第26話 また一緒に

この状態では頭がイカれてしまう。

そう考えた俺は勉強に無言で集中する。

時折チラチラと満を見ながら.....。

それから1時間が経過した時。

うーん。勉強.....飽きたね、と伸びをする満。


「何か飲む?また。.....とは言っても麦茶ぐらいしか無いけど」


「あ.....む、麦茶でも大丈夫だよ」


「.....そっか。じゃあ持ってくるね」


それから動き出す満。

そして台所に立つ。

俺はその姿を見ながら、手伝うよ、と立ち上がる。

そうしてから一緒に作業をする。

すると、有難う、と言いながら満がとんでもない事を言ってきた。


「.....何だか新婚さんみたいだね」


「し、新婚!?」


「そう。.....仮の恋人ってのは分かっているけどね。何だかこうして愛しい人と一緒なのが不思議」


「そうだね.....確かにね」


「.....もうちょっとしたら帰らないとね。和馬」


「そうだね.....確かに.....夕方だしね」


するとトンッと俺の肩に頭を乗せてきた満。

俺は!?と思いながら満を見る。

満は、幸せだな、と言いながらお茶を淹れる。

私.....本当に和馬の恋人になりたいな、とも.....うぉ!


「.....心臓が.....跳ね上がってしまう.....」


「そうだね。私もドキドキ。.....何か本当に不思議が感じがするから」


「.....そ、そうだね.....」


「.....1ヶ月なんてあっという間に過ぎるだろうね.....きっと。.....大切な日々だね」


「.....そ、そうだね.....うん」


「アハハ。緊張しすぎ」


それは満が魅力的だから、という言葉を飲み込みながら。

俺は離れてから.....そのまま座布団に腰掛ける。

それから満がお茶を持ってくる。

それを見ながらまた俺達は勉強を始めた。



何も無かった、と言える。

まあ何とか何もなく終わった。

思いつつ俺は気を使い過ぎてヘロヘロになりながら歩いていると。

四葉がやって来た。

それから、お兄ちゃん、と声を掛けてくる。


「どうしたんだ?四葉」


「.....ううん。お兄ちゃんと早く会いたいなって」


「.....いや。そんな事をしなくても.....会えるじゃないか。家で」


「外の景色も見たかったしね」


「.....成程ね」


それか住宅街を歩く俺達。

すると四葉が、ねえ。お兄ちゃん、と聞いてくる。

俺は?を浮かべて、何?、と返事をする。

四葉は俺を見上げていた。

な、何だ。


「.....四季先輩と付き合っているんだよね?仮で」


「.....そうだな.....うん。結局そうなったから」


「.....経験になりそう?」


「.....経験か.....恋愛の?」


「そう。.....私は気になる」


そうだな、と顎に手を添えていると四葉が自らの腰に手を回した。

それから俺に笑顔を向けてくる。

俺はその様子にドキッとしながら、経験になると思う。これは大きな、と回答した。

すると四葉は、そっか、と笑顔になる。


「.....ねえ。お兄ちゃん」


「.....な、何だ」


「5年前の事、覚えてる?」


「5年前.....ああ」


「私は捻くれていた。.....だけどお兄ちゃんがこの心を溶かしたの」


「.....そうか」


「貴方の投稿動画で.....私は貴方が好きになりました」


言いながら見上げてくる四葉。

な、何だ改まって。

思いながらドギマギしていると。

夕焼けが薄暗さに消えた。

四葉が、私ね。.....お兄ちゃんが好き。世界の誰よりも、と言ってくる。


そして次の瞬間。

住宅街にも関わらず背伸びした。

それから俺の頬にキスをしてくる.....ほ!?


「.....ど、え!?四葉.....!?」


「私は.....貴方が好きです。.....だからその感謝の想いを形にしたいのでキスをしました」


「.....いやいや!?」


「お兄ちゃん。大好きだよ」


「.....!」


まさかキスをされるとは思わなかった。

俺はドキドキしながら四葉を見る。

すると四葉はTシャツを翻して空を見上げる。

お兄ちゃん。月が見える、と言いながら。


「そ、そうだな.....」


「.....ねえ。お兄ちゃん」


「.....何だ?」


「またアニメが観たい。一緒に」


「.....あ、ああ。成程ね」


何かされるのかと思った。

そして俺に笑顔を浮かべてくる四葉。

それから.....俺達は帰宅してから。

そのまま俺は風呂に入ってから.....自室に戻る。

すると四葉が入って来た。



「お兄ちゃんは四季先輩と付き合っているけど。.....でも絶対に負けない気持ちがある」


「.....い、いきなり来て.....話す事じゃないぞ」


「.....この好きという感情は誰にも負けないよ」


そして何という事か。

俺の膝の上に座って来た。

何をしているんだ!?

俺は慌てる。

すると四葉は俺の腕を掴んでお腹に回した。


「.....兄妹だからね」


「.....いやいや!?今この場で兄妹を使うなよ.....!?」


「何?お兄ちゃんは私の行動が嫌なの?」


「い、嫌じゃ無いけど.....でもその。今使う言葉じゃない」


だが四葉はその手を離そうとしない。

それからテレビを点ける四葉。

ネトヘリを開いた。

そして、どんなアニメを観るの?、と聞いてくる。

俺はその言葉に、まあ.....ラブコメだけど.....、と話す。


「.....そっか。じゃあ観ようじゃないか」


「この状態でか!?」


「キスもしたし良いじゃない」


赤くなってニヤッとする四葉。

馬鹿言え!?

頬のキスはノーカンだろ!、と思いながら俺達はワイワイ話した。


そうしていると.....四葉が寝てしまう。

非力な俺には四葉をお姫様抱っこする力が無かった。

どうしたら.....良いのだろうか.....!?

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