第22話 本当の幸せ

1ヶ月の恋人って何だろうと思いながら俺は教室で四季さんを見る。

あの後だが結局、四季さんは何も語らずだった。

楽しそうに会話をしている。


恥ずかしいのか何かあるのか。

思いながらだが.....。

そうしていると声が聞こえてきた。

それは.....当島さんだ。


「和馬くん」


「.....あ。当島さん。どうしたの?」


「その.....井上の事だけど。何とかなった?」


「.....あ、うん。.....一応何とかなったとは思う。彼女は.....結構反省していた」


「流石は和馬くんだね.....何とかなるんだ」


「何とかって言っても.....一時的かもしれないけどね」


何だか彼女も落ち着いたって噂が広まっているし.....成程ね、と当島さんは納得した様に笑みを浮かべる。

それから俺を見てきた。

和馬くんは.....やっぱり人助けが得意だね、と俺の机に頬杖をつきながら。

俺はその様子に、べ、別に得意って訳じゃないけど.....、と慌てる。


「.....うん。.....でも現にまた救ったからね。.....まあでもどうあれ。和馬くんは私のものだけどね」


「い、いや。俺は誰のものでもないよ。みんなの幸せを願っている」


「そう思うでしょ?.....でも私に段々溺れていくから。覚悟してね」


「.....溺れていく.....」


「そう。溺れるから。.....うん」


それからそのまま俺の手を握ってから去って行く当島さん。

俺はその姿を見ながら.....四季さんを見る。

すると四季さんはいつの間にか俺の元に近付いて来ているのが見えた。


「.....その。佐藤くん」


「.....ど、どうしたの?四季さん」


「この1月の恋人.....関係。.....内緒ね?」


「.....え!?でも大橋さんも四葉も知っているけど.....」


「うん。噂はそこまでで止めておきたい。あの2人はそんな事を言いふらす様な人達じゃ無いから.....だからこの噂はこの辺りで止まると思うし」


「.....四季さん」


俺は小声で尋ねる。

すると四季さんは、何?、と聞いてくる。

覚悟した様な目をしている。

俺は率直に聞く。


「何故.....1月の彼氏役.....を?」


「.....お父さんが今更だけど私を連れ戻そうとしている。その条件を消す事として.....彼氏を作る、って事だった」


「.....そ、それで俺?.....何で俺?」


「それは分かっているよね。.....私は君が好きだから。それに私は君以外の適任はないと思ったから」


「.....そ、そう」


そして俺は汗をかく。

すると四季さんは、じゃあね、と手を振ってからリア充グループに戻って行った。

その姿を見送りながら俺は腹痛を感じて立ち上がる。

それから、イテテ、と思いながらトイレに向かう。

そうしていると。


「ねえ」


そんな声がした。

俺は?を浮かべて横を見る。

するとそこに.....予想外の人物が立っていた。


それは.....重松。

重松ミコだった。

ぐお!ハウ!腹が!な、何事!?


「.....な、何でしょう?」


「.....アンタ.....放課後、北区のマッ◯にツラかせる?」


「.....へ!!!!?」


ツラを貸せるってのは.....ちゅまり?

俺はゾッとしながら重松を見る。

重松は俺を真顔のまま見てい.....る。

眼光が鋭すぎる.....鷹かな?

俺は考えを巡らせながら答えに行き着く。


「は、はい」


そんな答えに。

いやだってそう答えるしかないよね?

俺は思いながら重松を見る。

重松は、そう、と言いながら踵を返して教室に戻って行った。

マジに何なの?、と思いながら重松のその姿を静かに見送る.....。



重松ミコ。

正直言って謎が多いと思う。

女帝以外のあだ名がまるで無いしな.....。

まあどうでも良いのだがその女帝に何でか知らないが目を付けられた。

それから俺はそのまま放課後を迎える。


俺は青ざめながら胃をキリキリ痛めながら。

そのまま◯ックにやって来て重松を探す。

すると、いやいや。アンタ何処行ってんの?、と声がした。

俺は!と思いながら窓際を見ると。

そこに女帝が居た。


「.....ったく」


そんな悪態を吐きながら俺を見てくる。

俺はその姿を見ながら青ざめる。

それから横に腰掛けた。

しっかしまぁこうして見ると重松も美少女だよな。

それは良いけど.....。


「その.....俺に何かご用でしょうか」


「.....用が無かったらこんな下らない事してないんだけど?」


「そ、そうですね」


そして女帝はポテトを食いながら、端的に聞くけど、と切り出す。

それから俺を見てくる。

俺を睨む様にしながら、であるが。

その様子に俺は、は、はい!、と背中を伸ばす。


「.....ああ。私、怒っている訳じゃないし。.....これ生まれつきだから」


「.....へ?.....あ、わ、分かりました.....」


「.....聞くんだけどアンタ満をどう思っているの」


「.....へ?ど、どうとは.....?」


「いや。満が好きなのかって聞いているんだけど」


一体どうなっているのだ?

何でいきなりそんな質問.....?

い、いや。俺は今は好きとか考えられないです、と答えてみる。

正直こんな答えでは重松は、は?キモい、とか威圧してきそうだが。

だが重松は予想外の言葉を言った。


「あっそ。アンタは優しいもんね」


「.....が!?」


「あ?何?がっ、って何」


「い、いや。すいません。予想外でした.....」


「予想外だ?アンタ自分の性格知らないの?女ったらしだし」


「そ、そういうのじゃない.....ですけど」


重松は威嚇する様な目付きで俺を見てくる。

そして、アンタ自分自身の事考えたことあんの?、と聞いてくる。

俺は?を浮かべて買ったシェイクを見て重松を見る。

重松はつまらなさそうに手を叩く。


「いや。アンタは自分自身の幸せは考えた事があんのかって聞いてんの」


「.....俺は.....えっと.....」


「.....もしかして知らないの?馬鹿じゃないのアンタ?何でそれで女の子に触れ合ってんの?」


「.....そ、それはどういう意味でしょうか」


「そんな簡単な心でアンタの周りの女子が本当に喜ぶと思ってんのかって聞いてんの」


俺はハッとした。

それは確かに.....、と思う。

正直、好きと言われても上辺の空だった気がする。


あまり考えた事がなかった。

すると重松は、そんな何も分からない様なアンタに頼むのも嫌気が差してマジに気持ち悪いけど、と向いてくる。


「満を救って」


「.....しげま.....つさん?」


「.....私にはアンタの様な真似は決して出来ない。その分アンタが満を今の状況から救ってほしいから」


「.....!」


重松が。

あの重松が頭を下げている。

俺は衝撃を受けながらその姿をオドオドして見ていた。

そして俺は少しだけ考えてから答える。

分かりました、と。


「正直こんな俺ですから.....何処までやれるか分かりませんが.....やってみます」


「.....」


重松は俺の言葉に目線だけを動かし俺を見る。

そして最後のポテトを口に放ってからそして立ち上がる。

それから無言で去って行く。

その際に背後から声がしてきた。

重松の声だ。


「砂粒程度だけどアンタに期待している」


「.....!」


そう思いながら首を重松の去った方角に動かすが。

既に重松の姿は無かった。

俺は人混みを見ながらオレンジ色の光が差し込むファースト店の店内を見る。

帰るか。

そう考えながら。

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