第25話 共通の趣味

「四季財閥の娘.....私達は姉妹なの」


「.....し、姉妹.....って?」


俺に居場所が無い感じでソワソワしながら周りを見渡す。

それから台所に居る満を見ているとそんな事を切り出してきた。

満は、そう。姉妹、と思いっきり苦笑する。

そして俺のもとにお茶を持ってくる。

お茶菓子も一緒に。


この部屋だが.....畳が痛み。

そして襖も少しだけボロボロで。

築.....相当経っていると思われるアパートだと思われる室内だった。

多分30年ぐらいは経っている。


でもそれでも女の子の部屋という事に変わりはないだろう。

俺は初めて女の子の部屋に来た事で.....汗が止まらない。

脂汗っていうか.....冷や汗っていうか。

ヤバい汗が止まらない。


「私は姉の方なの。.....妹は.....お父さんの財力に飲み込まれちゃった」


「.....飲み込まれたっていうのは.....」


「つまり金で買われちゃったの。.....最悪だよね」


「.....」


妹は.....お金が全ての様な感じになっちゃったから。

縁を切った感じだね、と満は自嘲する。

俺は!と思いながら満を見る。

すると満は座布団に座りながら俺を見てくる。


「そんな時に出会ったのが貴方の動画だった。この状況だし何もかもを捨ててこのまま自殺で死のうと思ったんだけどね」


「.....」


「私はまだ死ねないな、って思った。この人に出会うまではって」


「.....そうなんだね.....」


「そう。.....だから君は本当に命の恩人でもある。.....君に出会った事が.....本当に幸せなんだ」


「.....」


俺は顎に手を添えながら考える。

すると満が、私とそのまま付き合ったらお金が沢山手に入るかもよ、と言ってくる。

冗談混じりで.....。

だが俺は首を振ってから否定した。

それから顔を上げる。


「俺は人は顔とかじゃないって思っているよ」


「え?それは.....」


「.....俺の隣に居て.....居心地の良い人と一緒に居たい」


「.....和馬.....」


あは、あはは。

そういう所に惹かれたんだね、私は、と笑みを浮かべて俺を見てくる満。

そして、君のそういう所が本当に素敵、と柔和になる。

俺はボッと赤面した。

そうしてから居ると満が、ねえねえ。それはそうと和馬ってラノベ好きなの?、と聞いてく.....は!?


「え!?い、いや。た、確かに好きだけど.....どうしたの?」


「いや。ライトノベルがこの前.....和馬のお部屋に置いてあったから。.....好きなのかなって。私も同じ趣味にハマりたいな。和馬が好きな事.....共通にしたい」


「.....い、いや.....それは.....でも波瀾万丈だし.....」


「あ。多少エッチなのは受け付けるよ」


「フォア!?.....し、しかし.....」


すると満が俺の手を握ってきた。

そして俺を見上げてくる。

真っ赤になる俺。

それから俺は満を見る。


「お願い。是非.....一緒の趣味を持ちたいの」


「.....わ、分かった。そ、それじゃあ.....持とう.....か」


「有難う。和馬。.....じゃあどういう分類が好きなの?」


「.....ら、ラブコメだね.....」


「学校で読んでいるのもラブコメなの?」


「そ、そう」


そっか。じゃあ私.....和馬と同じ趣味を持とう。

それにラブコメって.....なんだか良いよね、と赤くなる満。

俺はそんな姿にドギマギする。

ヤバい可愛い。


「ラブコメは.....良いよねって思う。.....まあそんな事はリアルじゃ起こらないでしょ、って感じの事ばかりだけど」


「えっと.....何か.....その。案外詳しいんだね.....」


「えへへ。四葉ちゃん情報」


「.....よ、四葉.....」


四葉.....。

まさかの四葉情報か。

思いながら満を見てみる。

すると満はお茶を飲みながら、今、そういうのにハマらないとちょっとやってられないぐらいの精神なんだ、と答えた。

そんなに追い詰められているのか、と思う。


「.....そんなに追い詰められているの?」


「.....ウザい連中ばかり。.....連れ戻そうとしている。嫌がらせも酷いんだ」


「.....どういうのなの?」


「墨汁をポストに入れられたり」


「.....それは酷いね.....」


だから親の指示に.....、とそこまで言ってから涙を浮かべて泣き始めた満。

俺は!?と思いながら満を見る。

すると、私、貴方を利用しようとしているのかもしれない、と答えた。

俺は?を浮かべて、どういう意味?、と背中を摩りながら聞くと。


「.....お父さんに恋人を作らないと連れ戻すとは言われたけど.....それって利用だよね。.....君の人権の利用だよね.....」


「.....満.....」


「.....御免なさい.....」


「.....」


満は.....かなり落ち詰められている感じだった。

俺はその姿を見ながら唇を噛む。

そうしていると.....インターフォンが鳴った。


俺達は!?と思いながら玄関を見る。

玄関から外を見ると。

相当な美少女が立っている。

かなりのブランド品で身を包んでいる。

誰だ?


「.....誰.....?」


「.....由衣夏.....」


「.....妹さん?」


「.....そうだね.....居留守を使おう。和馬。.....会いたくない」


「そ、そうだね」


そして俺達は居留守を使い。

由衣夏という少女は去って行った。

満は去って行くその姿を影から見ながら。

俺を見てくる。

ゴメンね。驚かせて、と言いながら。


「.....満。大変だね」


「.....普通っていうのが程遠いね。.....本当に」


それから眉を顰める満。

俺はその姿を見ながら.....何を思ったか。

抱きしめてしまった。

何を考えているんだ!!!!?

俺は思いながら直ぐにハッとして離れる。


「.....待って。今のもう一回やって」


「.....ご、ごめ.....え?」


「.....落ち着く。.....本当に落ち着くから。もう一回やって」


「.....で、でも!!!!?」


「お願い。というかやらないなら.....」


満自身が俺に思いっきりハグをしてくる。

そしてスンスンと鼻を鳴らして笑顔を浮かべる。

良い香りだね、と言いながら。

俺は既に脳の容量がパンクしそうだった。

アカン、と思いながら.....満を見る。


「.....もうちょっとこのまま.....」


そして何を思ったか満はジッと俺の胸の中に収まっていた。

それから俺達は暫くジッとする。

し、心臓が爆発しそうなんですけど。

どうしたら良いのか.....。

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