第66話 吸血鬼の家族

「えっと……、初めまして」


「……」


「よろしくね~」


 家から一番近いファミレスで俺は何故か他人の家族にお邪魔している。向かいの席には月の父親と母親が座っている。俺は窓際に、月が廊下側に座っているため簡単には抜け出せない。


「娘との関係は?」


 これが彼女の父親の第一声だった。俺なんかよりもずっと低くて太い声だが、何故か自然と威圧感を感じない声だ。


「話すと……長いんですけど」





 高校に入学してからのこと、吸血鬼だという事を知っていること、俺が普通の人間とは違う事、彼女に吸血をさせていること。


「話は分かりました」


「まさか、月に彼氏が居たなんて……ねぇ?」


「いえ……彼氏では……」


「この子、中学校までは暗くてあんまり友達いなくて……」


「ママ?」


「高校生になってから化粧とかし初めて……」


「ママ!」


「彼氏が出来たら女の子は可愛くなるのって本当だったのね」


「ママァ!」


「はいはい」


 無理やり俺から母親を引きはがすように引っ張って立たせる。先ほどの叫び声と合わせてめちゃくちゃ目立ってしまっている。


「飲み物取りに行くけど、真は何が良い?」


「じゃあ、烏龍茶」


「分かった」


 今まで見たことないような顔をしている月をなだめながら、母親は月を連れてドリンクバーの方に向かって行った。




 月の父親と2人きりになった今、一番気になっていることを聞く。


「あの……お二人って吸血鬼何ですか?」


 月の親ならば当然、二人も吸血鬼と言うことになる。もしくはどちらか一方。


 俺の問いに対して父親の方が口を開いた。


「えぇ……私が吸血鬼で、妻は普通の人間です」


「そうですか」


「私からも1つ質問してよろしいでしょうか?」


「あっ……はい」


「その……私が言うのもなんですが、不死身と言うのは具体的にどのようなものなのですか?」


「不死身とは……ちょっと違うんです。病院とかで実際に検査したとか、そういう訳じゃないんですけど……大概の怪我とかはすぐに治ります。今は何か調子が悪いですけど……」


「そうですか」


 一度、お互いに呼吸を挟み肩の力を抜く。月の父親は眼鏡を押してかけ直し、俺は背もたれに肩を付けてリラックスする。


しん君」


「はい」


「もしかしたら君は、吸血鬼になりかけているのかもしれません」


「え?」


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