第12話 部活入りましょうよ

動画配信を辞めた結果だが。

俺は様々な事に巻き込まれている気がする。

考えながら放課後に廊下を歩いていると、佐藤くん、と声がしてきた。


背後をゆっくり見ると.....四季さんが立っている。

手を挙げて俺に手を振りながら。

な、何でしょうかね?


「.....な、何でしょう?」


「.....うん。.....ちょっとお話。.....実はね。長谷場くんとの会話を聞いちゃったんだ」


「.....え?.....ウェ!?」


「.....だから声を掛けたの。.....有難うね。守ってくれるって言ってくれて」


「いや.....曖昧になっただけなんだ.....けど」


結局話としては曖昧になったのだが。

俺は汗を噴き出しながらそのまま四季さんを見る。

四季さんは、そう。でもそれでも、だよ。私の家の事は確かに何も言えない。だけど.....君が私を助けてくれたのは事実なの。.....だからこそ君には感謝している、と切り出した。

そして四季さんはそのまま俺に歩み寄って来る。

それから見上げてきた。


「有難う。.....じゃあ用事があるから」


それから四季さんは嬉しそうに手を振って去って行った。

何というかまあ。

動画をやってこれだけの人に感動を届けられたら幸せなもんだよな。


そんな事を思いながら四季さんの背を見た。

そして俺は踵を返す。

そうしてから昇降口にやって来ると.....待っていたかの様な見慣れた顔があった。

それは.....。


「先輩」


「.....?.....か、片瀬さん?」


「そうです。貴方の天使の片瀬です」


「.....貴方の天使.....!?」


「.....先輩。今日は私、部活動が休みなんです」


「.....そ、そうなんだ?」


うん?よく分からないけど片瀬さんって部活に入っているのか?

何処の部活動だ?

俺は思いながら、何処に入っているの.....?、とそのまま聞いてみると。

あ、映像部です、と答える片瀬さん。

え?、と思いながら.....片瀬さんを見てみる。


「私ですね。貴方の様な感動する動画を作りたいんです」


「えぇ.....でも感動するって言っても.....俺は何の知識もないままスマホで撮ってやっていただけ.....」


「でも私はそれで恋に落とされました。.....なので先輩には責任をとってもらいたいですね。アハハ」


「.....」


で、今日は何を言いに来たかと言いますとね、と言ってくる片瀬さんを見る。

俺の腕に自らの腕を.....絡ませながら。

オイ!?、と思いながら慌てて片瀬さんを見る。

一緒に部活やりませんか、と片瀬さんは顔をにぱっとする。

俺はその顔に汗をかきながら腹の痛みを感じつつ答えた。


「帰宅部で」


「それって青春を無駄にしていますよね。.....楽しい事しましょうよ先輩」


「でもそれは.....」


「大丈夫ですよ。素人でも。アハハ。もう先輩の名前書いて入部届出しました」


「へ!?何やってんの!?」


俺は大慌てで片瀬さんを見る。

片瀬さんはニコニコしながら俺を引っ張る。

何処に連れて行くつもりだ。

思いながら引っ張られたままそのままとある場所に向かう。

それは部室棟だった。


「今日は部員が3人居ます」


「えぇ!?.....ぶ、部活動休みって言ってなかった!?」


「それは言葉のあやです」


「ひどいな!?」


騙された気分だった。

そして俺は引き摺り込まれる。

その場所に.....男子生徒と女子生徒が2名。

何というか男子生徒が片瀬さんを見て、お、来たね、と話す。


「やあ。君が噂の人か」


「.....!」


それから男子生徒が立ち上がる。

履いている靴が.....3年生の証だった。

つまり先輩に該当する。

俺はそんな先輩に頭を下げる。

短髪の青年。


そして先輩は、3年の新島康平(にいじまこうへい)だ。宜しく、と握手を求めてきた.....俺はその先輩に握手する。

すると次に目の前に座っている女子の1人が反応した。


「.....私は渋谷梨子(しぶやりこ)」


おさげの髪の毛をしている見た感じ.....2年生。

17歳だと思われるそばかすのある綺麗な凛とした人。

同級生だな、と俺は胃痛を感じる。

すると更に真正面の少女が反応した。


「私は豊島瑠衣子(とよしまるいこ)です」


「.....」


「はひ!?何でしょうか!?」


「.....い、いや。御免なさい」


涙目になる豊島さん。

どうも.....この反応といい1年生っぽい。

片瀬さんと同じだな.....、と思う。


そして最後に、片瀬を含めて5人です、と片瀬さんが切り出す。

俺は、お、おう、と反応し.....ん?

5人?


「部員は何人.....?」


「.....先輩含めて5人ですよ?」


「何で俺含まれてんの!?」


「だって先輩はもう私達家族の一員です」


「入部届は破棄して.....」


「い・やです」


「.....」


俺は部活をやるとは言ってない。

思いながら汗を噴き出してから反応する。

すると、安心しなさい、と声がした。


見ると渋谷さんが反応している。

私達というかこの部活は出来てそんなに経ってない、と言う。

みんな素人よ、と言いながら。


「だから入部しなさい」


「.....何でですか!?」


「えー。先輩。やりましょうよ〜」


「嫌だ!?」


そもそも部活とか嫌な記憶しかない!

クラブとか小学校時代にやっていたけど!

漫画.....でも楽しくなかった!

ボッチだったから!


「私としては入部しなかったら先輩の居場所を潰そうかと思います」


「.....過激だな!?」


「そ、そうです!か、片瀬ちゃんが好きだから.....入部して下さい!」


「い、いやしかし.....」


「まあまあ。みんな。彼にも考えさせてあげよう。.....そうだろ?」


流石です先輩!、と思いながら俺は先輩を見る。

パイセン流石っす、とウルウルしながら。

そして俺は、じゃあ入部はお預け、と言う事で!、と切り出す。


よしこのまま存在感を薄れていこう。

そうすれば、と思っていると。

片瀬さんがジト目をした。


「じゃあ入部するまで先輩に付き纏います」


「.....は?それはどういう.....?」


「具体的には頷くまで今日、先輩の家に泊まりに行きます」


「.....は!!!!?意味不め.....い!ダメでしょ!親の許可も得られない!」


「得られますよ。だって私の家は放任主義ですので。.....先輩の親御さんに問い合わせれば万事オッケーです」


「ば、馬鹿なの?と、問い合わせなんかしないよ.....?」


ふーん。良いですよ?先輩。

私は先輩の秘密をバラしますので、と笑みを浮かべる。

この部活はそれなりの力がありますし、と笑顔になる.....へ?!

そんな馬鹿な!?


「なので先輩。何度も言いますけど部活動に入りましょう」


「嫌だ!?」


何でこんな目に遭っているのだ俺は!?

思いながら俺は抵抗してそのままその日は帰れたが。

本当に約束通り片瀬さんが泊まりに来た.....。

親に問い合わせたが。

今日は私たちも早いしまあ良いんじゃない?、という返事だった.....嘘だろ。

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