第14話 将来の夢

移植か.....。

俺はふとそう思いながら片瀬さんを見る。

片瀬さんは今、ゲームで四葉とバトルをしていた。


体を揺らしている。

俺はその姿を見ながら顎に手を添える。

そして、ふむ、と思っていると。


「先輩」


「.....どうしたの?」


「ぼーっとしてないで先輩もしましょうよゲーム」


「.....そんな気分じゃ無いけど.....」


「.....ひょっとして私の事を考えていました?」


ニヤニヤしながら俺を見てくる片瀬さん。

俺はその姿を見ながら苦笑いをして片瀬さんを見る。

すると四葉が、でも心臓移植って結構大変だったんじゃ、と切り出した。

その言葉に片瀬さんを見る。

4億円掛かりました、と答えた。


「.....4億?」


「そう。これは寄付だった。.....全額じゃないけど.....でも寄付が9割だった」


「.....そっか。当時.....有名だったのは片瀬さんだったんですね」


「.....知ってるの?」


「はい。知っています」


そして笑みを浮かべる四葉。

そういや確かに有名だったよな。

ニュースとかで、〇〇ちゃんを助けよう、的な感じで。

正直捻くれているのでああいうのは詐欺かと思ったのだが。

俺は考えながら片瀬さんを見る。


「.....だから将来は医者を目指しています。まあ.....動画配信者でも良いんですけど.....手に職を、と思います」


「.....医者?」


「はい。誰でも治療出来る例えば.....何でも治せるブラックジ○ックの様な医者です」


「.....そうなんですね」


「うん」


まあパターンは違うけどブラッ○ジャックは有名だよな。

無免許ながら神の手を持つ.....医者。

正直.....俺はあまり好きではなかった。


それも捻くれているからだったけど.....でも片瀬さんの話を聞くと。

何だか読みたくなってくるな漫画。

ゲームを置きながら俺と四葉を見る片瀬さん。


「私は恩返しがしたい」


「.....恩返し.....か。ん?.....それは俺にも?」


「はい。当然です。.....先輩が第一です」


「.....いや.....恥ずかしいんだけど.....」


「何でですか?大切な人に言うのはそんなに恥ずかしい事じゃ無いですよね」


「.....」


俺は顔を引き攣らせる。

すると四葉が、でも素敵な夢ですね、と答える。

私はまあ負けないですけど、と言いながら。

お兄ちゃんは私のものですから、と笑顔になる。

片瀬さんはニヤッとした。


「お。言うね。でも私のものだよ」


「それは譲れません」


「譲ってほしいな。アハハ」


「.....お主ら.....」


全くコイツら.....。

俺は赤くなりながらその姿を見る。

すると、ゲームで勝負ですね、と片瀬さんが言う。

その言葉を受けながら俺も勝負をする。


よく考えてみたけど。

体を動かせないんだよな.....本当に。

だからゲームはこんな感じなのか、と思った。



「じゃあ先輩の部屋に行きましょうか」


「.....何で俺の部屋.....?」


「勿論ですが勉強です」


「.....勉強って.....教えあうの?」


「そういう事ですね」


「.....じゃあリビングでもよくない?」


よくないです。

何故なら四葉さんが居るからです、と顔をへの字にする。

俺はその姿にまた苦笑しながら、そ、そう、と返事をした。

それから俺達は部屋に向かってから。

そのまま部屋に入る。


「パイセンの隣に座ります。座布団借ります」


「.....パイセンの隣じゃなくても良いんですよ?」


「いえ。パイセンの隣が良いです」


「.....」


全く.....、と思いながら片瀬さんを見る。

えへへ、と言いながら片瀬さんは横に腰掛けた。

そして俺に寄り添って来る。

笑顔のまま、であるが。


「パイセン。愛しのパイセン.....♡」


「や、止めて.....」


すりすりー、とかしてくる片瀬さん。

俺はまた赤面しながら慌てる。

そして勉強をし始める.....と。


意外な事が分かってしまった。

何が、と言えば。

片瀬さんはギフテッドだった。

それ故に大学生の問題すらも解けるらしいが.....。

俺は驚愕する。


「だから.....あれだったの?.....医者に.....」


「まあそうですね。.....こんな才能あっても仕方がない部分とかありましたが。.....でも今となっては本当に良かったと思っています」


だって先輩に自慢出来ますしね、とウインクを浮かべた片瀬さん。

ビックリだな。

俺は頭が良くない方だ。

その為に教わる事が沢山あった。

それから1年生の片瀬さんに逆に勉強を教わる。


「もー!パイセンってば全く頭が良くないですね!」


「.....す、すまないです.....」


「まあでもそう言うパイセンでも嫌いじゃないです」


「.....そ、そうですか」


それから俺を、ええ、と言いながら指差しながら見てくる片瀬さん。

俺に肩をくっ付けるの止めてほしいんだけど。

思いながら片瀬さんを見る。

すると片瀬さんが、先輩。ここも違います、と顔を見上げてくる。


「.....あ」


「.....!」


物凄く顔が近い構図となった。

俺達は見合う。

それから.....俺は汗をかく。


片瀬さんも流石に汗をかいて、ご、御免なさい、と赤くなっていた。

俺は離れようとするが。

片瀬さんがハッとしてニヤッとした.....。


「先輩。.....是非ですけどキスしますか?」


「嫌です。それはお断りです。ダメだって.....」


「.....そうですか?私は余裕ですよ?」


投げキッスをする片瀬さん。

付き合っている訳じゃないっての。

俺は思いながらまた汗をかく。

それから片瀬さんを押しのけてから。

そのまま勉強を続けた。


とは言っても全く集中出来ないままである。

本気の本気なんだな。

そう思いながらだったから。

彼女は本気で俺が好きなんだな、と.....。

だから赤面せざるを得なかった.....。

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