重い想いに至るまで①
暗鷹視点です
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私は、先輩が好きだ
好きで大好きで愛している
中学の時の出来事がきっかけで先輩とは知り合ったけど、その時はこんなに好きになるとは思ってなかった。むしろ、最初は少し怖いとさえ思っていたんだよなぁ。でも、先輩を意識し始めたのは私の生き方を肯定してくれた時からだ
当時、中学三年生だった私はその日、親と一世一代の大喧嘩をして泣きながら走って家を出た。雨が降っているのに傘もささずにだ。当然行くあてもなく、ただただがむしゃらに走っていた。雨の日に、しかもサンダルで走っていたらまぁ当然の帰結だったわけで、
「あっ」
ビタァン!
思いっきりすっころんだ、そりゃもうに派手にずっこけた。ましてや、転んだ場所が悪すぎた
ガン!
あんまり転んだ前後のことは覚えていなかったけど、私はマンホールの上で滑ってガードレールに頭を打ち付けたらしい。最後に私が見た景色は水たまりに広がる赤色と駆け寄ってきた男の人の顔だった
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「……………………知らない天井だ」
オタクの友達が言ってた、知らない天井を見たら一番最初に言う言葉第一位らしい
「そんな事をいえる元気があるなら大丈夫そうだな、全く、心配して損したわ」
「うえっ?!」
人がいるとは思わなくて、思わず乙女にあるまじき声を出しながら振り向いた先には
「よっ暗鷹、頭は大丈夫か?」
「………………それ、どっちの意味です?先輩」
そこには、中学一年生の時にちょっとした事で知り合った龍凛戒人先輩がいた
「どっちの意味って…………おいおい、そんなの愚問だろ?」
「先輩…………!」
「頭のおかしさの心配の方に決まってるだろ?」
「私の感動かえしてくれます?!」
あぁ、なんだか懐かしいなぁこのやりとり。先輩が高校生になってからめっきり会ってなかったし、そもそもこの時はお互い連絡先すら知らなかったからなぁ……………というか、私がヘタレすぎて聞けなかった
今はどっちかって言うと私の方が先輩をからかう事の方が多いしなぁ。……………先輩もあんなことがなければ明るい先輩のままだったのかな……………
「こらこら、あんまり大きい声出すな。頭に響くぞ?」
「先輩のせいでこんな大きい声が出てるんですけど?!」
「え?なに?急にこっち指さして、俺の後ろに誰かいるの?怖いからやめてよー、俺ホラー苦手なんだよぉ」
「先輩のせいって意味で指さしてるんですけど?!」
でもこの時のやり取りは、荒んでいた私の心を癒してくれたし、なにより、
「全く…………人の事を指差しちゃいけませんって六法全書で読まなかったのか?」
「なんでそこで六法全書なんですか!普通は親とか……………お、や、とか……………」
「………………」
先輩は、何も聞いてこなかった。どうして雨の日に傘もささず走ってたのかとか、なんで泣いていたのか、何も聞いてこなかった。私にはその優しさが何より嬉しくて、でも何よりつらかった
「…………………………ねぇ、先輩」
「ん?なんだ?」
「…………………………私の話、聞いてくれますか?」
「おう」
「ふふっ」
「なんで今笑ったんだ?」
「いえいえ、なんでもありませんよ」
「………………まぁ、そういうことにしておいてやろう」
「ふふっ、ありがとうございます」
でも、こういう私が悩んでいて、話を聞いて欲しいと言った時に、迷わず頷いてくれるところが、先輩らしくて良いなぁって思った
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