【三題噺 #41】「生徒」「指紋」「発熱」(626文字)

 心の余裕 気の持ちよう

 私の心霊相談に来た彼はスマホを見ながら答えたり説明をしたりしている。

 その途中、何度も額の汗を拭いたりスマホの指紋汚れを拭いたりする。


「ああ、すいません。汗っかきで。病院で検査しても特に病気ではないんです。ただ汗っかきなだけなのですが、発熱していると疑われてしまって。生徒たちは年が明けたら大学の入学試験が始まります。そんな時に病気をうつされると困るという保護者からの苦情で塾をクビになりそうなんです」


 一息つくとまた汗を拭きスマホを拭く。


「僕の授業は分かりやすいと評判は悪くないのです。生徒の相談に乗ることもあるのですが、相談して良かったと言われるのです」

「そうですか。最近はどこも暖房が効いてるから汗かくこともありますよね。生徒さんは言いがかりと言うか、ただのやつあたりではないのですか。受験のストレスをあなたにぶつけているだけのように思えます。では視てみますね」


 私は彼を霊視した。彼が言った通り、彼は人を教え導くことに向いている。個人の相談だけではなく授業中のちょっとしたアドバイスも役に立っているはず。

 彼にやつあたりするような生徒はそんなアドバイスを受け取る余裕がないので、きっとダメだろう。


「もしよろしければ塾を移ることを考えませんか。私の知り合いで塾の経営者がいるのですが、その人ならうまくやってくれますよ」


 私の心霊相談の常連の塾の経営者を紹介した。

 その後、私は塾の経営者から三月末になると有名大学に生徒が合格したと特別な謝礼金をもらい続けた。

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