TURN.04「サバンナ・チャンバラ(Part,2)」


 バトルステージ上空で浮遊するパワードスーツ姿の少女。

(これが本来の……彼女の戦闘装束かッ……!!)

 レオタード風のインナースーツ姿のVi0に装着されていく武装。肩部装甲、ジェット搭載の背部ウィング、ブースターと隠し武器を搭載した脚部装甲。そして、敵の分析を行うセンサー&バイザー。

 刀片手に戦うサムライ魂の少女の姿は途端に超近未来メカ少女へと姿を変えた。

「……【プラネット・セーバー】。その名の通り、惑星を破滅の未来から救うため、未知なる怪物と戦うことを前提に改造を施された人間。超武装のパワードスーツを身に着け、空中での高速戦闘で敵を翻弄する上級ジョブの一つ、だ」

 ヴィヴィッドは戦いの最中、引っかかる事があった。

 それは昨日今日、つい先ほどまでの戦い方はヴィヴィッドの知るプラネット・セーバーの戦い方とは程遠いものだった事。

「さっきまではサブのジョブで戦っていたな。戦い方からして【パトリオット・ナイト】と言ったところか」

「戦況によってジョブを使い分ける。バトルにおいては定石でしょ?」

 ジョブを二つ用意することで戦法を多く用意する。彼女は地上と空中両方に適したジョブを上手く組み合わせている。

 パトリオット・ナイトは剣での剣撃スキルなど白兵戦に特化したジョブだ。地上での白兵戦が不利と感じたのなら、空への戦いへ……プラネット・セーバーへと切り替え、空へと移動する。それがVi0の戦い方だ。

「卑怯だとは言わないでよね。なにせ1000ポイントもかかってるバトルなんだから……スキルに戦略、使える手は徹底的に使って、アンタをココで撃墜する!」

 肩部装甲が展開される。 

 ミサイルだ。マイクロタイプのミサイルがざっと数えて50発近く。

「【ゲリラ・レイン・ミサイル】と【ダイナマイト・ミサイル】の一斉放射! その逃げ場のない狭いステージで逃げ切れるわけないのよね!!」

 Vi0の装甲アーマーからだけじゃない。虚空より再び現れる電子の扉。そこより現れるは全長五メートル近くの巨大ミサイル。その数、ざっと数えて十発近く。

 異次元より別の武器の召喚も出来る。圧倒的火力で敵を殲滅する。

 たった一人の人間相手に使うには過剰すぎる火力だ。敵の手の届かないエリアから手を打ち一掃する……それがプラネット・セーバーの強みだ。

「一斉掃射ァアッ!! 消し炭になっちゃいなァアッ!!」

 無慈悲にミサイルの雨が放たれる。装甲から、そして異次元の扉から。地上でなすすべもないヴィヴィッドに向けて一斉に。

 一発一発の火力は相当なモノ。中でも二メートル超のダイナマイト・ミサイルは大型モンスターに向けて放つもの。これだけ放たれば相当なスキルポイントを消費するわけだが、これは敵を確実に仕留められると踏んでの必要な消費。

「……ッ!!」

 飲み込まれていく。炎に体が蝕まれていく。

 瞬く間にヴィヴィッドの姿は見えなくなっていく。

「逃げ切れるはずはないッ……もうアンタはおしまいなんだッ! その首ッ! 私が確実に貰ったァアーーーーッ!!」

 バトルステージには最早、火の粉と砂の黒煙のみが渦巻く。



 ----静寂が訪れる。

 ミサイル発射装置の全てを引っ込める。


「確認する間でもない。これで私の勝ち」

 バイザーを取り外し、Vi0はホッと息を吐く。

 彼が空を飛ぶスキルを持っていないのならコレで勝ったも同然。半分以上も消費してしまったスキルポイントを横目、勝利の余韻に軽く背もたれる。


「……他人を馬鹿にする悪癖はお前の方があるように見えるがなッ!!」

「!?」

 その油断が命取り。

 突然聞こえた声。Vi0は慌ててバイザーを再び装着する。

ッ!? まだ倒せていなかったッ!? そんなはずッ!!」

 ヴィヴィッドのHP反応、未だに存在。彼はまだ倒れていない。

「ヴィヴィッドだけじゃない……このはッ……!?」

 バイザーに映る反応は……彼だけじゃない。


 -----“超巨大生命体の熱源反応”。

 そこらの成人男性の数十倍以上巨大な熱源反応。

 並々ならぬ何かが、その!!


「【エヴォリューション・キャノン】! 照射!!」

 バトルステージを包み込んでいた黒煙が一瞬にして消え去る。

 煙を取っ払い現れたのは二対の光線。瞬き一つ与える眩い閃光。真っ白の光線が無防備なVi0目掛けて飛んでいく。

「回避ッ……!」

 即座にバリアを展開と同時に光線を回避する。

 直撃はしていない。間一髪で回避に成功こそした。だが。

「きゃぁあっ……ダメージを受けた!? この威力、やっぱり……!」

 バリアを展開していたのにも関わらずVi0のHPゲージは減少した。それだけ相当な火力。おそらくだがバリアでも防ぎきれていなかった。直撃していたのなら、あのミサイルの雨同様即死だった可能性が高い。

「……アンタも奥の手隠していたわね! 一位のライダーさん!!」

 視線の先。ミサイルの雨に飲み込まれ倒されたと思われたヴィヴィッドへの咆哮。



 ----現れたのはステルス戦闘機に似たデザインの飛行マシン。


「卑怯だとは言わない。お前は戦う前に自分のジョブはプラネットセーバーだと明かした。自分の奥の手ともなり得るカードを公開していたからな」

 マシンは自動操縦のAIで動いている。即座に呼び出したこのマシンを盾にしたようだ。

 マシンの上で二丁拳銃を構え、Vi0へ視線を向けるヴィヴィッド。HPゲージが減っているのを見るにミサイルの雨の回避はギリギリだったようだ。

「むしろ卑怯なのは俺かもしれないな。俺はサブジョブを隠していたからな」

 ヴィヴィッドの意思によって、ハイテク戦闘機は思うがままに動く。彼にとってそのマシンは愛馬も同然の代物なのだ。

 これでヴィヴィッドも空の舞台へ。お互い、独壇場となるテリトリーへ移動したことにより勝負はまた五分の状況となる。

「私さ、戦う前にサブジョブは戦いの楽しみに公言するのはやめようって言ったの忘れた? アンタはルールに従っただけじゃない?」

「気持ちの問題だ。ただ一つ言いたいことがあるとすれば……お前のイジワルさに文句がある。それくらいだ」

「あぁ、そう。そりゃ悪かったわね」

 互いに睨み合う。

「……それじゃあ」

「第三ラウンドと行きましょうかッ!」

 ステージは空へ舞台を変え、戦闘は続行される----

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