第8話 超能力者たちの未来

 世の中の混乱が落ち着いた頃、サユリは再びカウンセリングの現場に立ち、臨床心理士としてクライアントに接していた。相談者は、妊娠6カ月の女性である。


「もし、私の赤ちゃんが超能力を持って生まれてきたら、どうしたらいいんでしょうか。前の世代と同じことが繰り返されるのではと心配です。我が子の可能性を狭めたくはないのですが、悪意ある人間に利用されるのは、もっと嫌なのです。」


 サユリはこの女性の話をじっくり聞き、彼女の懸念を理解し、「エンパシー・エンハンサー」が前の世代よりずっと進歩していることを伝えた。そして、そのような技術が悪用されないように努力してきたことや、成人したサイキックたちの多くは自分たちの超能力を他人のために使うことに専念していることを説明した。


 そして、自分の子どもに能力を発揮させることを恐れず、必要であれば専門家の助けを求めるようにと励ました。そして、自分のチームは、いつでも彼女たち親子で相談に乗る用意があることを強調した。


 相談者の女性はそれを聞いて安心し、自分の子育てに自信を持って帰っていった。しかし、サユリの心には確信が持てなかった。実際に超能力を持って生まれた自分の人生は、苦難の連続だったからだ。


 彼女は想像する。もし自分がエンパシー・エンハンサーを使っていなかったら、どんな人間になっていただろう?

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