Deta:ONE 【サイバー・ダイバーズ】
TURN.02「ハロー・ワールド」
プレイヤー人数は世界一位とも言われているし、日本以外でも六か国で稼働している超有名タイトルである。
このゲームの歴史は長い。始まりは十年前くらいに稼働していたVRMMOゲーム【
意識を電脳世界にフルダイブし、本当に別世界で戦っているような感覚を味わえるオンラインゲームなんて当時はかなり物珍しくて大ヒット。アニメやSF映画のような世界を日常で味わえる夢のような
瞬く間にユーザー数を伸ばし、気が付けばビッグタイトルとなった。ゲーム内のジョブ数、装備数、娯楽の数々など他のゲームと比べて相当なものだ。
だが、数年も経てばVRは物珍しくもなんともなくなった。
以降はボチボチとユーザーが増える程度に落ち着き、ここ最近になって大幅バージョンアップが行われた。その際にタイトルもチェンジ。
【ヴァンキッシュ・イグナイト・パトリオッツ】。通称【
「……昨日のアレ、何だったんだろ?」
普通の男子高校生・
「アレ、やっぱりバグだったのかな? それっぽい報告は一つもないけど……」
世界観の一心だったりと超大幅な工事が行われたワケだが、その影響もあってから日も経たぬうちにバグが何個か発見されている。イベント中に進行不可になったり、別のステージのイベントが他のイベントで勝手に発生したり。
「出来れば連続勝利ボーナス欲しかったんだけど……バグだとしたら保証出るのかな? 連勝ボーナス消えちゃってるけど……なんかガッカリ」
バグが多く見つかるわけだから、色々なプレイヤーから『墜ちたな』『過去の栄光になっちゃったわ』『ユーザーが残ってる辺り流石だけど、時代遅れになって来たかな』なんて言われるようになった。
このバージョンから始めた人からすれば普通に良いゲームなのだが……昔からいるプレイヤー、所謂古参からの評判はあまり良いものじゃないらしい。『改善はよ』と文句が日々SNS上で絶えないのだ。彼が眺めているのもそのタイムラインだ。
「今日から別のイベント行ってみようかな。そうすればポイント溜まりそうだし」
現在授業中。李々人は教師に隠れて携帯を開き、画面を確認している。
V.i.P.sのプレイヤーページだ。スマホからも軽いキャラクターのカスタマイズやデータ確認が出来る。各地で行われているイベントの内容などもチェックする。
「誰にも邪魔されなければだけど、」
「秤ぃいいッ! 今、携帯を見ていたか!?」
突如、教師からの怒鳴り声。
「み、見てません!! 神様に誓って、授業中に携帯は見てません!」
「両手で携帯握りしめながら言っても説得力ないぞぉお秤ィイイッ!!」
「ごめんなさぁあーーーーいッ!!」
感が鋭いのがあの教師の良い点で嫌な部分か……変に注目を集め、李々人は赤っ恥を掻く羽目になった。自業自得ではある。
ゲーム内ではクールな戦士キャラを演じる彼も……現実世界では成績もスポーツも諸々平凡で、人並みに出来る程度。
自身の取り柄が思いつかない...ちょっと頼りない男である-----
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放課後になると、李々人は真っすぐ家に帰宅する。
部活には所属していない。同好会にも所属しない。話ではオンラインゲーム同好会なるものが存在するらしい。内容によれば、集まってV.I.P.sをやるだけのようだが……そういうものにも顔を出そうとはしない。
寄り道はしない。ゲームセンターにも、ファミレスにも。
寄るとすればだ。ゲーム前の勉強のお共となる間食、新作のゲームを購入などの買い物程度……だが今日は寄らない。家についたら直ぐにV.I.P.sをやるためだ。
「さて、と……」
賛否両論のV.i.P.sではあるが、李々人にとってはこのゲームは特別なモノ。
「行こう」
このゲームの中でなら、自身の理想の姿になれる。
孤高の戦士、【ヴィヴィッド】になれる-----
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヴィヴィッド。それが李々人のプレイヤーネームだ。
のめり込むようにレベル上げやランク上げを続け、今いるエリア内ではランキングに名前が載るくらいには上位プレイヤーになった。彼の自慢の一つではある。
武器の二丁拳銃もレアドロップから手に入れたお気に入り。衣装も課金ガチャから粘って手に入れた。ここまでの称号は全て自力の根性で手に入れたもの。
「保障のメールは来ていない。やはりレース中のイベントだったのか? バグでもなんでもなくて……でも連勝ボーナスが消えるのはおかしいような気がする」
最終セーブ地点。ヴィヴィッドはメトロポリスと呼ばれる拠点の街内のマイルームにいた。
入ってすぐにメール画面を開くがレースに関するメールは届いていない。ましてやニュースや運営のお知らせからのバグ報告らしきものもない。
「それとも俺がメールを送るべきか?」
昨日の少女の文句を思い出す。
一応運営に確認のメールを送ることも出来る。それで一回質問するのもアリかもしれない。
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メトロポリスの街中で出歩く。
ここは常に空が夜になっている、科学的発展を遂げた世界。
サイバーチックな舞台に今日も多くのプレイヤー達が出歩いている。
「……昨日のアイツ」
昨日の少女。イベントのバイクレースで執拗に食いついてきたあの少女。レベルや戦闘スキルを見るに相当な腕利きと見えた為、印象深いあの姿が再び目に浮かぶ。
「本当にまた現れるんだろうか?」
いつか会って、その首を頂く。そんな捨てセリフを置いて去って行ったあの少女。
まさか本当に来るのだろうか。昨日の今日の話、直ぐには来ないにしても雰囲気作りに『またね』とああやって格好よく言っただけの可能性もある。
「いや。それよりも、だ」
所謂、社交辞令だと。
「今日の目ぼしいイベントは」
「見つけたわよッ!」
……そう思う事にしよう。そう決意した矢先だ。
「一位の銃使いさんっ!」
「……」
背後から聞こえる声。振り向かずとも分かる。
昨日のレースゲームで二位を独占していた……あの軍服風剣士少女。
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