信じてくれる人


 ガララッ


「よぉ!ちゃんと来たなぁおい!」


 はぁ………うぜぇ、いちいちでかい声出さなきゃ自分を大きく見せれない雑魚の癖に…………


「しっかしよく学校に来れんなぁお前、犯罪者の癖によぉ」


「……………………あれは誤解だと前に言ったはずだが?」


「そんなの誰が信じんだよ!今更おせぇんだよ!犯罪者が罪を隠してんじゃねぇよ!」


 ドッ


「かはっ……………」


 ああ、痛い、しかも絶対に顔は殴らないこのずる賢さよ


「しかも今日も可愛いの後輩と登校してきてよぉ!犯罪者がいいご身分だなおい!」


 痛い


「ほら!お前らもやっちまえ!」


「だな!オラァ!」


 ボコッ


「死ね!犯罪者!」


 ゴキッ


「調子に乗ってんじゃねぇぞ!」


 ガンッ


 ………………………………痛いなぁ


「………………………………………気が済んだか?」


「あ?」


「このあと約束があるんだ、早く帰りたいんだよ」


 教室で暗鷹が待ってるからな


「……………てめぇ、舐めてんのか?」


「は?」


「舐めてんのかって聞いてんだよ!」


 舐めてるも何も…………


「俺はまずお前らになんの感情も抱いたことはないぞ」


「ッ!てめぇ!」


 ゴッ!


「ってぇ……………」


「おい!顔はまずいって…………!」


「チッ、思わず殴っちまった………………おい!」


「……………………なんだ」


「その顔の痣、もし聞かれてもぶつけたって言え」


「………………………言われなくてもそのつもりだ」


 というか、どうせ正直に言ったって誰も信じやしないからな


「はっ!受け入れるのがはええな!自分の立場を理解してるようだな!」


「………………………………用がないならもういいか?人を待たせてるんだ」


「はっ!お前を待つなんて、そいつも犯罪者か?ギャハハハハ!」


 ブチッ


 こいつ………今、なんつった?暗鷹の事、犯罪者って言ったか?


「……けせ」


「あ?」


「取り消せ」


「は?なにお前ごときが俺に向かって………」


「取り消せっつってんだよ」


 ボゴォン!


「ケヒャ…………………!」


 ガシャァン!


「チッ」


 思わず手が出ちまった…………に必死で鍛えたこの手も、今や人を傷つけるだけの汚ぇ手になっちまったよ……………


「おい」


「ヒッ…………」


 なんだ?一発殴っただけでこんなに怖がられるのか…………ほんと、嫌になっちまうな


「……………………こいつに、殴った事謝っといてくれ」


 ほんとに殴っちまったのは悪いと思ってる………ちょっとスッキリした事は否めないが…………


「わ、分かった」


「ああ、それと、」


「ま、まだあるのか?」


「次、あいつの事を俺と同列に扱ってみろ…………原型留めないぐらいにグチャグチャにしてやるからな?」


 どこをとは言わねぇけどな


「…………………………(コクン)」


 そんなに怖がられると逆に悲しくなってくるな……


 ガララッ


「……………あいつは、俺にとっちゃ太陽みたいな存在だからな。俺と同列に扱うのは俺が許さ………」


「先輩」


 んん?!


「く、暗鷹?!」


 なんでここに?!


「先輩の事をつけてきたんですぅ、心配になってしまってぇ………」


「お、おう、それはいいんだけど……………」


 やべ、今の聞かれてたか…………?


「無事でよかったですぅ、本当に、心配したんですからねぇ?」


 ………………………そうか、もうバレてるんだな…………



「…………俺の噂、知ってるだろ?犯罪者って呼ばれてる事、それが理由で全校生徒から嫌われてる事、俺がこうやって放課後虐められてる事………」


 まぁ、その主犯格ぶん殴っちまったが…………


「はい、もうとっくに知ってましたよぉ?」


 ………………………そうか


「なら、これで分かっただろ?俺といても悪い噂が立つだけだって……………」


「でもぉ、多分それぇ、時の事ですよねぇ?」


「?!」


 なんでそれを……………


「ふふっ、先輩がそんな事する訳無いって信じてますからぁ」


「暗鷹……………」


 まだ、俺の事を信じてくれる人はいたんだな………


「それにぃ…………」


 ん?なんだ……?こっちに顔を近づけて…………


「私はぁ、先輩にとって太陽なんですよぉ?太陽がぁ、月を裏切る訳ないじゃないですかぁ」


 んげっ!!!


「き、聞こえてたのか…………」


「はいぃ、バッチリ聞こえてましたよぉ?」


「んぐおぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 恥っず!やっべ恥っず!


「んがあぁぁぁぁぁぁ……………」


 恥ずかしいぃぃぃぃぃ!!!


「それに………先輩は、私にとって世界そのものなんですから」


「うあぁぁぁぁぁ…………」


 聞かれてたのかよぉ……………!


「大丈夫ですよぉ、先輩」


「………………………なにがだ?」


 俺は今、今年最大の羞恥を味わっているんだが……!


「太陽が沈めば月が昇るという常識のようにぃ、私がぁ、先輩の事を信じてる事なんてぇ、紀元前からの常識なんですからぁ」


「………………紀元前はそもそも俺達生まれてないぞ…………」


「そうですねぇ、ふふっ♪︎」


 ほんとに………こいつは………


「……………帰るか」


「そうですねぇ」


 ありがとう、俺を信じてくれて…………


「…………………………あいつら、先輩を傷つけやがって………………絶対に、報いを受けさせてやる……!」

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