第9話 闇からの囁き
怪物は暗闇の中にいた。
終わったのかと自覚しながらその意識を鎮めようとする。
結局空っぽのままであった。
なにも埋まらず空虚であった。
満たされず、癒されず、ただ消える。
「それはそうだよ。
だって君、取り込んでいないもの」
知らない声が響く。
誰だと問う。
その声は嘲笑しながら答えた。
「誰だっていいじゃん」
見えない手が怪物に触れた。
冷たく、おぞましい気配が注ぎ込まれる。
「君はただ貯えていただけ。いいかい?」
意識が無理やり浮上させられる。
やめろ、やめろやめろやめろ!
これはダメだ。これだけはダメだ!
意識の浮上と共に記憶も蘇る。
こいつだ。この声だ。
己をこの姿にしたのは、亡者の怪物に堕としたのは!!
「食べたものはちゃんと消化しないとね」
空っぽだったものに無理やり詰め込まれる。
抵抗はできない、許されない。
あぁ、もう止まらない。
最後に見た強い命の輝きを思い出す。
この身を焼くほどの眩しい力。この身体に傷をつけた強い少女。
願わくば彼女が自身を止めてくれることを。
ドラゴンの意識が切れる。
その隣にいたはずのただの人間のことなど微塵も思い出さずに
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