんな返しかできなくなる。しかしベンチのほうまでついてきてくれたということは、ベンチで休むことに関してはいいということなのだろう。


先にベンチに座ると、後からシルクが少し離れた所へ座る。別に当たり前ではあるがそれでも拒絶されているようで少し悲しい。


天気も良くさわやかな風も吹いていて何も考えず市街地の賑わいだけの世界で、しばらくの間ぼーっとしていた。


ふとシルクの方が気になってみてみると、


「…寝てやがる」


繰り返し言うが今日が天気が良くさわやかな風が吹いている。更に食後ということも含めれば、そうなるのも当たり前だろう。


そんなことを考えていると、膝の上に軽い衝撃が走る。なんとシルクが落ちてきたのだ。


「うぁ…」


とろけた目を少し開けながらうめく。


「起きろ。ここで寝たらまずい」


ここから家までならもう少しなので我慢すれば何とかなる。


そんな考えとは裏腹にシルクは睡魔に負けてしまった。


一応男ではある俺にとっては夢のようなような行為ではある。だがそれも市街地ではないということを除けばだ。待ちゆく人がこちらに気付く度に微笑ましいようなものをみた顔をする。


「…頼むから早く起きてくれよ…」


やはりというべきか、そんな期待もむなしく散ってしまい、シルクが起きたのは空が夕暮れに染まりかけた頃だった。

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