【三題噺 #45】「リズム」「芳香」「ノック」(313文字)

 部屋の中と外

 リズムに乗ったノックが聞こえる。

 僕の返事を待たずに男は入る。何を聴いているのか分からないが、いつもイヤホンを付けている。体を揺すっていることもあるのでノリのいい曲が好きなのだろう。ただ顔はいつも無表情だ。


 僕はこの部屋から出られない。食事をはじめ必要な物はこの男が運んでくる。本や雑誌のリクエストは聞いてくれないが、テレビがあるので時間はつぶせる。


 ある日、男が芳香剤を何個も持ってきた。意味が分からないが、何を言っても聞いてくれないので黙っていた。

 芳香剤の効果が無くなりそうなのだろう、男がドアを開けたとき変な臭いがした。何の匂いか、頭は考えるのを拒否している。


 僕は今まで以上におとなしくしている。

 あの匂いの元にならないように。

 

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