第16話 大橋小鳥の友人

この事を万が一暴露の様に話せば私の居場所が無くなる。

大金持ちは言わないでね。

私はお金なんか必要無いけど、と。

そう彼女、四季さんは複雑な感じで全ての大切な思いを吐露した。

俺はその姿を見ながら眉を顰める。


先に出た2人を見送ってから。

それから学校に登校するのに靴紐を結んでいると四葉が俺に話掛けてきた。

俺は顔を上げる。

それから四葉を見た。

ジト目をされる。


「お兄ちゃんの周りは女子ばかりだね」


「ま、まあ、うん。好き好んでこんな状態に陥っている訳じゃないぞ」


「知ってる。お兄ちゃんはヒーローだから。まあ根性なしもそうだけどね」


「ヒデェな.....」


「私はこれでも褒めているよ。アハハ」


でもね。

私のヒーローは私だけのもの。

だから渡すつもりはさらさら無いけどね。

そう、笑顔で告げてからいきなり抱きしめる。

お、おい!?

真っ赤になる俺。


「私のものだよ。お兄ちゃんは」


「俺は誰のものでも無いぞ!」


「だーめ。私のもの。誰かじゃないよ」


「お前!?」


四葉は笑みを浮かべながら俺を抱きしめ続けていたが。

やがて、そろそろ怪しまれるね、と言いながら俺から離れた。

それから柔和になる四葉。


「私は必ずお兄ちゃんを陥落させるよ。その力があるから。5年の片想いだから負けない」


「お前さん.....」


「さあ行ってらっしゃい。お兄ちゃん」


見開く俺。

それから、やれやれ、だな。

そう考えながら四葉を見てみる。

そして外に出た。

四葉も登校する為に出る。



「こんにちは」


「.....貴方は?」


学校に登校すると。

いきなり肩までの髪ぐらいの女子に下駄箱の付近で話し掛けられた。

俺は2人に、先に行ってて、と誘導してからその女子を見る。

女子はジト目で俺を見ていたが。

直ぐに切り替える仕草をした。


「初めまして。2年、私ですね。井上タキナ(いのうえたきな)と言います。以後お見知り置きをお願いします」


「は、はあ。.....そ、その井上さんが何の用事で俺なんかに接触を?」


「あ、はい。簡単に言えば.....私、大橋ちゃんと友人です」


「.....そ、そうなの?.....へ、へえ.....」


「それでお願いがあります。.....私は.....大橋ちゃんの恋が実ってほしいと心から願っています。......その分、佐藤和馬くんに好きになってほしいんです。.....大橋ちゃんを」


「.....!?」


俺はボッと真っ赤になる。

そして井上さんを見る。

井上さんはニヤッとしてから俺の腕に絡みついて来る。

それから、全ての女子を切り捨ててでも大橋ちゃんと付き合ってほしいんです、と笑顔になってくる。


「.....!?.....え!?」


「私は他の女子が嫌いです。.....なので大橋ちゃんだけを見てほしいです」


「い、いや!?そういうのは.....」


「私を大橋ちゃんだと思って接して下さい。これは大橋ちゃんの頼みじゃないですが.....私は大橋ちゃんだけが幸せになってほしいって願っています」


「そんな無茶苦茶な!?」


「私は.....貴方と大橋ちゃんがくっ付く事を切に願っています」


それから俺を抱きしめて来る。

俺は、うあ!?、と思いながら井上さんを見ていたが。

ちょっと待ちなさい、と声がした。

それから.....当島さんが現れる。

今までの話を聞いていた様なそんな顔をしてくる。


「全部が聞き捨てならない。.....私も他の人も彼が好きだけど.....そんな滅茶苦茶なことは許されないよ。.....貴方何も知らないでしょう。彼の事」


「.....確かに彼の事はよく分かりません。でも.....大橋ちゃんが好きでいますからね。だからその分応援のつもりです」


「そもそも第一にこれって大橋さんの為になるの?」


「なりますよ。.....部外者は黙っていて下さい」


「.....まあとにかく離れて。此処は学校だから」


「何でですか?.....うーん.....話しているだけ貴方、ウザいですね」


それから暗黒の様な笑顔を見せる井上さんは、行きましょう、と俺を引っ張る。

俺はその姿を見ながら、ちょ、ちょっと待って。何処に!?もう教室行かないと、と言う。

すると腕時計を見てから、あ.....確かにそうですね、と俺を離した。

それから井上は死神の様な顔で当島さんを見る。

クラスが違うので今だけは渡しますよ。彼を、と言いながら。


「でも1つ言っておきます。彼は.....あくまで大橋ちゃんと結ばれるのです」


「.....」


「.....私はどんな恋の手段を使ってでも大橋ちゃんとくっ付いてもらいます。何故なら私は.....大橋ちゃんが救ってくれたんですから」


「.....例えそうでも.....やり方ってものがあるから」


「.....私は手段を選ばないって言いましたよね。.....犯罪以外なら落とす為に何でもしますよ。彼との代わりのセッ○スでもね」


これ変質者.....。

ゾクゾクという感じで紅潮しながら俺を見てくる井上さん。

こ、この子.....、と青ざめて恐れながら見ていると。

当島さんが、そんな馬鹿な事をする訳無いよこの彼が。


私が認めた男の子だし。貴方とは違うから、と言ってからそのまま俺の袖を優しく引っ張った。

そして、貴方には天罰が降るよ、と言う。

二度と近付くな、的なオーラも出す。

それから俺と一緒に遠島さんは階段を登ってからそのまま井上さんの元を去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る