第4話
「…取り乱しました。もう大丈夫です」
スンッ…と鼻をすすりながら目周りを赤らめた少女は言った。
「それぐらい感情をだしたほうが可愛げがあっていいと思うぞ」
「余計なお世話です」
振り向きながら俺はそういった。よかった調子はいいみたいだ。さて…
「お前はこれからどうする?」
少女の耳がピクッと動く。
「そうですね…」
彼女は考える動作を見せる。環境が変化しすぎてこれからのことは考えてなかったのだろう。
「…」
しばらくたったが返事が返ってくる気配はない。
「…考えはまとまったか?」
一応聞いてみると、彼女は反対側へ向いてしまう。やっぱり感情をあらわにしているほうが可愛げがあって面白い。つられて微笑が出る。
「…なぁ」
俺は思い付いた考えを提案する前に質問をした。
「お前っていくつだ?」
「?二週間くらい前に18になりました」
ふむ?
「料理はできるよな?塩が多いって気付いたし」
「あれは誰だって気付くような気がしますが…まぁできます」
「他は?掃除とか」
「一通りできますけど…」
それがどうかしたのかという顔を向けられる。
「お前ここで働かないか?」
質問の結果、少女に考えていた提案をした。彼女は驚いていた。
「自慢ではないが俺は料理といいこの散らかりきった部屋といい、家事全般が苦手なんだ。おかげでここは入院するための部屋なのに誰もいない」
「本当に自慢になってないですね」
「だろ?言っててつらい」
俺のライフはもうゼロだ。
それと、と付け加える。
「この町では19になると市民権が手に入るんだ」
18以下で働いたりしている人も多いが19までは基本的に保護者がなどが必要だ。
保護者のいないこの娘は働くこともできない。
「19になるまでここで働く。代わりに衣食住は提供する。どうだ?悪い話じゃないだろ?俺としても、お前としても」
彼女はまたもや考える動作を見せる。
「…一つ聞かせてください」
「なんだ?」
「なぜ私を助けようとするんです?」
彼女は疑問を持った目でこちらを探ってくる。
なるほど確かに虫が良すぎて怪しいだろう。
「仮にお前と同じような境遇の人間がいたとしよう」
「?」
一体何が始まったのだという目でこちらを見る。
「その子をお前はどうする?」
「まぁ…助けるんじゃないでしょうか」
私がそうして欲しかったように、と寂しい笑いをこぼしながら言う。
俺は微笑んで言う。
「それと同じだよ」
「…まるで自分が同じような境遇だったと言っているようですね?」
「それは長くなるからやめておこう」
まぁそれは置いといて…と話を戻す。
「どうする?」
「…」
彼女は考える。まぁこれからの生活にかかわることだ。考える時間は必要だろう。
しばらくして
「まぁ私にも非はないですし、いいでしょう」
「決まりだな」
俺は笑う。
「アーテルだ。よろしく」
「シルクです」
やっと二人はお互いに名前を名乗りあった。
――――――――――――――――
「まぁそうだよねー」
目の前のぶかぶかの患者服を着たシルクを見て言った。流石に服がボロボロで着替えたほうがいいと判断し、女性用の服など持っていない俺は取り合えず大量にある患者服を着させたが、小柄で細身なシルクには大きすぎたようだ。
「別に私はこれでもいいのですが…」
「危ないでしょうが」
こうなってはしょうがない。
「服を買いに行くか」
そう言い、外へ出かける準備をする。
――――――――――――――――
「ところで私が倒れていたあの日は雨でしたよね?多分私泥だらけでしたよね?」
シルクは綺麗な自身の肌を見て言う。
「この世には知らないほうがいいことがあるんだ」
今がその時だよ。と後ろ向きで支度をしていて、顔は見えないが耳を赤くしながら言ったアーテルを見て、シルクは顔が赤くなった。
「責任は別にとらなくていいですからね!?」
「恋愛小説の見過ぎだバカ」
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