第18話 作戦

何というか顔出し動画配信をやっていたのだが。

俺自身のプライバシーが危ないか、と考えてから引退動画を配信してそのまま引退した、のだが。


この影響で本当に様々な世界を見る事になった。

どれだけ様々かって言えば.....俺自身の事もそうだけど.....色々な人の心を知れたと思える。

だから俺は様々な世界、と表現している。


俺はそう考えつついつもの陽キャの多いクラスの奴らを確認しながら。

そのまま盛大な溜息を吐く。

すると.....四季さんが先程の話?それも含めて?だろうけど。

心配げに俺に話し掛けてきた。

モジモジしながら。


「佐藤くん」


「.....どうしたの?四季さん。.....さっきの.....君の話の件.....かな?」


「.....それもあるけど.....君の事.....何だか心配.....大丈夫?佐藤くん.....」


「えっと。俺は俺なりに戦っていくつもりだよ。.....有難う。四季さん。井上さんには言い負かされない様にする」


「うん。.....分かった。気を付けてね。本当に」


四季さんはそれで去って行った。

先程の話、か。

俺は手を小さく振って笑みを浮かべた。


そして顎に手を添える。

困ったもんだな.....、と胃痛がしてくる。

気分が悪くなってくる。

ゲロを吐きたい気分だ.....ストレスで。


「.....井上さん.....か」


俺はそんな呟きをしながら.....顎を撫でる。

そして考えてみる。

どうしたら井上さんを.....何とか出来るか。


そう思いながら顎を撫でる。

そうしてから次の時間が始まった。

早いな時間経つの.....。



その次の時間の終わっての休み時間。

大橋さんが深刻そうな顔でトイレに向かった俺の元にやって来た。

あまりに深刻な顔で.....ギョッとする。

青ざめたりする。


何がギョッとしたかと言えばいつもの笑顔が全くない。

真剣な顔だった。

いつもの大橋さんでは無い。

これは大橋さんとは言わない気がする。

俺はおずおずと聞いてみる。


「.....ど、どうしたの?大橋さん」


「.....うん。かっずー。ごめんね。いきなり来て」


「.....?」


「.....ゴメン。私の.....友人が迷惑を掛けている.....って聞いて」


「.....あ。井上さんの事か.....」


「そう。たきな。.....彼女ね。一応.....その。.....ああ見えて嫉妬深いだけで悪い子じゃないの。.....だけど申し訳ないけど今は悪い子だって思ってる。.....ゴメン。上手く言えないや」


とにかくだけど.....かっずー。迷惑ばっかりでゴメン、と言う大橋さん。

俺はその顔を見ながら真剣な眼差しで見る。

すると大橋さんは両目にうっすらと涙を浮かべる。

まあその.....正直な話.....たきなの行動は異常だと思う.....けど。

と言いながら慌てる俺。


「まあその.....そうだよね。.....かっずー。馬鹿だよね.....止めれないのが」


「.....大橋さん.....えっと。井上さんは.....そうだね。確かに今見た感じは悪い子だと思うけど.....君の.....友達だよね。.....君の。だから井上さんには.....期待しているんだ。.....変わってくれないかなって。だから.....うん。上手く言えないな俺も.....」


「.....かっずー.....」


「.....だから.....まあその.....うん。.....えっと.....うん。.....俺としては井上さんを見守る事にする。.....それからこう判断した。話し合ったんだ」


「.....?.....え?」


「.....井上さんを変える為に頑張ろうって。い、今だけだけど」


それから俺は静かに背後を見る。

そこには四季さんと.....片瀬さんが立っている。

待ち侘びた様な感じで、だ。


俺はその姿を見ながら前に立っている大橋さんを見る。

大橋さんは!と考えながらだろうけど.....ジッと見ていた。

その姿に2人も見つめ返す。

それから沈黙の口を開く仕草をする。


「私と片瀬さん。そして佐藤くんで.....説得する」


「.....え.....かっずー.....そんな事をやっていたの?」


「.....俺の提案じゃ.....まあ無いけどね.....うん」


「.....でも相変わらずだねぇ。かっずーは」


嫌いじゃないよ。

好きになる理由だよね。

そう言いながら.....大橋さんは涙目で笑みを浮かべる。

それから大橋さんは涙を拭ってから。

そのまま俺を見てくる。


「.....かっずー。私も促してみる。.....君にも半分お願いするよ。.....たきなを救って」


「.....う、うん。ま、まあやれるだけやってみる」


「うん。.....お願い。ゴメンね。こんな事を本当に大好きな君に頼むのは本当に癪だけど.....君にしかやれない部分もあると思うから」


大橋さんは言いながら2人を見つめる。

すると顔を上げたそんな大橋さんに四季さんと片瀬さんが頷いて話し掛けた。

かなり真剣な眼差しだ。

俺はその姿をビクッとしながら見る。


「大橋さん」


「.....?.....四季さん.....何?」


「.....正直言って私は井上さんを心からはまだ許せないよ。.....井上さんの態度もそうだけど。色々とね。.....だけど.....私もそうだけど片瀬さんも佐藤くんが好きだから。.....この大切な思いを無碍にする訳にはいかないからやる事にしたんだよ」


「.....そういう事です。.....大橋先輩。.....私も同じ意見です。.....私は四季さんにお願いされたから動いている部分もあります。貴方の、井上さんの為じゃないです。決して。.....好きな人の為に動いていますから」


「.....十分だよ。.....有難う。有難う.....」


大橋さんは笑みを浮かべる。

俺はその姿を見ながら四季さん達を伏せ目がちに見る。

すると四季さん達は笑みを浮かべながら頷き合った。

それから大橋さんは柔和になる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る