第20話 動画作成のヒント

一時的ながらも動画配信を再開する事になった。

俺はただ井上さんに今の性格を変えてほしい願いを込めて動画を考える。

何を創ろうか、と原点に帰る様に。

自宅で腕を組んでいた。


すると背後からいきなり抱きしめられる。

自室のドアがいつの間にか開いており。

四葉が抱きしめてきていた。

お兄ちゃん、と言いながら笑みを浮かべる。


「いや四葉。良い加減にしないと.....お前さんは中3だぞ!」


「確かにね。まあでも今だけお兄ちゃんじゃないし大丈夫。今から抱き着いても」


「今だけ!?大丈夫じゃないよ.....」


「女の子は恋すると変わる。大好きな人だから大丈夫だよ」


「意味がさっぱり分からないよ!?」


俺は慌てながら居ると。

四葉が目の前の撮影道具に気が付いた。

それから、もしかしてお兄ちゃんはまた動画を創るの?、と聞いてくる。

俺は、そうだね。一応。でも今回は目的があるんだ、と言ってみる。

四葉は?を浮かべて目をぱちくりした。


「その.....ある女の子に向けてのメッセージだ」


「ほう。それは5年の私の片思いを無視しての浮気という事ですかな?」


「いやお前!?人聞きが悪いな.....浮気じゃ無いよ。というか俺達付き合ってないけど.....」


「付き合ってないとはいえ浮気は浮気だよ。私が浮気って言っているんだから」


「無茶苦茶な」

 

俺はそう言いながら嫉妬する様な四葉を見る。

四葉は、まあでも、と頬を萎ませてから俺を見てくる。

仕方がないな、という感じで。


「お兄ちゃんだから。人をまた救うんだね」 

 

「別に俺は人を救う為にやってないよ?」


ベッドに腰掛ける四葉を見る。

四葉は苦笑いを浮かべて足を動かす。

バタバタ、という感じで。

俺はその姿を見ながら笑みを浮かべる。

それから、なんか巻き添えを食らっているだけだと思うけどね、と答える。

すると四葉は膝の上で頬杖をついた。


「お兄ちゃん。それがお兄ちゃんの才能だよ。愛すべき才能だと思う。お兄ちゃんが好かれる理由だよ」


「俺ってそんなに好まれる事をしている訳じゃないが.....」


「無意識でも人は救われた。これは事実。だからお兄ちゃんは良い人なんだよ」


「.....有難うな。四葉。自信が出てきたよ。俺。大切な自信が」


「うん。その意気だよ。お兄ちゃん」


俺を見ながら笑みを浮かべる四葉。

それから四葉は、もし良かったらお兄ちゃん。小説を書いて読んでみたら?、と言ってくる。


動画にか?それは如何なものか?

確かに駄文は書いているが。 

才能より何か.....無駄の様な気がする。


「お前さんの意識している大切な想いは感じた」


「?.....お兄ちゃん?」


「イメチェンしよう。.....今回は超絶真面目動画だ」


「真面目動画?」

 

ヒントを得た気がする。

俺は考えながら駄文の利用とかじゃ無いが。

でもバズる動画を思い付く。


それから考えてみた。

現代人は短い動画ながらもインパクトのある分を好む。

となれば話は簡単。

短い心に響く動画を創るんだ。


「今までが動画が長かったしな」


「どれくらいの尺度?」


「具体的には5分ぐらいかな」


「え?!短くないかな?前はそんなに早くなかったよね?」


「これぐらいで大丈夫だ。じゃないと今は人が付かないと.....思う。まあ再生回数はどうでも良いけど」


そんな会話をしながら俺は四葉を見る。

四葉は心配げな顔をして俺を見ていたが。

なるほど、と納得してから柔和になる。

それから俺を頷きながら見てくる。


「そうなると5分の動画をどう創るか、だね」


「残念ながら手は抜けないね」


「まあそうだね。取り敢えず手は抜けないよね。っていうかお兄ちゃん?手を抜いてたの?もー」


「は、初めは良かったんだけど途中からは忙しくて雑に、駄目になってしまった。すまない」


「なるほどね。そういう事なら仕方がないね。まあ.....お兄ちゃんだしね」


「それで納得してもらうとちょっとアレだがまあそうだな.....真剣には創ろうとしていたぞ。勘違いはしないでほしい」


「ふふっ。そうだね。分かった」


でも楽しみだな。お兄ちゃんの新作。きっと魂を込めるものになるね、と笑顔になる四葉。

それから立ち上がる。

俺はその姿を見ながら苦笑した。

恥ずかしいはにかむ様に。


「お兄ちゃん。ちょっと家事をしてくるね」 


「そうか。有難うな。いつも.....」


「お駄賃は頂戴」


「冗談だろお前さん」


「私とのデートの約束だよ。忘れたとは言わせない」 


ムッとする四葉。

え?そんな約束した.....か?

俺は思いながら青ざめて顎に手を添える。

それから考えてみる。

そして四葉を汗ダラダラで見る。


「まあ実際は約束したかしてないか忘れたけど。とにかく私はデートしたい。お兄ちゃんと」


「いやいや。だからって兄妹で.....デートするっておかしくない?」


「いや?逆に何がおかしいの?全く血が繋がってないよ私達。それ故のスキンシップだよ?」


「.....」


甘々だ!、と思いながら俺は四葉を見る。

するとその四葉が寄って来る。

それから俺を見上げた。

俺は赤くなる。

それから汗を噴き出した。


「お兄ちゃん。何?どうしたの?スキンシップだよ。これも」


「お、お前おかしい!前より何故そんなに甘いんだ!?」


「言ったでしょ。私は普通。お兄ちゃん何もおかしな点は無いよ」


「好きだからってヤバくねこれ?!」


「ふふ。お兄ちゃん大好きだよ」


胃痛がする!

それから俺を見上げてから。

すりすりしてくる我が四葉さん。

俺はゾクゾクと感じながら四葉を見る。


すると四葉は、じゃあ動画撮るだろうし。去るねー、とニコニコする。

それから四葉は去って行った。

昔とは桁が違いすぎる甘え方だ。


「本格的に困ったもんだな.....」


ドクンドクンと心臓が波打つ。

それからゆっくり額に手を添える。

そのまま胸に手を添える。

これはアカン。


爆音だな.....胸が。

ヤバすぎるんじゃね?

思いながら俺はまた赤面した。


それから俺は首を振る。

妹にやましい事は考えたら駄目だ、と考えながら、である。

全く我が妹は.....。

それから俺は動画作成を考える。

うーむ。

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