TURN.03「コールド・フィンガー(Part,2)」
活動拠点メトロポリス。その外は全てが戦闘エリアとなっている。
長く続く広大な大地。あたり一面には廃墟やクレーター。干からびた湖にヒビ割れた路面。そこはまるで過去に人が住んでいた形跡のあるディストピア。
このゲームの前世。【M.V.P.s】は元々、剣と魔法のファンタジーを意識した作品だった。
突如宇宙から飛来した隕石により人類の大半が死滅。更には隕石から現れたのは未知なる生命体だったりと地球は大パニック。しかし、隕石がもたらした不思議なエネルギーは人類にも影響を及ぼした。
残った人類はメトロポリスなる巨大な街。活動拠点を幾つか作り、遺された兵器と新たに得た魔法の力で生き残り続けた……という設定である。
このV.i.P.sはM.V.P.sから数十年後の未来という設定であり、二度目の科学的進化を遂げた世界となっている。
故にメトロポリスの外は今も尚、探索最中の危険地帯という設定を受け継いでいる。V.i.P.sの世界は常に夜という事もあり、そのスリリングさは増している。
「聞こえる? 一位のライダーさん?」
課金アイテムで改造を施した専用のバイクで無法地帯エリアを駆け抜けるヴィヴィッドとVi0。あたりをうろつくザコモンスターを上手くよけ、目的地へと向かう。
その途中でバイクの通信機器が鳴る。Vi0からだ。
「どうした?」
「いや、今のうちに聞いておきたいことがあってさ」
戦う前に何か言い忘れた事でもあったのか。返事こそしていないがヴィヴィッドは向こうからの問いに構えていた。
「昨日の件、アンタは何か聞いた?」
それはもしかしなくても昨日のレースの話だ。最後の最後で、全く聞き覚えもない戦闘イベントが発生した事。そのイベントはクリアしたが何もなかったし、報酬も得られない。ただレースの連勝ボーナスがなくなっただけの理不尽な出来事。
「聞いたどころか何もしていない。そういうお前は?」
「運営からメールが来たわよ。そしたらさ……『そんな不具合は確認できません』の一点張りで帰って来て、はい終わり! レース中に戦闘イベントなんて発生しないし、そんなイベントが起きた形跡もないで片付けられた! そんなはずあるわけないってのに!!」
……レース中に戦闘イベントなんてものは存在しない。そしてそれが起きた形跡もないと返答されたようだ。
戦闘イベントが存在しないのは理解している。だが理解できないのは戦闘イベントが発生したという事実が認められていない事。
ヴィヴィッドは不穏に思う。あの場で確かにイベントは発生したというのに。
「そこからは何もしない、ってわけではなかったんだろ?」
「ええ。一応運営からも調査を進めるって返答が来たけど……どうだかね。今の運営って昔と比べて良くないって話を結構聞くし。よくある構文を送られたで終わったかも」
しつこくメールを送ると何をされるか分かったものじゃない。警告通りVi0も必要以上な質問責めはしなかったらしい。本人はすこぶる納得していないようだが。
「……見えてきたわね。ありがと、話に付き合ってくれて」
そうこうしている内に、専用のデュエルフィールドが見えてきた。
都内高速らしきハイウェイの跡地。足場は真上にあるハイウェイの破片。バトルフィールドを支えるのはたった一本の石柱のみ、だ。
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戦闘フィールドまでは専用のワープホールがあるのでそれを利用する。
フィールドは縦300メートル、横幅150メートルとそこまで広くはない。ここから落ちれば200メートル下の地面まで真っ逆さま。落下ダメージで即死だ。
「改めて自己紹介しておくわね」
武器となる刀を手に取るVi0。敵を前にすると黒き剣の刃は赤く熱を帯び始める。
「私は【Vi0】。ジョブは【プラネット・セーバー】。アンタは?」
「……【ヴィヴィッド】だ」
戦士が名乗りを上げたのなら、それにしっかりと返す義務がある。ヴィヴィッドもまたV.i.P.sのプレイヤーだ。
「ジョブは【サイバー・ダイバーズ】」
「……初期ジョブの一つだっけ? ふぅん、ちょっと楽しみになってきた……お互いサブのジョブはあえて言わない形で行きましょ。その方が楽しめそうだから」
このゲームは設定したジョブによって能力とスキルが異なる。そのジョブ一つ一つをある程度極めることにより……その能力やスキルを他のジョブでも一部引き継ぐ事が出来る様になる。これを利用し、数多くの戦略を生み出すのだ。
メインのジョブとサブのジョブ。この二つの戦闘スタイルと受け継いだスキルを駆使してデュエルをする。それがこのバトルの醍醐味だ。
「勝負は一本勝負! 私はこのバトルに1000ポイント賭ける!」
プレイヤー一人一人が持つプレイヤーポイント。それは依頼のクリアやイベントのクリア、そして戦闘でのベットによって手に入れる事が出来る。
1000ポイント。ランキングが三桁近く変動するレベルの大きなポイントだ。
「なら俺も1000ポイント賭ける」
「見た目の割にノリ良いじゃない。ますますテンション上がってきた」
お互いに賭けポイントを設定。これで準備は整った。
二人の頭上に巨大なスクリーンが表示される。スクリーンには10秒のカウントダウン。このカウントがゼロになると同時、二人のデュエルは始まる。
カウント残り
「「デュエルスタート、スタンバイ----」」
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「勝負ッ!!」
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「アンタのその首ッ! 私がもらうわ----!!」
デュエル、スタート。ゴングは鳴らされた。
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