第2話 ほんとは ひがし

 東子、トーコ。これが私の本名だ。

 両親は東欧で出会って東京で再会して私が生まれた。安易な名づけではないか。なんだよ、東って。

 外国名も持っている。日本人でない母にそっくりな私は「お人形さんみたい」と、リアルに5千回言われて育った。

 自分が美人なのは知っているし、自慢にも思わないし調子にも乗っていない。ただ、同じ言葉で容姿を褒められるたびに内部が乾く気がして、なるべく日本以外を転々とする道を選んだ。

 マレーシアを選んだのは偶然だった。

 MM2Hというビザで早期退職後の住まいにしようと、両親が買ったコンドミニアムがあったから。なんだかんだ、父の仕事は退職を許してくれずトーコが住み始めた。

 フリーランスのWEBライター、子供と女性限定の英会話講師、翻訳。

 そのあたりを職業にしながら、日本で所有しているアパートの賃貸収入で暮らしている。地方の駅近、小ぎれいなアパートは女性専用で大好評。入居待ちが出るほどだ。我ながら理想的すぎるアラサー独身生活。

 KLにも友達はできた。オトコは要らない。

 実際、別に相手はオトコでなくてもいいのではと思いはじめているが行動には移していない。

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