第9話 5年前から好きなのに負ける訳がない

5本の華が揃った様に。

咲く様に。

俺の元に彼女達は現れた。


何というか俺は.....というか俺は。

俺なんかに付き纏って楽しいのか?、と思ってしまう。

こんな俺なんぞに、だ。


少なからずとも俺はこの先も絶対的に恋をしないと思う。

臆病で触れば人を傷付けるしな。

思いながら俺はお菓子を置いて行ってくれた片瀬さんを見て心配げな顔をしている片瀬さんに挨拶して見送ってから。

そのまま自室でぼんやりアニメを観ていた。


ゲームをしようと思うが.....集中力が出ない。

これも全部彼女達のせいだろうけど。

思いながら俺はそのままアニメにイヤホンを着けて没頭しているとドアがいきなり開かれる。

そして突撃して来た様だった。


「お兄ちゃん」


「うわ!?はい!?」


「ノックしても返事が無いから。.....何をしていたの」


「す、すまん。ちょっとあ、アニメを観ていたんだが.....」


「そう。.....じゃあ一緒に観ようよ」


「は!?」


アニメなんか観てどうなる!?一緒に!?

俺は真っ赤になって慌てる。

しかし彼女は短パンのまま俺の横に腰掛けた。

そしてテレビでアニメを見始める。

そのアニメは.....ラブコメだった。


「可愛いね。この女の子」


「そ、そうだな.....うん。可愛いと思ういます」


「.....何それ?思ういます?アハハ」


「し、仕方がないだろう。お前が良い香りなんだから」


「.....そう。.....そうなんだ。へぇ」


俺を見上げてくる四葉。

その姿、胸の谷間にドギマギする。

そして心臓をバクバクさせる。

そうしていると.....四葉は、私で何か感じる?、と聞いてきた。

笑みを浮かべながら。


「か、揶揄うな。冗談じゃない」


「.....そう?妹だけど血は繋がってないよ」


「.....お前な.....」


汗が噴き出てくる。

するとアニメが何というタイミングか。

主人公が風呂に偶然入ってしまった、という感じのエッチなシーンが映る。


俺は!と思いながらテレビを消した。

そうしていると四葉が、あれ?面白いのに、と言ってくる。

俺は、ああいうシーンは毒だ、と答えた。


「.....そっか。お兄ちゃんはああいうシーンが好きなんだ」


「.....何か勘違いしてないか?冗談でもよせ」


「私は冗談とは思ってないけど。.....今この家には私と貴方しか居ないけど」


まあそうだけど.....、と思っていると。

四葉が俺を見上げてくる。

そしてニヤッとした。


迫って来る。

一歩一歩ずつ、だ。

俺はその姿から逃げる様に背後に飛び退く。

すると四葉は更に迫って来た。


「.....な、何でしょうか。四葉さん」


「.....お兄ちゃん。.....私じゃダメかな」


「.....ダメってのは.....?.....分からない.....」


「私が彼女じゃダメなのかな」


「.....そ、それが出来ないのはお前も知っての事だろ」


すると艶かしい顔の四葉が、ぷっ、と吹き出した。

そして俺を見て腹を抱えて笑い出す。

俺は???を浮かべながら四葉を見た。

四葉は、冗談だよ、と離れる。


「.....私がお兄ちゃんを好きなのは冗談ではないけど。.....こんなの恥ずかしいから」


「.....じゃあ初めからするなよ.....」


「.....お兄ちゃん。今日は.....誰か他の人が居たんだよね?この家に」


「いやちょっと待って察する能力ヤバすぎぃ!!!!!」


片瀬さんとか居たけど!

1時間半前ぞ?!

俺はゾッとしながらまた四葉を見る。


すると四葉は女の子ってみんなそんなもんだよ。

まあでも良いんだ。私負けないしね、と笑顔を浮かべる。

そして座った四葉。

それから天井を見上げる。


「私が絶対に勝つよ。この戦いは」


「.....この戦いって.....」


「私が誰よりもお兄ちゃんを知っている。5年前から知っている。だから負ける筈がないよ」


「.....お前な.....恥ずかしくなるから」


「.....私は出会った時から好きだった。負けないもん」


出会った時から、か.....は?

俺は目をパチクリしながら、オイ。それじゃ好きな期間の計算が全く合わない、と思いっきり慌てる。

すると?を浮かべた四葉。

胡座をかきながら俺を見てくる。

うん。考えてみたけど5年前で間違いないよ、と言う。


「.....私は.....全然何も感情を表に出せなかった。でもきっかけがあった。.....それはお兄ちゃんの顔出し動画だった。.....私はそれでお兄ちゃんが更に好きになった」


「.....」


「.....私は.....メラノーマになって亡くなったお母さん.....の事をずっとずっとずーっと案じてくれた貴方が5年前から好きです」


「.....お前.....」


そして赤くなってそっぽを向く俺を見てくる四葉。

静かに俺の手に触れてきた。

それから撫でる。


色々な女子がやっているけどそれ止めてくれない?ゾクゾクするんだが。

俺は赤くなりながら四葉を見る。

四葉ははにかむ。


「私は.....お兄ちゃんを好きになって良かった」


「.....」


「.....貴方に出会って本当に良かった」


「.....四葉.....」


さて。

じゃあアニメの続きを観ようよ、と言ってくる四葉。

俺はその姿を見ながら目を閉じて深呼吸して。

そして開けてから、そうだな、と答えた。

それから.....アニメを点ける。


で。

この次の日の事だった。

金曜日だったが.....何と言うか事件が起こる。

それは.....四季さんと片瀬さんが当島打倒タッグを組んだという事。

どういう事かって?

そうだな.....俺のクラスに転校して来たのだ.....当島さんが.....。


もう何というか.....吐き気がする.....。

胃痛が腹痛が.....。

神様嘘やろ。

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