第2話 自分の子は可愛い

息が荒いクランが部屋から出てきたことで従者4人は何事だと声を掛ける。


「なっ・・・どうしたんですか、クラン様!」


シリルが真っ先に声を掛ける。


「はっ・・・ごめん・・・媚薬を盛られたみたいだ。はぁっはぁっ・・・シリルは俺についてきて。他3人は状況証拠でコットバル侯爵令嬢を捕らえること。いいね・・・!」


口調が崩れている。相当辛いのだろう。


「っ!! 分かりました!」

「シリル以外は部屋の中へ入るよ!」


ダーレン、ユーグ、アイクが部屋に入っていき、リーネルを捕らえる。


「なっなによ!? 私に触れないで!! 触れていいのはクラン様だけよっ!」


足手足をばたつかせて抵抗するが男2人に体を押さえつけられ、身動きが取れない。


「こんな状況にもなってまだそんなこと言うのか」

「リーネル・コットバル侯爵令嬢。あなたをクラン第二皇子に媚薬を盛った罪で捕縛する」

「わ、私はそんなことっ知らないわ!」

「状況証拠があるから抵抗しても変わらない。クラン殿下が飲んでいた紅茶は今アイクが証拠として確保している。持ち物も後で調べれば分かることだ」


そこまで言われてようやくリーネルは大人しくなる。そこで抵抗をやめたら自分がやりましたと認めているようなものだとわからないのか。



一方その頃、クランの私室ではシリルがクランを介抱してベッドに横にならせるところだった。

しかしベッドから離れようとしたシリルをクランが手を引いてベッドに引き込んでしまう。

そしてシリルの服を脱がせていってしまう。


「ちょっ!クラン様!意識が混濁しているのは分かりますが俺は男です・・・!い、いやあっ・・・!離してっ・・下さい・・・!」


なけなしの抵抗をするがシリルはついに女性のような悲鳴をあげてしまう。これでは女だとばれてしまう。

しかし、いくら剣を扱える力のある女性だとしても男性の力には敵わない。それも半分意識がない状態の人には。


「だ・・・め・・です・・・クラン様・・・」




あれから2年がが経った。

あの事件から1ヶ月後に食べてる途中に急に気持ち悪くなり、トイレで嘔吐した。


もしかしたら妊娠してるのかもしれない。

そう考えて私はクラン様の元を離れ、故郷に戻った。

困惑しながらもいきなり戻った私を迎えてくれた家族には感謝しかない。そして家族に事情を話すととても驚いて、やがてクラン様に対して怒りを露わにした。その気持ちも分かるが、彼は悪くないと何度も説得してようやく落ち着いてくれた。


医者に診てもらうと、妊娠1ヶ月半だと言われた。家まで半月はかかるのでやはり、あの事件による妊娠だと考えていい。

そして産んだ子はクラン様にそっくりだった。クラン様と同じ濃い青の髪に私と同じ群青色の瞳。ちなみに男の子だ。

現在は一歳でもう椅子とかに掴まって歩けるようになり、カタコトだが話せるようにもなった。

意図してできた子ではないにしろ、やはり自分の産んだ子は可愛い。今も順調に成長している途中だ。


「マ、マ!」

「なあに?キース。どうしたの?」


名前を呼んでそういうと手を広げてよちよちとどこかに掴まりながら近づいてくる。どうやら抱っこしてほしいらしい。今ではもう、男装していたころのような男口調はやめている。やめた当初の違和感ももうない。


「抱っこしてほしいのね?」


やはり、自分の子はとても可愛い。

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1人の従者を取り巻く物語 ラムココ/高橋ココ @coco-takahashi

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