第4話 Yashiってなに?

 【Yashi】て椰子?東南アジアだけにヤシの木だろ。ちがうって、「やらしー」。いやいや、相手ひっかけるの「やさしー」じゃね?芸の「肥やし」的な。んだよそれ!

 でもさ、会費バカ高いらしいぜ。むりむり、俺らにはむーりー。


 会費どころか、招待制サイトは入会が難しかった。誰かの紹介、ではなく運営の誰かと接点を持たないといけなかった。つまり、招待者は運営側なのだ。

 「高くてもいい!俺も招待されてー」

周りに日本語を解する人がいるとは思わず、言いたい放題の御一行の隣で、さっと右手を上げた。

 会計を済ませ店を出ると、雨季の夜は意外なほど涼しかった。


 答えは「癒し」、卑しい癒し。

 サイトを立ち上げる時、自分が一番嫌いな言葉を選んだ。

 「癒し系だよね~」と男女問わず言われたし、始めこそ無駄に尖ろうとしたが最終的には諦めた。

 ライトノベルの表紙にいそう、現実味ないルックス。

 王子、プリンス、ハンサム、あらゆるしょうもないあだ名で呼ばれた。笑うとバラが咲く、スマイル砲やめてくれ、癒さないで~とからかわれた。

 在日米軍のエンジニアだった父と、日米ハーフの母。だから僕はアメリカ寄りハーフで、実際ほぼ日本人には見えない。

 「エリックみたいのがいるから、うちら失敗ハーフとか言われちゃうんだよね。マジ勘弁」

 と、混血グループから言われる。

 都内でキッズモデルをしていた時期があるが、気持ち悪い触り方をする大人が多くて辞めた。成人してからも、スカウトされてうっとうしい。

 見た目から解放されたい。人前に出ない仕事を、自分で作った。

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