第2話
おかゆを食べた後寝てしまい、起きたのは朝だった。
「おはよう。よく寝れたか?」
黒髪の男が部屋に部屋に入り、私を確認してからそう言った。
「私に…」
「ん?」
「私に何をするつもりなんですか?」
私は黒髪の男の質問には答えず、そう口にした。
「医者が人を助けるのは当たり前だろ?」
「私の村では助けて貰えませんでした」
「じゃあそいつは医者じゃないな」
黒髪の男は「そいつはただのクズだ」と吐き捨てた。私は少しびっくりした。
「あぁごめんな」
少し言葉が強かったと黒髪の男は謝る。
「まぁそんなことは置いといて朝食にしよう」
「ちょっと待ってろ」と黒髪の男は言い、部屋から出ていた。部屋に取り残された私はこれからどうするかを考えた。
今できる選択肢はここから逃げるか、おとなしく従うか。まず前者は逃げた後の選択肢がない。となれば従うしかないが…もしかしたら期待させてから殺そうとしているのかもしれない。…それでもいいかもしれない。少し疲れた、休みたい。
「できたぞー」
部屋に入ると同時に発された、相変わらず呑気な声で脳内から戻された。「付いてこい」と言われたので付いていくとそこにはテーブルの上に置かれたスクランブルエッグ…を作ろうとしてそぼろになったのだろう焦げた物体とパン、水、フルーツ類があった。
「いやースクランブルエッグなんて…てかまず料理なんて久々にやったなぁ。あぁ毒はないぞ」
そう言いながら昨日やったのと同じように私の前に置かれたスプーンを使い一口食べた。
黒髪の男が言う通りならこれはスクランブルエッグなのだろうが、それにしては至る所が焦げている。スクランブルエッグというのはこういうものだったのだろうか
「考え事をしてる最中に悪いけど冷めるぞ」
私は急いで皿の上を見た。確かにでている湯気の量が減っていた。別に冷める料理などそぼろしかないのだが、それでも冷めた料理よりは暖かいほうがいい。私は急いで席に着き「いたたきます」と一言いい、食事を始めた。
食事の傍ら、この黒髪の男が料理を出した意味を考えた。毒を入れないのだとしたら売りに出されるのだろうか。確かに女は高くで売れる。しかし、だとしたら粗末な料理でいいはずだ。そんな思考をそぼろが止めた。
「…お塩がいっぱいですね?」
「ごめんなさい」
「…まぁ代わりに卵の殻が入ってたので許します」
「ごめんなさい本当にごめんなさい」
向かいのテーブルに座って本を読んでいた黒髪の男は謎に敬語でそう言ってきた。
「今食べていないということは先に食べたということではないのですか」
「いや?まだ食ってないぞ?めんどくさいし。あと一人分の道具しかこの家にはない」
黒髪の男は自分が無精者であることを伝える。いやそんなことよりもだ。
「道具を一人分しか持っていない?」
「ん?まぁ一人暮らしだし…あっ」
黒髪の男も思い出したのであろう。先程も昨日も、毒がないことを見せたことを。考えるだけで顔が熱くなってくる。
「…マジですまん。すぐに洗うから」
「もういいです。使ってしまいましたし」
私はそう言うとすぐに朝食を食べ、「ごちそうさまでした!」と恥じらいを紛らわすように元気よく言い、私が寝ていた部屋に戻った。
彼女は村八分にされていた。だからほとんど男性と関りがなかった。持っている知識も本から得た知識と両親ののろけしかなかった。だから
(あんな行為は将来を誓い合った男女が行うこと!つまり…私はあの人と…?)
彼女の考えはねじ曲がっていた。
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